
「前回、持続化補助金に採択されたので、今回もまた申請したい」
補助金の支援をしていると、こうしたご相談をよくいただきます。補助上限は50万円、特例を使えば最大250万円まで伸び、手続きの負担も比較的軽い。一度活用した経営者が次も使いたいと考えるのは、ごく自然なことだと思います。
ただ、第20回公募(申請受付締切:2026年12月15日17時)では、過去に採択された事業者が再び申請できるタイミングのルールが変わりました。第19回までと同じ感覚で「そろそろ申請できるはずだ」と動き出すと、締切に間に合わないおそれがあります。
この記事では、行政書士・中小企業診断士として補助金支援を行い、審査員も務めた立場から、過去採択者が第20回に申請できるのかどうかを、ご自身で確かめられるように整理します。
結論:再申請までの待機期間が、実質1年延びました
先に結論からお伝えします。過去に持続化補助金へ採択された事業者が再び申請できるまでの期間が、第19回と第20回とで次のように変わりました。
| 比較項目 | 第19回まで | 第20回 |
|---|---|---|
| 再申請の条件 | 事業実施期間終了日の属する月の翌月から1年が経過し、様式第14(事業効果報告書)の提出を完了していること | 追加条件で、様式第14の提出完了後、さらに1年が経過していること |
| 実質的な間隔 | 前回の事業終了からおおむね1年後 | 前回の事業終了からおおむね2年後 |
第20回で「様式第14の提出完了後、さらに1年」という条件が加わったのが変更点です。これによって、第19回までなら申請できていた方が、第20回では待たなければならないケースが出てきます。
「前回申請できたのだから今回も大丈夫だろう」という思い込みが、いちばん危ないところです。
そもそも「様式第14」とは何か
待機期間の話には、様式第14という書類が何度も出てきます。ここを押さえておかないと条件が読み解けないので、先に説明します。
様式第14は、正式名称を「小規模事業者持続化補助金に係る事業効果および賃金引上げ等状況報告書」といい、交付規程第29条に定められた書類です。
内容は、補助事業が終わってから1年後の状況を報告するものです。補助金を使った取組でどのような効果(売上や販路開拓の成果)が出たか、賃上げ特例などを使った場合はその達成状況はどうだったか、といったことを報告します。
提出のタイミングは、補助事業の実施後、補助金事務局が指定する期限まで、とされています。事業終了から1年後の状況を報告する書類ですから、実際に提出するのは事業終了からおよそ1年後になります。
ここが肝心です。第20回の「様式第14の提出完了後、さらに1年」という条件は、もともと事業終了から1年ほど経ってようやく提出する書類の、そのまた1年後という意味になります。だからこそ、前回の事業終了から実質2年ほどの間隔が空く計算になるわけです。
補助金は、もらって終わりではありません。事業終了から1年後の報告まで含めて、ひとつの補助事業です。この報告を出していないと、そもそも次の申請ができない仕組みになっています。
専門家はこの手順で「申請できるか」を判定しています
では、ご自身が第20回に申請できるのかどうか、どう確かめればよいのか。私が実際に可否を判断するときの手順を、そのままお見せします。特別な判定ツールがあるわけではなく、公募要領のどこをどの順番で読むか、というだけの話です。
この順番どおりに手元の書類を確認すれば、ご自身でも判定できます。
ステップ1:前回の補助事業の「実施期間終了日」を特定する
まず、前回の補助事業がいつ終わったのかを確認します。交付決定通知書や実績報告の控えに記載があります。見るのは補助金の入金日ではなく、事業の実施期間が終わった日です。
ステップ2:様式第14を提出したか、提出日はいつかを確認する
次に、事業効果報告書(様式第14)を提出済みかどうかを確認します。「提出した記憶がない」という方は、この時点で第20回の申請対象外である可能性が高いので、まず提出状況の確認が最優先になります。提出済みなら、その提出日を控えておいてください。
ステップ3:待機期間を2段階で計算する
第20回の待機期間は、次の2つの条件を両方満たす必要があります。
- 実施期間終了日の属する月の翌月から1年が経過していること
- 様式第14の提出完了から、さらに1年が経過していること
この2つのうち、遅いほうの日付が申請解禁日です。通常は、2の様式第14提出から1年後のほうが遅くなります。
ステップ4:第20回の締切に間に合うか逆算する
第20回の申請受付締切は2026年12月15日17時です。ステップ3で出した申請解禁日がこの締切より前であれば、申請できます。
ステップ5:ほかの対象外要件に当たっていないか確認する
最後に、卒業枠・卒業加点での採択歴がないか、創業型に申請中・採択中でないかを確認します。代表者が変わっていても過去の補助事業者として扱われますので、先代のときの採択歴も含めて洗い出してください。
実際の申請回で逆算してみる:第16回と第17回が分かれ目
言葉だけではイメージしづらいので、実際の公募回に当てはめてみます。
ここでは前提を置きます。事業実施期間終了日は各回の実施期限どおりとし(実務では、多くの事業者がこの日の近くまで事業を続けます)、様式第14はその終了日のちょうど1年後に提出したと仮定します。この前提だと、条件2(様式第14の提出から1年)のほうが常に遅くなるため、申請解禁日は実質的に「事業実施期間終了日の2年後」となります。
この計算で過去の各回を並べると、第20回の締切(2026年12月15日)に間に合うかどうかの境界は、第16回と第17回のあいだにあります。
第16回(公募締切2024年5月27日)で採択・実施した場合
第16回の事業実施期限は2024年11月4日でした。
- 様式第14を1年後の2025年11月ごろに提出
- そこからさらに1年が経過し、申請解禁は2026年11月ごろ
- 第20回の申請受付開始は2026年11月5日、締切は2026年12月15日
この前提であれば、第16回で採択された方は、第20回の受付が始まるころに待機期間が明ける計算になります。
ただし、これはあくまで実施期限どおりに事業を終え、様式第14をその1年後に提出した場合の話です。実際に事業を完了した日も、様式第14を提出した日も、事業者ごとに違います。同じ第16回採択者でも、事業の完了が早かった方は余裕をもって申請できますし、逆に様式第14の提出が遅れていた方は、申請解禁日が第20回の締切に間に合わず、今回は申請できないこともあります。第16回だから必ず間に合う、とは言い切れない点にご注意ください。
第17回(公募締切2025年6月13日)で採択・実施した場合
第17回の事業実施期限は2026年7月31日でした。
- 様式第14を1年後の2027年夏ごろに提出
- そこからさらに1年が経過し、申請解禁は2028年夏ごろ
- 第20回の締切は2026年12月15日
第17回で採択された方は、この前提だと第20回はもちろん、その次の回でもまだ待機期間中である可能性が高く、再申請はかなり先になります。
おおまかな傾向としては、第16回までに採択・実施を終えた方は第20回が視野に入る可能性があり、第17回以降の方は今回は見送りとなる公算が大きい、という分かれ方になります。とはいえこれは目安にすぎず、間に合うかどうかは最終的に一人ひとりの日付しだいです。とりわけ境界の近くにいる第16回・第17回の採択者は、ご自身の事業完了日と様式第14の提出日を確認しないかぎり、間に合うとも間に合わないとも判断できません。様式第14の提出が遅れていた場合は、第16回採択でも今回は申請できないことがあるため、早めに日付を押さえておくことが欠かせません。
減点にも注意しておく
申請そのものはできても、審査で不利になる要素があります。ここは第20回で大きく変わってはいませんが、押さえておいてください。
過去採択者については、実施回数などに応じた段階的な減点調整が行われます。具体的な点数は公表されていませんが、回を重ねるほど不利になる仕組みです。また、過去に実施した補助事業と同じ事業だと見なされた場合は不採択となり、採択後に判明したときも遡って取り消されます。
賃上げ特例や賃上げ加点を使って採択されたにもかかわらず要件を達成できなかった場合は、様式第14で未達が報告された時点から18ヵ月のあいだ、中小企業庁が所管する補助金への申請で大幅に減点されます。対象はものづくり補助金、IT導入補助金、事業承継・M&A補助金、新事業進出補助金など広範囲に及びます。持続化補助金での賃上げ未達が、他の補助金の申請にまで響くということです。
審査する側から見て、2回目の申請で差がつくところ
審査員として過去採択者の申請を見ていると、評価がはっきり分かれる点があります。
前回の補助事業にはひと言も触れず、初回とほとんど同じ内容の計画を出してくる方が一定数いらっしゃいます。審査する側は過去の採択情報を把握したうえで読んでいますから、これは印象がよくありません。段階的な減点調整もあるなかで、初回と変わらない計画では厳しくなります。
一方で、前回の取組で何が得られ、何が課題として残ったのかを正直に書き、そこから次の一手につなげている計画は、減点があっても評価されます。中小企業診断士の視点で言えば、2回目の申請は、前回を経営のPDCAの1周目としてとらえ直す絶好の機会です。前回の結果を踏まえて経営計画を組み立て直せるかどうかが、採択の分かれ目になります。
いま動くべきこと:待機期間から逆算して準備を始める
第20回の申請受付は2026年11月5日に始まり、締切は2026年12月15日17時です。商工会・商工会議所による事業支援計画書(様式4)の発行受付は12月4日までなので、実質的な準備の期限はもう少し手前にあります。
過去採択者の方に、まず取りかかっていただきたいのは次の3つです。
ひとつ目は、前回の補助事業の実施期間終了日と、様式第14の提出日を正確に確認すること。この2つの日付がなければ、申請できるかどうかの判定が始まりません。
ふたつ目は、その日付から申請解禁日を逆算し、第20回に間に合うのか、次回以降になるのかを見極めること。間に合うのであれば、計画づくりに使える時間はもう限られています。
3つ目は、間に合う場合に、前回とは明確に異なる新しい事業計画の検討へ、すぐに取りかかること。待機期間から逆算し、残された時間のなかで計画を仕上げていく、という発想が必要です。
よくある質問
Q. 前回採択されてから2年以上経っていれば、必ず申請できますか。
期間の要件を満たしていても、様式第14を提出していなければ申請できません。また、卒業枠・卒業加点での採択歴がある場合は、期間に関わらず対象外です。まずは提出状況と採択枠を確認する必要があります。
Q. 様式第14を提出したかどうか分からない場合はどうすればよいですか。
交付規程で提出が義務づけられた書類ですので、提出したのであれば記録が残っているはずです。控えが見当たらない場合は、事務局への確認も含めて状況を整理することをおすすめします。未提出のまま放置すると、次の申請ができないだけでなく、補助金の返還を求められる可能性もあります。
Q. 前回と同じ設備をもう一度導入する計画でも申請できますか。
過去に実施した補助事業と同じ事業だと見なされた場合は不採択になります。手段が同じでも、狙う顧客や販路が明確に異なるなど、新たな事業だと説明できる内容にする必要があります。
Q. 代表者が交代していれば、過去の採択歴はリセットされますか。
されません。代表者が変わっても、事業者として過去に採択・実施していれば「過去の補助事業者」に該当します。
再申請の可否は、日付の確認から始まります
過去採択者による第20回への再申請は、可能です。ただし第20回では待機期間が実質1年延び、前回の事業終了からおおむね2年の間隔が必要になりました。申請できるかどうかは、前回の事業終了日と様式第14の提出日という、2つの日付を確認するところから始まります。
当事務所では、行政書士・中小企業診断士として、また補助金の審査員を務めた経験をもとに、過去の採択歴を踏まえた申請可否の確認から、前回と差別化した事業計画の作成まで、オンラインでの無料相談を承っています。
「自分のケースで第20回に間に合うのか、日付を見てほしい」という段階でのご相談も歓迎です。締切から逆算すると、動き出すのが早いほど選択肢は広がります。まずはお気軽に、オンライン無料相談へお申し込みください。
※本記事は「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募要領」に基づいて作成しています。申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認ください。
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代表 中小企業診断士・行政書士・採用定着士・認定経営革新等支援機関
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1971年山口県下松市生まれ、千葉県市川市在住。25年間、IT業界の東証プライム上場企業を中心に法人営業や企画部門に従事し、大手製造業向けにIoTやDXの導入を推進。2022年3月に日鉄ソリューションズ株式会社を退社後、プラネット行政書士事務所を開業。中小企業のお客様へビジネス経験を活かした実現可能性の高い事業計画の策定や採用定着を支援。
(公財)千葉県産業振興センターで補助金受付業務(嘱託)や補助金事務局の審査経験がある補助金専門家として活動中。






