※本コラムは当事務所の見解であり、法的な証拠・根拠にはなりません。補助金申請は各公募要領に従って手続きください。

「うちは資本金も少ないし、従業員数も基準内。だから当然、補助金の対象だろう」

そう考えている経営者の方は多いと思います。ただ、申請ボタンを押す前に、一度立ち止まって確認していただきたいことがあります。

2026年に始まった「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」では、多くの経営者が見落としがちだった落とし穴が、これまで以上に深くなりました。資本金や従業員数の表だけを見て「うちは中小企業だ」と判断していると、採択の前段階、つまり申請の入口ではじかれてしまうことがあります。

補助金事務局で審査業務に携わってきた経験から言えば、今回の制度変更でいちばん気をつけたいのは、「みなし大企業」と判定される範囲が広がった点です。

この記事では、その変更点を整理したうえで、ご自身の会社が新たに対象外になっていないかをざっと確認できるチェックリストまでご用意しました。

補助金には、「資本金や従業員数の基準を満たしていても、大企業として扱われて対象外になる」というルールがあります。これがいわゆる「みなし大企業」です。

なぜこんな仕組みがあるのでしょうか。補助金の原資は税金です。看板は中小企業でも、実態として大企業がバックについている会社にまで税金を投じるのは、制度の趣旨に合いません。そこで、資本関係や役員の顔ぶれを見て、実質的に大企業に支配されている中小企業を対象から外しているわけです。

具体的には、次のいずれかに当てはまると「みなし大企業」とされます。ここは従来の「ものづくり補助金」でも、新しい「新事業進出・ものづくり補助金」でも共通する基本ルールです。

  1. 発行済株式の総数または出資総額の2分の1以上を、同一の大企業が所有している
  2. 発行済株式の総数または出資総額の3分の2以上を、複数の大企業が所有している
  3. 大企業の役員・職員を兼ねる人が、自社の役員総数の2分の1以上を占めている
  4. 上記1〜3に当てはまる中小企業が、自社の株式・出資の全部を所有している
  5. 上記1〜3に当てはまる中小企業の役員・職員を兼ねる人が、自社の役員総数の全てを占めている

「大企業の子会社は対象外になる」ことは、なんとなくご存じの方も多いでしょう。ただ、実務でよく見落とされるのは、4や5のような、いわば孫会社にあたるパターンです。

ここからが本題です。

新しい「新事業進出・ものづくり補助金」では、先ほどの5項目に加えて、新たな判定基準が盛り込まれました。従来のものづくり補助金では、ここまではっきりとは書かれていなかった観点です。

追加された網① みなし大企業から半分以上出資されている会社も対象に

従来のルール4では、みなし大企業に株式・出資の全部(100%)を持たれている会社だけが、間接的に対象になっていました。

新補助金では、これに次の類型が加わりました。

みなし大企業に該当する中小企業から、発行済株式の総数または出資総額の2分の1以上を所有されている中小企業も、みなし大企業とみなす。

つまり、100%子会社でなくても、過半数を出資されているだけで網にかかるようになったということです。

これは、資本関係を一段しか確認しない場合に見落としやすい、危険な変更だと考えています。たとえば、自社の親会社は中小企業だから問題ないと思っていても、その親会社が実は大企業に支配されたみなし大企業で、なおかつ自社の株式を過半数持っていたとしたら、自社まで対象外になってしまいます。親会社だけでなく、その親会社の株主まで遡って見ないと、正しく判定できないのです。

追加された網② JV(共同企業体)への規定も明記

もう一つ、新補助金ではJV(共同企業体)についての規定が明記されました。

JVの出資総額の過半数を、大企業またはみなし大企業が占めている場合は、この規定を準用して補助対象外とする。

複数の事業者が組んで一つの事業体として申請する場合、その出資の過半を大企業やみなし大企業が握っていると、JV全体が対象外になります。共同で受注・申請するケースが増えているだけに、見落とせないところです。

みなし大企業の要件 新旧比較表

従来のものづくり補助金と、新しい新事業進出・ものづくり補助金とで、みなし大企業の要件がどう変わったのかを一覧にまとめました。土台となる部分は変わっておらず、そこに何が追加されたのかを押さえるのがポイントです。

判定項目従来(ものづくり補助金)新制度(新事業進出・ものづくり補助金)変更点
①同一の大企業による保有2分の1以上2分の1以上変更なし
②複数の大企業による保有3分の2以上3分の2以上変更なし
③大企業の役員・職員の兼任役員総数の2分の1以上役員総数の2分の1以上変更なし
④みなし大企業(①〜③該当者)による株式・出資の保有全部(総額)を保有している場合のみ左に加えて、2分の1以上を保有されている場合も対象網が拡大
⑤みなし大企業(①〜③該当者)の役員・職員の兼任役員総数の全てを占める場合役員総数の全てを占める場合変更なし
JV(共同企業体)への適用公募要領の当該項目に明記なし出資総額の過半を大企業・みなし大企業が占める場合は準用し対象外と明記規定を明記
大企業の定義・適用除外(中小企業投資育成㈱・LPS等)共通共通変更なし

※本表は両補助金の公募要領をもとに当事務所が整理したものです。正確な適用は必ず各公募要領の原文をご確認ください。

こうして並べると分かりやすいと思います。基本の骨格である①②③⑤は変わっていません。変わったのは、④の網が「全部保有」から「過半保有」へ広がった点と、JVの扱いが明文化された点。おおよそこの二つに絞られます。

言い換えれば、④に半分だけ引っかかる会社や、JVで申請する会社は、従来なら問題なかったのに新制度では対象外になり得る、ということです。

そんな複雑な資本関係はうちには関係ない。そう思った方にこそ、ここは読んでいただきたいところです。

審査の現場や相談対応で「あぶなかった」と感じるのは、たいてい経営者自身が「自社は無関係」と思い込んでいるケースでした。よくあるのは、次のような会社です。

  • 数年前に事業会社(大企業)から出資を受けたことがある。当初は少額のつもりだったが、増資を重ねるうちに保有比率が上がっていた。
  • 親会社はあるが、その親会社の資本構成までは確認したことがない。「親会社も中小企業のはず」という前提だけで判断している。
  • グループ会社間で役員を兼任させていて、気づけば自社役員の過半が別会社の役員や従業員を兼ねていた。
  • 同業他社とJVを組んで受注しているが、出資比率の内訳をあまり意識していない。

これらはいずれも、登記簿や決算書の表面をなぞるだけでは気づけません。株主名簿や役員の兼任状況、さらには株主である会社の、そのまた株主まで遡って、はじめて正しく判定できるものです。

そこで、当事務所が実際の申請支援で使っている考え方をもとに、簡単なセルフチェックリストを用意しました。一つでも「はい」または「わからない」があれば、注意が必要です。

基本チェック(従来からの共通ルール)

  • [  ] 自社の株主に、大企業(または大企業の子会社)はいるか。
  • [  ] その大企業が単独で2分の1以上、または複数の大企業で合算して3分の2以上を保有していないか。
  • [  ] 自社の役員に、大企業の役員・従業員を兼ねる人はいるか。いる場合、役員総数の2分の1以上を占めていないか。

追加チェック(新補助金で新たに見るべき点)

  • [  ] 自社の株主に、みなし大企業に該当する中小企業はいないか。いる場合、その保有割合は2分の1以上か。
  • [  ] JVで申請する場合、JVの出資総額の過半を大企業・みなし大企業が占めていないか。

除外チェック(救済されるケース)

  • [  ] 過去にVC・投資会社から出資を受けている場合、それは適用除外の対象(中小企業投資育成株式会社、投資事業有限責任組合など)に当たるか。

最後の除外チェックも意外と大事です。同じ投資会社からの出資でも、中小企業投資育成株式会社や投資事業有限責任組合(LPS)からのものは、みなし大企業の判定から除外されます。「出資を受けている=アウト」と早合点して、本来使えるはずの補助金を諦めてしまうのは、もったいない話です。

ここまで読んで感じられたかもしれませんが、みなし大企業の判定は、一つひとつは単純でも、見るべき箇所が多いのが厄介なところです。株主は誰か、その保有比率はどれくらいか、株主が会社ならその会社は大企業なのかみなし大企業なのか。加えて、役員の兼任先はどこか、JVなら出資の内訳はどうなっているか、除外規定に当たる出資はないか。確認すべき点がいくつも重なります。

これらを記憶や勘で「たぶん大丈夫」と処理してしまうことが、いちばんのリスクです。私が実務で必ずチェックシートを使い、一項目ずつ確認していくのも、思い込みによる抜け漏れこそが、要件不備で失格になる最大の原因だと分かっているからです。

とくに今回のように制度が変わった直後は、「前回の補助金で通ったから今回も大丈夫」という思い込みが危険です。前回はセーフでも新補助金ではアウト、というのが、まさに今回追加された網の怖いところなのです。

セルフチェックで「わからない」が一つでもあった方。あるいは、そもそも自社の資本関係を正確には把握できていないかもしれない、という方。

その状態のまま申請に進むと、入口ではじかれるリスクを抱えたまま、貴重な準備期間を費やすことになりかねません。

当事務所では、補助金事務局での審査経験を持つ代表が、資本関係の確認から事業計画書の作成、採択後の交付申請・実績報告まで一貫して伴走します。外注や丸投げは一切なく、代表が直接、御社の資本関係を一段深く確認します。まずはオンライン無料相談をお申し込みください。

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