補助金申請を控えた中小企業の経営者様にとって、最も高いハードルの一つが「相見積(あいみつもり)」の準備です。
「付き合いのある会社にお願いしたい」「特殊な機械だから他では扱っていない」といった理由から、「業者選定理由書」で済ませようと考えてはいませんか?
実はその判断が、交付決定の遅延を招く最大の懸念点になるかもしれません。今回は、補助金申請における「見積書のセオリー」について警鐘を鳴らします。
「業者選定理由書」は魔法の杖ではない
多くの補助金(ものづくり補助金や新事業進出補助金など)では、原則として2社以上(または3社以上)の相見積書の提出が義務付けられています。
どうしても1社に絞らざるを得ない場合、その正当性を説明する「業者選定理由書」を提出しますが、これはあくまで例外中の例外です。事務局側は「税金から支出される以上、公平な価格比較が行われているか」を厳格にチェックします。
1. 「相当な理由」のハードルは想像以上に高い
単に「長年の付き合いがあるから」「信頼できるから」という理由は、審査では一切通用しません。
- 世界でその会社しか作れない特許技術である
- その会社以外では絶対に不可能な特殊なカスタマイズが必要であるこれらを、客観的な公的データやエビデンスを添えて証明しなければなりません。
2. 「ダメ出し」の無限ループに陥るリスク
業者選定理由書を提出すると、事務局から「なぜ他社ではダメなのか?」「このスペックなら他社でも可能ではないか?」といった疑義(差し戻し)が何度も届くことがあります。
このやり取りだけで1ヶ月、2ヶ月と時間が過ぎ去り、結局認められずに「相見積を取り直してください」と言われるケースが後を絶ちません。
交付決定を最速で得るための「鉄則」
補助金事業は、交付決定が下りるまで発注ができません。審査に手間取れば、それだけ事業開始が遅れ、ビジネスチャンスを逃すことになります。
早期に、かつ確実に交付決定を得るためのセオリーは、「安易に理由書に頼らず、原則通り相見積を取ること」です。
なぜ相見積が「急がば回れ」なのか?
- 審査がスムーズに通る: 2社の見積書が揃っていれば、事務局は金額の妥当性を比較するだけで済みます。
- 指摘のリスクを最小化できる: 理由書のような主観的な説明がないため、疑義が生じる余地が減ります。
- 価格交渉の材料になる: 補助金に関わらず、相見積を取ることで適正価格を把握でき、コスト削減につながるメリットもあります。
まとめ:経営者としての賢明な判断を
「相見積を取るのは相手の業者に悪い気がする」「手間がかかる」という気持ちは痛いほど分かります。しかし、補助金申請において「業者選定理由書」を選択することは、非常に成功率の低い賭けに出るようなものです。
確実に補助金を獲得し、一刻も早く事業を軌道に乗せるためには、「原則に則って相見積を揃える」。これが最も賢い、そして最短のルートです。
「このケース、どうしても相見積が取れないんだけど…」とお悩みですか?
もし具体的な状況についてご不安がある場合は、専門家と一緒に「本当に理由書で通るケースなのか」を精査することをお勧めします。まずは現在の準備状況を整理してみませんか?
