千葉県でこれから創業しようとしている方、あるいは創業して間もない方へ。
千葉県には、創業者を応援する独自の助成金「ちば創業応援助成金」があります。助成上限は100万円(補助率1/2)。金額としては大きくありませんが、創業初期の資金繰りが最も厳しい時期に使える貴重な制度です。
令和8年度の公募がすでに始まっています。申請締切は2026年4月30日(木)17時到着です。
ただし、この助成金には「特定創業支援事業の修了証明書」や「プレゼンテーション審査」など、他の補助金にはない独自の要件があります。しかも審査基準が公開されており、得点が6割未満は不採択という明確な基準があります。
この記事では、千葉県市川市で中小企業診断士・行政書士として創業支援を行っている立場から、制度の概要、公開されている審査基準の読み解き方、そしてこの助成金だけでなく創業融資や持続化補助金も含めた「千葉県の創業者が活用できる資金調達の全体像」まで、わかりやすく解説します。
制度の基本情報(令和8年度)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成上限額 | 100万円 |
| 補助率 | 助成対象経費の1/2以内 |
| 対象者 | 千葉県内で創業予定 or 創業5年未満の中小企業者 |
| 申請条件 | 特定創業支援事業の証明書 or インキュベーション施設入居(後述) |
| 申請期間 | 2026年4月2日(木)〜 4月30日(木)17時到着 |
| 事業期間 | 2026年7月1日(水)〜 2027年2月20日(土) |
| 審査方法 | 受付審査 + プレゼンテーション審査 |
| 申請方法 | 郵送のみ(電子メール・FAX不可) |
| 実施主体 | 公益財団法人千葉県産業振興センター |
| 問い合わせ | 043-299-1078 |
申請するための2つの条件
この助成金は、千葉県内で創業するだけでは申請できません。以下の①②のいずれかを満たしている必要があります。
条件① 特定創業支援事業の証明書を受けた方
市町村が実施している特定創業支援事業(創業セミナー等)に参加し、証明書の発行を受けた方が対象です。
特定創業支援事業とは、産業競争力強化法に基づいて市町村が認定した創業支援プログラムです。商工会議所や地域の支援機関が運営する「創業スクール」「創業セミナー」などが該当します。市川市の場合は市川商工会議所が窓口です。
重要: 証明書の取得には通常1〜3か月かかります。今回の締切(4月30日)に間に合わない場合は、来年度の公募に向けて今から受講を開始しておくことをおすすめします。
条件② 千葉県内の公的インキュベーション施設に入居している方
以下の施設(コワーキングスペースを除く)に入居している方は、証明書がなくても申請可能です。
東葛テクノプラザ、東大柏ベンチャープラザ、かずさインキュベーションセンター、ベンチャープラザ船橋、千葉大亥鼻イノベーションプラザ、いちかわ情報プラザ、松戸スタートアップオフィス
その他の要件
上記に加えて、以下も条件です。
- 法律等に基づく資格が必要な事業の場合、当該資格を有する(または事業完了日までに取得見込みがある)こと
- 助成金の交付を受ける者自身が直接、事業または営業に携わること
- フランチャイズ契約に基づく事業でないこと
- 他の補助金・助成金で同一内容の交付決定を受けていないこと
助成対象となる経費 ― 広報費・店舗家賃もOK
対象経費は、創業に必要な幅広い費用をカバーしています。
| 経費区分 | 主な対象例 | 主な対象外例 |
|---|---|---|
| 設立登記費等 | 司法書士等への申請資料作成費 | 登録免許税、定款認証料、収入印紙代 |
| 広報費 | HP作成、チラシ・看板作成、展示会出展(小間代のみ、対象経費の30%以内) | SNS等の通信費 |
| 店舗借入費 | 借入店舗の家賃 | 管理費、敷金、礼金、紹介料、改装費 |
| 原材料・消耗品費 | 事業に直接使用する原材料・備品 | 汎用的な事務用品、販売目的の仕入れ |
| 設備費 | 機械装置の購入・リース・レンタル(税込20万円以上/台、新品のみ) | パソコン、カメラ、自動車等の汎用品、ソフトウェア購入費 |
| 外注加工費 | 原材料の加工、設計等の外注(対象経費の1/2以内) | ― |
| 専門家謝金・旅費 | 士業・大学教授等への指導・相談料(1回4時間以上) | 応募書類の作成代行費用 |
| 委託費 | 研究開発の検査、市場調査等の委託(対象経費の1/2以内) | ― |
| 事務費 | 会場借料、郵送代、印刷製本費、資料購入費 | 飲食費、切手購入費 |
| 産業財産権等関連経費 | 特許出願の弁理士費用、先行技術調査費 | 日本の特許庁への出願手数料、収入印紙代 |
特に注意すべきポイント:
販売目的の仕入れはNG。 「商品を作って売りたい」場合、原材料の仕入れ費自体は対象外です。あくまで「事業化に向けた研究開発・試作」のための経費が対象です。
パソコン・ソフトウェアは対象外。 設備費の対象は機械装置や工具器具に限られ、パソコン、カメラ、ソフトウェアの購入費・ライセンス費用は対象になりません。
委託費と外注加工費はそれぞれ対象経費の1/2以内。 事業の大部分を外部に委託する申請は採択されません。自社で主体的に取り組むことが求められます。
交付決定前の支出は対象外。 見積もりまでは可能ですが、発注・契約・申込みは交付決定後に行ってください。
審査基準を読み解く ― 公開されている7つの審査項目
この助成金の大きな特徴は、審査基準が公開されていることです。何が評価されるかがわかっているのですから、それに合わせて準備すれば採択の可能性は格段に上がります。
事業内容審査(7項目)
① 事業実施の妥当性
「創業モデルや研究開発等に新規性や先進性があるか」「目指す成果が妥当であり、その実現の期待ができるか」が問われます。「すでに世の中にあるものと何が違うのか」を明確に説明してください。
② 市場性
「事業の対象市場が明確にされているか」「市場ニーズに合致した創業モデルか」。ターゲット顧客は誰なのか、その市場は実際に存在するのか、具体的なデータや根拠とともに示す必要があります。
③ 将来性
「研究開発成果等に相応の収益が見込まれ、事業継続の見込みがあるか」「自立的に事業活動を継続していく将来ビジョンおよび経営者としての能力を有しているか」。助成金を受け取って終わりではなく、その先の持続的な成長ストーリーを描けるかが評価されます。
④ 地域性
「地域の企業や事業者等と連携することで地域経済の活性化に資することが期待できるか」。千葉県の助成金ですから、千葉県の地域経済にどう貢献するかを盛り込むことが重要です。地元の仕入先との連携、地域の雇用創出、千葉県ならではの地の利を活かした事業展開など。
⑤ 資金調達能力
「助成事業に要する自己資金等の調達が可能であるか」。助成金は後払いのため、自己資金で先に支出する必要があります。資金計画に無理がないかを示してください。
⑥ 実施体制および実施能力
「事業を遂行する実施能力等を有し、期間内に事業を実施することが可能かどうか」。事業期間は2026年7月〜2027年2月の約8か月間。この中で計画を完遂できる体制があるかを説明します。
⑦ 創業年数
ここが非常にユニークです。創業年数によって点数が自動的に決まります。
| 創業年数 | 点数 |
|---|---|
| 創業予定者 / 創業1年未満 | 5点(最高) |
| 創業1年以上〜2年未満 | 4点 |
| 創業2年以上〜3年未満 | 3点 |
| 創業3年以上〜4年未満 | 2点 |
| 創業4年以上〜5年未満 | 1点 |
| 過去にちば創業応援助成金を受けた企業 | 0点 |
つまり、これから創業する人や創業して間もない人ほど有利に設計されています。創業5年に近づくほどスコアが下がるため、申請するなら早い方が良いです。また、過去にこの助成金を受けたことがある企業は0点になります。
プレゼンテーション審査(3項目)
一次審査(書類)を通過すると、審査委員会でプレゼンテーションを行います(6月初旬〜中旬予定)。評価されるのは以下の3点です。
- 事業の意図、目的を明確に説明できているか
- 進出する業界・業種に対する理解は十分か
- 事業に対する熱意、実現する意思を感じられるか
書類では伝わりにくい「経営者としての人柄」「事業への本気度」をアピールするチャンスです。なお、応募者が多数の場合、プレゼンに代えて書面審査になる場合もあります。
採択基準:合計点の6割未満は不採択
審査は5段階評価(0〜5点)で行われ、合計点が6割に満たない場合は不採択です。つまり、どれだけ一部の項目で高得点を取っても、弱い項目があれば全体で6割を下回るリスクがあります。7項目すべてでバランスよく得点することが重要です。
加点項目
「ちば起業家応援事業」のビジネスプラン・コンペティション優秀賞の受賞者には2点の加点があります(受賞翌年度のみ)。
事業計画概要はA4判2枚にまとめる
提出書類の中に「事業計画概要」というフォーマットがあります。記載項目は審査基準と対応しており、以下の5項目をA4判2枚以内にまとめる必要があります。
- 市場性 ― 市場ニーズに合致した創業モデル・研究開発等かどうか
- 事業実施の妥当性 ― 新規性や先進性があるか、実現可能性はどうか
- 将来性 ― 事業化の実現見込みや将来的な事業継続性
- 地域性等 ― 地域経済への影響や地域での連携可能性
- 実施体制および実施能力 ― 事業遂行の体制と期間内実施の可能性
A4判2枚は非常に限られたスペースです。各項目を簡潔かつ具体的に書く力が問われます。「あれもこれも」と詰め込むのではなく、各項目で「審査員に最も伝えたい1つのメッセージ」を決めて、それを裏付ける事実やデータで補強する構成にしてください。
100万円だけで足りる? ― 千葉県の創業者が活用できる資金調達の全体像
率直に言って、ちば創業応援助成金の上限100万円だけでは、創業に必要な資金をすべて賄うことはできません。大切なのは、複数の支援制度を組み合わせて、創業期の資金計画全体を設計することです。
① 創業融資(日本政策金融公庫・千葉県制度融資)
創業期の資金調達の柱です。返済義務はありますが、低金利で数百万〜数千万円の資金を調達できます。特に日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、創業者にとって最も利用しやすい融資です。
② 小規模事業者持続化補助金<創業型>
国の補助金で、創業者に特化した申請枠です。補助上限200万円(補助率2/3)。ちば創業応援助成金の2倍の金額を、より高い補助率で受け取れます。
この補助金も「特定創業支援事業」の証明書が必要なので、ちば創業応援助成金の申請条件を満たしていれば、同時に検討できます(ただし同一の事業内容での両方の交付決定は受けられません)。
③ ちば創業応援助成金
本記事で紹介している助成金です。上限100万円と規模は小さいですが、千葉県独自の制度です。創業融資と持続化補助金でカバーしきれない「研究開発」「試作」「実証実験」「広報」などの費用を補うのに適しています。
④ 経営革新計画の認定
補助金ではありませんが、千葉県から経営革新計画の認定を受けると、信用保証協会の特別枠や日本政策金融公庫の特別利率など、融資面での優遇を受けられます。
組み合わせの例
千葉県内でカフェを開業する場合。店舗の内装・設備費に創業融資(日本政策金融公庫で500万円)、販路開拓(看板・チラシ・SNS広告等)に持続化補助金<創業型>(最大200万円)、独自メニューの試作・市場調査にちば創業応援助成金(最大100万円)。このように役割を分けて組み合わせることで、創業初期の自己負担を大幅に抑えられます。
よくある質問(FAQ)
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まだ創業していませんが、申請できますか?
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はい、できます。 これから千葉県内で創業を予定している方も対象です。しかも、創業予定者は審査の「創業年数」項目で最高点(5点)が付きます。
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今年の締切(4月30日)に間に合わない場合はどうすればいいですか?
-
令和9年度(来年度)にも同様の公募が行われる可能性が高いです。今から特定創業支援事業の受講を開始し、証明書を取得しておけば、来年度の公募にスムーズに申請できます。
-
個人事業主でも申請できますか?
-
はい、可能です。 創業5年未満であれば、法人・個人を問わず対象です。
-
持続化補助金<創業型>と両方申請できますか?
-
同一の事業内容での両方の交付決定は受けられません。 ただし、事業内容が異なれば、それぞれ別の用途に充てることは可能です。
また、両方申請してどちらかが採択されることを狙うのもアリです。(両方採択されたら、1つは辞退)
-
プレゼンテーション審査はどのような形式ですか?
-
審査委員会の場で事業内容を直接説明します。6月初旬〜中旬に開催予定で、日時は締切後に個別通知されます。応募者多数の場合は、プレゼンに代えて書面審査になることもあります。
-
パソコンやソフトウェアは助成対象になりますか?
-
なりません。 パソコン、カメラ等の汎用品やソフトウェアの購入費・ライセンス費用は対象外です。設備費として認められるのは、事業に直接必要な機械装置や工具器具(税込20万円以上/台、新品のみ)です。
まとめ:100万円の助成金ではなく「創業の第一歩」として捉える
ちば創業応援助成金は、金額だけを見れば100万円と大きくはありません。しかし、この助成金に採択されること自体が、千葉県の公的機関から事業計画を評価された実績になります。その実績は、その後の融資審査や取引先への信用にもプラスに働きます。
そして何より、申請に必要な「特定創業支援事業の受講」は、証明書を得るためだけのものではありません。経営、財務、販路開拓、人材の基礎知識を体系的に学ぶ機会であり、これ自体が創業の成功確率を高める投資です。
令和8年度の申請締切は2026年4月30日(木)17時到着です。今年の申請に間に合う方はぜひ挑戦してください。間に合わない方は、来年度に向けて今から準備を始めましょう。
千葉県で創業をお考えの方へ
プラネット行政書士事務所は、中小企業診断士・行政書士・認定経営革新等支援機関として、千葉県市川市を拠点に創業支援を行っています。
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代表 中小企業診断士・行政書士・採用定着士・認定経営革新等支援機関
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1971年山口県下松市生まれ、千葉県市川市在住。25年間、IT業界の東証プライム上場企業を中心に法人営業や企画部門に従事し、大手製造業向けにIoTやDXの導入を推進。2022年3月に日鉄ソリューションズ株式会社を退社後、プラネット行政書士事務所を開業。中小企業のお客様へビジネス経験を活かした実現可能性の高い事業計画の策定や採用定着を支援。
(公財)千葉県産業振興センターで補助金受付業務(嘱託)や補助金事務局の審査経験がある補助金専門家として活動中。
