著者 | 長野 利雄
プラネット行政書士事務所 

代表 中小企業診断士・行政書士・

認定経営革新等支援機関

補助金事務局で審査経験のある補助金専門家として、中小企業の事業計画の作成・補助金申請を支援しています

最大で5億円という大規模な投資支援が行われる「中小企業成長加速化補助金」。これだけの巨額な税金が投入される以上、審査の目は非常に厳しくなります。

事業計画書の中で最も重要なポイントの一つが「競合他社との差別化」です。

多くの経営者様が陥りがちなのが、以下のようなアピールです。

「導入する最新設備は、従来の設備より加工速度が2倍速く、精度も高い。だから他社に勝てる」

残念ながら、これだけでは「不採択」になる可能性が高いです。

なぜなら、「設備を買えば誰でも実現できること」は、差別化ではなく単なる「時間の問題」だからです。 資金力のある大手が同じ機械を買えば、その優位性は一瞬で崩れます。

5億円の投資を正当化するには、「他社が簡単に真似できない、盤石な強み」を示す必要があります。そこで有効なのが、経営戦略フレームワーク「VRIO(ブリオ)分析」です。

今回は、金属加工業を例に、VRIOを使って審査員を唸らせる差別化ストーリーの描き方を解説します。


本補助金は前回の採択率は16%の狭き門です。採択を勝ち取るには、中小企業成長加速化補助金の申請には、精緻な数値計画と100億円の売上実現可能性の高い裏付けのある事業計画が必要です。

補助金事務局で公募や交付の審査業務の経験があり、補助金申請に精通した専門家(中小企業診断士&行政書士)の支援が必要でしたら、当事務所の中小企業成長加速化補助金の申請サポートをご利用ください。事業計画の作成から支援しています。

単なる「機能比較」と「VRIO」の違い

差別化を説明する際、多くの企業は「製品・サービスの性能(Value)」だけで勝負しようとします。しかし、持続的な競争優位性を証明するには、以下の4つの視点をすべてクリアする必要があります。

【VRIO分析の4つの問い】

  1. Value(経済価値): その強みは、顧客にお金を払わせる価値があるか?
  2. Rarity(希少性): その強みを持っている企業は少ないか?
  3. Inimitability(模倣困難性): 【重要】その強みを、他社が真似しようとすると莫大なコストや時間がかかるか?
  4. Organization(組織): その強みを最大限活かせる組織体制になっているか?

特に重要なのは「I:模倣困難性」と「O:組織」です。「機械の性能」は誰でも買えますが、「職人の暗黙知」や「組織文化」は買えないからです。

【事例】金属加工業におけるVRIO活用のビフォーアフター

では、具体的に「航空機エンジン部品への参入」を目指して、最新の「同時5軸マシニングセンタ」を導入する場合で比較してみましょう。

❌ ダメな差別化(機能スペックのみ)

「当社が導入する最新の5軸加工機は、他社が持っている3軸加工機よりも複雑な形状を高速で加工できます。精度もミクロン単位で出せるため、高品質な製品を提供できます。」

審査員の心理:

「なるほど。でも、隣の工場が同じ機械を買ったらどうするの? 資金力のある競合が参入してきたら負けるよね?」

⭕️ 盤石な差別化(VRIO分析に基づく記述)

VRIOの視点を組み込むと、同じ設備導入でもストーリーの深みが劇的に変わります。

1. Value(経済価値)

「航空機業界で求められる『難削材(インコネル等)の複雑形状加工』に対応し、顧客の軽量化・燃費向上ニーズに応える高単価な部品を提供する。」

2. Rarity(希少性)

「5軸加工機自体は市場にあるが、当社が保有する『創業以来蓄積した難削材の熱変位データ』と、この設備を組み合わせられる企業は、地域内・業界内を見渡しても極めて稀である。」

3. Inimitability(模倣困難性)※ここが最大のポイント!

「他社が同じ機械を購入しても、同様の加工は不可能である。なぜなら、当社の強みは機械そのものではなく、『熟練職人が30年かけて培った切削条件のノウハウ(暗黙知)を、若手プログラマーが形式知化した独自のNCプログラムライブラリ』にあるからだ。

この『技術の歴史的蓄積』と『ベテラン×デジタルの融合プロセス』は、一朝一夕に模倣できるものではない。」

4. Organization(組織)

「この高度な設備とノウハウを活かすため、品質保証の国際規格『JIS Q 9100』を取得済みの品質管理チームを配置。さらに、24時間無人稼働を監視・維持できるシフト体制と、データ分析による継続的な改善プロセスが組織として定着している。」

まとめ:審査員が見ているのは「背景」にあるストーリー

いかがでしょうか?

後者の例では、「補助金で買う機械」はあくまでツールに過ぎず、真の競争力の源泉は「長年のノウハウ(歴史)」や「組織の仕組み」にあることを主張しています。

  • 機能比較: お金を出せば買える「点」の強み
  • VRIO分析: 歴史と組織が織りなす「面」や「立体」の強み

補助金申請の事業計画書における「経営力」や「差別化」の欄では、単に「何ができるか(What)」だけでなく、「なぜ他社にはできないのか(Why)」を、御社の歴史や組織体制(VRIO)と絡めて語ってください。

それこそが、5億円という巨額投資を任せるに足る「信頼の証」となります。


本補助金は前回の採択率は16%の狭き門です。採択を勝ち取るには、中小企業成長加速化補助金の申請には、精緻な数値計画と100億円の売上実現可能性の高い裏付けのある事業計画が必要です。

補助金事務局で公募や交付の審査業務の経験があり、補助金申請に精通した専門家(中小企業診断士&行政書士)の支援が必要でしたら、当事務所の中小企業成長加速化補助金の申請サポートをご利用ください。事業計画の作成から支援しています。