「前回申請したときと同じ感覚で準備すれば大丈夫だろう」——もしそうお考えでしたら、少し立ち止まってください。
2026年5月27日に公開された小規模事業者持続化補助金〈一般型・通常枠〉第20回の公募要領は、第19回から内容が大きく変わりました。全体を貫くテーマは、ひと言でいえば「売上・利益という“成果”を、これまで以上に厳しく問う制度への転換」です。
「販路開拓に取り組みます」という意欲を示すだけでは不十分で、「その結果、売上と利益がいくら増えるのか」を客観的な数字で示せなければ、採択が遠のく時代に入ったといえます。
本記事では、申請を検討している経営者の方に向けて、第19回からの主な変更点を6つに整理してお伝えします。知らないまま準備を進めるリスクを避けるため、最後までご確認ください。
【結論】第20回の変更点はこの6つ
- ① 再申請のインターバル延長:報告書の提出完了後、さらに1年経過が必要に
- ② 売上・利益要件が必須化:売上高・売上総利益の増加見込みが要件に追加
- ③ 賃金引上げの判定軸が変更:「最低賃金」から「1人あたり給与支給総額」ベースへ
- ④ 経費ルールの厳格化:広報費・ウェブ費に上限30万円、相見積もりは50万円超で必須に
- ⑤ 審査の視点が収益重視に:売上・利益の増加と、資産の継続活用を重視
- ⑥ 加点項目が2つ新設:健康経営優良法人加点・地域別最低賃金引上げ加点
以下、それぞれを詳しく解説します。
変更点1:過去に採択された方の「再申請」が、さらに難しくなりました
過去に本補助金を受給した事業者の再申請ルールが厳格化されました。
第19回までは、事業実施期間の終了日が属する月の翌月から1年が経過し、事業効果等の報告書(様式第14)を提出していれば、再び申請できました。
第20回からは、その報告書の提出を完了したあと、さらに1年が経過していなければ申請できなくなりました。次の申請までの待機期間(インターバル)が、実質的に延長された形です。
「前回採択されたから今回も」と考えていた方は、まずご自身が申請可能な時期にあるかを確認する必要があります。
変更点2:「売上・利益が増える事業」であることが必須要件に
今回もっとも重要な変更が、補助対象事業の要件追加です。
第20回からは、「補助事業終了時と比較して、売上高・売上総利益が増加することが見込める事業であること」が新たな要件として加わりました。
これは単なる努力目標ではありません。申請時点で、客観的なデータにもとづき「売上と利益がどれだけ増えるのか」を定量的に計画書へ記載することが求められます。根拠の乏しい数字や希望的観測だけの計画は、通りにくくなったとお考えください。
変更点3:「賃金引上げ特例・加点」の考え方が根本から変わりました
補助上限額を引き上げられる「賃金引上げ特例」と、審査で有利になる「賃金引上げ加点」。この判定方法が大きく変わりました。
第19回までは、補助事業の終了時点で「事業場内最低賃金」を申請時より引き上げる方式でした(特例は+50円以上、加点は+30円以上)。
第20回からは判定の軸そのものが変わり、比較対象期間において「従業員1人あたりの給与支給総額」を引き上げる方式になりました(特例は年平均3.0%以上の増加、加点は年平均2.0%以上の増加)。
ここで特に注意したいのが、「誰の給与を対象に計算するのか」という点です。この定義を取り違えると、計画そのものが成り立たなくなります。
- 非常勤を含む、すべての従業員が対象です。正社員だけを見ていると計算を誤ります。
- 対象となるのは、賃金引上げの比較対象期間——すなわち「補助事業実施期限日を終点とした連続する12か月」と「その前年同月の12か月」——の各期間において、全月分の給与等の支給を受けた従業員です。
つまり、期間の途中で入社・退社した方などは、計算対象の扱いが変わります。「最低賃金を少し上げればよい」という従来の発想のままでは要件を読み違えますし、給与総額ベースで正確に集計するには、対象者の線引きから丁寧に行う必要があります。最新ルールの把握が欠かせません。
変更点4:補助対象経費のルールが厳しくなりました
経費まわりにも、見落とせない変更が複数あります。
主な変更点
- 広報費に上限が新設:チラシやインターネット広告などの広報費に、上限30万円(税込)が新たに設定されました。
- ウェブサイト関連費の上限が変更:第19回は「補助金交付申請額の1/4(最大50万円)」が上限でしたが、第20回からは上限30万円(税込)に変わりました。ホームページ制作を中心に考えていた方は、補助される金額が想定より少なくなる可能性があります。
その他の変更点
- 相見積もりの基準が引き下げ:2者以上からの相見積もりが必要となる発注総額(1件あたり)の基準が、第19回の「100万円超(税込)」から第20回では50万円超(税込)へ引き下げられました。これまで1社の見積もりで済んでいた金額帯でも、相見積もりが必要になるケースが増えます。
- 新商品開発費に裏付けが必要に:新商品開発費を計上する場合、「テストマーケティングや市場調査の結果を踏まえたもの、またはそれらを伴うもの」であることが求められ、その内容と結果を計画書・報告書に記載することが必須になりました。
変更点5:審査の“見られ方”が変わりました
計画審査の観点にも、収益増加を重視する視点が強く加わりました。
経営方針や補助事業計画の有効性について、「売上高・売上総利益の増加を目指すものになっているか」「客観的事実にもとづいて目標が設定されているか」が、各項目で問われるようになっています。
さらに、「取得した資産を、補助事業終了後も継続して使用し、事業展開に役立てることが明確になっているか」という観点も追加されました。“買って終わり”ではなく、“その後どう活かすか”まで描く必要があります。
変更点6:新しい加点項目が2つ追加されました
採択の可能性を高める加点項目に、第20回から次の2つが新設されました。
- 健康経営優良法人加点(重点政策加点)
- 地域別最低賃金引上げ加点(政策加点)
該当する事業者にとっては、採択を後押しする要素になります。自社が使える加点を取りこぼさないことも、戦略上とても重要です。
【一覧表】第19回と第20回の主な違い
変更点を表で整理しました。数値・上限額・期限は、必ず最新の公募要領・公式サイトとご照合ください。
| 項目 | 第19回(従来) | 第20回(変更後) |
|---|---|---|
| 再申請の待機期間 | 様式第14提出後、1年経過で申請可 | 報告書提出完了後、さらに1年経過が必要 |
| 売上・利益要件 | 明確な必須要件としては未規定 | 売上高・売上総利益の増加見込みが必須要件に |
| 賃金引上げの判定軸 | 事業場内最低賃金(特例+50円/加点+30円) | 1人あたり給与支給総額(特例 年平均3.0%/加点 年平均2.0%) |
| 広報費の上限 | (上限の新設なし) | 上限30万円(税込)を新設 |
| ウェブサイト関連費 | 交付申請額の1/4(最大50万円) | 上限30万円(税込) |
| 相見積もりの基準 | 100万円超(税込) | 50万円超(税込) |
| 新商品開発費 | — | 市場調査等の裏付けと記載が必須 |
| 加点項目 | — | 健康経営優良法人加点・地域別最低賃金引上げ加点を新設 |
ここまでお読みいただき、「思っていたより複雑だ」と感じた方も多いのではないでしょうか。
第20回は、売上・利益の根拠を数字で示し、新しい賃金要件を理解し、経費の上限や相見積もりのルールを正確に守る——その一つひとつを正しく押さえて、ようやくスタートラインに立てる制度になりました。本業の合間にご自身だけで進めようとすると、想像の何倍もの時間と労力がかかり、「これで本当に通るのか」という不安も最後まで残りがちです。
そして、たった一つの要件の読み違いが、補助金全体の不交付につながることもあります。
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中小企業診断士・行政書士・大手IT企業の管理職という経歴を掛け合わせ、「カネ・ヒト・IT」の視点から、採択をめざす計画づくりをお手伝いします。今回の改正で重みを増した「売上・利益の数字づくり」は、まさに中小企業診断士の得意分野です。
まずは無料相談から。締切は意外と早く来ます
第20回のスケジュールは、申請受付締切が2026年12月15日(火)17:00です。ただし、申請に必要な事業支援計画書(様式4)の発行受付締切は、それより早い12月4日(金)。実質的な準備期限は12月初旬とお考えいただくのが安全です。
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