「飲食店でもものづくり補助金は使えますか?」
ネットで検索すると「飲食店でも使えます!」「採択事例はこちら!」という記事がたくさん出てきます。しかし、それらの記事の多くは過去の制度に基づいた情報です。
結論から言えば、2025年4月(第19回公募)以降のものづくり補助金は、多くの飲食店にとって使いにくくなりました。その理由は「革新性のハードルが高い」といった曖昧な話ではなく、制度改編によって、多くの飲食店が従来使っていた申請枠そのものがなくなったからです。
もちろん、革新的な新製品・新サービスの開発に取り組む飲食店にとっては、現在のものづくり補助金も引き続き有力な選択肢です。しかし、従来多くの飲食店が活用していた「生産プロセスの改善」や「省力化」を目的とした設備投資については、今のものづくり補助金の事業目的の対象外となり、省力化投資補助金(一般型)が受け皿になっています。
この記事では、ものづくり補助金の制度がどう変わったのか、飲食店が使っていた枠はどこに行ったのか、そして今の飲食店はどの補助金を選ぶべきなのかを、制度変遷の経緯とともに正確に解説します。
ものづくり補助金の制度変遷 ― 飲食店にとって何が変わったのか
【第16回まで(〜令和6年3月)】飲食店も申請しやすかった時代
第16回公募までのものづくり補助金は、対象事業が大きく2つに分かれていました。
- 革新的な製品・サービス開発
- 革新的な生産プロセス・サービス提供方法の改善
飲食店の多くは②の「生産プロセス・サービス提供方法の改善」で申請していました。例えば、急速冷凍機の導入によるテイクアウト商品の品質向上、製麺機の導入による仕込み時間の短縮、自動調理機の導入によるオペレーション改善などです。
この枠は「革新的な」という修飾語はついていたものの、生産プロセスやサービス提供方法の改善を幅広く対象としており、飲食店にとっては比較的使いやすい補助金でした。ネット上にある「飲食店の採択事例」の大半は、この時代のものです。
【第17回〜第18回(令和6年3月〜)】枠が分離、飲食店はまだ申請できた
第17回公募から、ものづくり補助金の申請枠が再編されました。
- 製品・サービス高付加価値化枠(従来の①に相当)
- 省力化(オーダーメイド)枠(従来の②の省力化部分を独立させた枠)
飲食店の生産プロセス改善や省力化投資は、「省力化(オーダーメイド)枠」で引き続き申請可能でした。要件は多少変わりましたが、飲食店が取り組める余地はまだ十分にありました。
【第19回以降(令和7年4月〜)】飲食店が使っていた枠がなくなった
そして第19回公募(2025年4月)から、決定的な変更がありました。
「省力化(オーダーメイド)枠」が廃止されたのです。
その代わりに新設されたのが、省力化投資補助金(一般型)です。つまり、ものづくり補助金の中にあった省力化投資の枠が切り出されて、独立した別の補助金制度になりました。
この結果、現在のものづくり補助金に残っているのは以下の2枠だけです。
- 製品・サービス高付加価値化枠:革新的な新製品・新サービスの開発による高付加価値化
- グローバル枠:海外事業の実施による国内の生産性向上
飲食店が従来多く利用していた「生産プロセスの改善」「省力化のためのオーダーメイド設備導入」は、もはやものづくり補助金の対象枠に含まれていません。
制度変遷まとめ
| 時期 | ものづくり補助金の枠 | 飲食店の使いやすさ |
|---|---|---|
| 第16回まで(〜令和6年3月) | ①革新的な製品・サービス開発 ②革新的な生産プロセス・サービス提供方法の改善 | ②で多数の飲食店が採択 |
| 第17〜18回(令和6年3月〜) | 製品・サービス高付加価値化枠 / 省力化(オーダーメイド)枠 / グローバル枠 | 省力化枠で引き続き申請可能 |
| 第19回以降(令和7年4月〜) | 製品・サービス高付加価値化枠 / グローバル枠 | 省力化枠が廃止。多くの飲食店が使っていた生産プロセス改善・省力化は対象外に |
飲食店が使っていた枠の受け皿 → 省力化投資補助金(一般型)
では、今の飲食店はどの補助金を選ぶべきか
制度変遷を踏まえると、飲食店の設備投資の目的別に選ぶべき補助金は明確です。
「調理の効率化・人手不足の解消」→ 省力化投資補助金(一般型)
券売機、セルフレジ、配膳ロボット、自動精算機、製麺機、急速冷凍機、自動調理機 ― 飲食店の生産プロセス改善や省力化投資は、省力化投資補助金(一般型)で申請してください。
これはまさに、ものづくり補助金から切り出された枠の受け皿です。事業目的が「人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化投資を支援する」であり、飲食店の課題にそのまま合致します。
補助上限は従業員規模に応じて750万円〜最大1億円。小規模企業者(飲食店は従業員5人以下)なら補助率2/3が適用されます。採択率は60%超であり、ものづくり補助金(40%未満)よりも高い水準です。
「新しい事業モデルの構築」→ ものづくり補助金
一方で、革新的な新製品・新サービスの開発に取り組む飲食店には、現在のものづくり補助金も引き続き有力な選択肢です。「製品・サービス高付加価値化枠」で申請できます。
例えば、自店の人気メニューを独自技術で冷凍食品化してEC販売を開始する、特殊な加工技術(液体凍結、真空調理等)を導入してこれまで不可能だった商品カテゴリーを開発する、といった「飲食店の枠を超えた新しい事業モデルの構築」が該当します。
ポイントは、「既存の店舗運営の効率化」ではなく「新しい価値の創造」であること。ここが省力化投資補助金との決定的な違いです。
「業態転換・新分野進出」→ 新事業進出補助金
既存の飲食業から全く新しい事業分野に進出する場合は、新事業進出補助金(最大9,000万円)が選択肢です。建物費も対象になるため、店舗の大幅改装を伴う業態転換にも使えます。
「千葉県内で大型の設備投資」→ 千葉県中小企業成長促進補助金
千葉県内の飲食店で1,000万円以上の設備投資を計画しているなら、千葉県中小企業成長促進補助金も有力な選択肢です。従業員規模に関係なく補助上限3,000万円、事業計画書もものづくり補助金より簡易です。
飲食店の補助金選び早見表
| やりたいこと | 最適な補助金 | 補助上限※ |
|---|---|---|
| 調理の効率化・省力化 | 省力化投資補助金(一般型) | 最大1億円 |
| HP・SNS・看板等で集客 | 持続化補助金 | 最大250万円 |
| 冷凍食品EC等の革新的な新製品開発 | ものづくり補助金 | 最大2,500万円 |
| 業態転換・新分野進出 | 新事業進出補助金 | 最大9,000万円 |
| 千葉県内で大型設備投資 | 千葉県成長促進補助金 | 3,000万円 |
※補助上限額は、申請枠や特例によって異なります。詳しくは各補助金の公募要領をご確認ください。
ネット上の「飲食店×ものづくり補助金」情報を読むときの注意
最後に一つ、注意喚起です。
「飲食店 ものづくり補助金」で検索すると、多くの記事が「飲食店でも使えます!採択事例あり!」と書いています。しかし、その記事が紹介している採択事例の大半は、「革新的な生産プロセス・サービス提供方法の改善」が事業目的に含まれていた時代(第16回まで)や、「省力化(オーダーメイド)枠」が存在していた時代(第17〜18回)のものです。
2025年4月(第19回)以降の制度では、それらの事例と同じ内容でものづくり補助金に申請しても、そもそも該当する申請枠が存在しないため申請できません。
補助金の制度は毎年のように変わります。過去の情報を鵜呑みにせず、最新の公募要領に基づいて判断することが重要です。不安な場合は、最新の制度に精通した専門家に相談してください。
よくある質問(FAQ)
-
飲食店はもう「ものづくり補助金」に申請できないのですか?
-
申請自体は可能です。 ただし、現在のものづくり補助金は「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」のみです。従来飲食店の多くが利用していた「省力化(オーダーメイド)枠」は2025年に廃止されました。革新的な新製品・新サービスの開発に該当する投資であれば申請できますが、調理の効率化や省力化が目的なら省力化投資補助金(一般型)が適しています。
-
以前ものづくり補助金で採択された事例と同じ内容で申請したいのですが?
-
その事例が「生産プロセスの改善」や「省力化」に関するものであれば、現在のものづくり補助金では申請できない可能性が高いです。
第16回までの「革新的な生産プロセス・サービス提供方法の改善」や、第17〜18回の「省力化(オーダーメイド)枠」は、いずれも現在のものづくり補助金には存在しません。受け皿は省力化投資補助金(一般型)です。事例の内容がどの制度に該当するかは、最新の公募要領と照らし合わせて確認してください。
-
ものづくり補助金と省力化投資補助金の両方に申請できますか?
-
異なる設備・異なる事業であれば可能です。 例えば、セルフレジの導入は省力化投資補助金で、新商品(冷凍食品等)の製造ラインはものづくり補助金で、と使い分けることができます。
-
個人経営の小さな飲食店でも補助金を受けられますか?
-
はい、受けられます。 特に持続化補助金は従業員5人以下の飲食店が主な対象です。ものづくり補助金と省力化投資補助金も、小規模企業者(常時使用する従業員は1名~5名)であれば補助率2/3が適用されます。
-
どの補助金が自分の店に合うかわかりません。
-
そういう場合こそ専門家に相談してください。 投資の目的・規模・時期によって最適な補助金は異なります。当事務所では無料相談の段階で、最適な制度をご提案しています。
飲食店の設備投資・補助金活用をお考えの経営者様へ
プラネット行政書士事務所は、元補助金審査員の中小企業診断士・行政書士として、千葉県市川市を拠点に補助金申請をサポートしています。
ものづくり補助金の制度変遷を正確に理解した上で、飲食店の投資目的に合わせて省力化投資補助金・持続化補助金・ものづくり補助金・新事業進出補助金の中から最適な制度をご提案します。
「ものづくり補助金で申請するつもりだったが、制度が変わっていた」という事態を防ぐためにも、まずはオンライン無料相談にてお気軽にご相談ください。
補助金申請は「情報戦」と「長丁場のプロジェクト」です
補助金の申請は、公募要領を読み込み、審査員の視点で戦略を立て、数字の裏付けを整え、採択後の実績報告まで見据えた長丁場のプロジェクトです。本業の合間にご自身だけで進めようとすると、想像の何倍もの時間と労力がかかり、しかも「これで本当に通るのか」という不安は最後まで消えません。
プラネット行政書士事務所では、元・補助金審査員の経験を持つ代表が、ヒアリングから事業計画書の作成、採択後の交付申請・実績報告まで一貫して伴走します。外注・丸投げは一切なし。代表が直接担当するため、御社の強みや想いがそのまま計画書に反映されます。
「どの補助金が自社に合っているのか?」
——そんな初期段階のご相談も大歓迎です。しつこい営業は一切ありません。
※ご相談内容は守秘義務により厳重に管理いたします
_逆.jpg)
プラネット行政書士事務所
代表 中小企業診断士・行政書士・採用定着士・認定経営革新等支援機関
Xアカウント
1971年山口県下松市生まれ、千葉県市川市在住。25年間、IT業界の東証プライム上場企業を中心に法人営業や企画部門に従事し、大手製造業向けにIoTやDXの導入を推進。2022年3月に日鉄ソリューションズ株式会社を退社後、プラネット行政書士事務所を開業。中小企業のお客様へビジネス経験を活かした実現可能性の高い事業計画の策定や採用定着を支援。
(公財)千葉県産業振興センターで補助金受付業務(嘱託)や補助金事務局の審査経験がある補助金専門家として活動中。
