日本の働き方はこの30年で大きく姿を変えました。終身雇用・年功序列が当たり前だった時代から成果主義、働き方改革、そしてリモートワークやAI活用へ。
採用の在り方もまた社会の変化とともに進化してきました。本号では「過去30年の働き方と採用の変化」を振り返り、いま企業が直面している課題と未来に向けた採用戦略を考察します!
- 1. 1990年代:終身雇用と新卒一括採用の時代
- 1.1. 「安定神話」の光と影
- 1.2. バブル崩壊と雇用システムの維持
- 1.3. 採用市場の特徴
- 2. 2000年代:IT化と成果主義の導入
- 2.1. 「スピードと効率」が時代のキーワードに!
- 2.2. 成果主義の拡大と賛否両論
- 2.3. 採用市場のシフト
- 2.4. 採用市場の特徴
- 3. 2010年代:働き方改革とダイバーシティ
- 3.1. 労働力不足に挑む「多様化」の波
- 3.2. 政府主導の「働き方改革」
- 3.3. ダイバーシティ経営の広がり
- 3.4. 採用市場の特徴
- 4. 2020年代:~コロナ禍にて~リモートワークの定着、AIの台頭
- 4.1. オンライン化とAIが変えた採用の現場
- 4.2. この流れは採用の現場にも直結
- 4.3. AIがもたらす効率化
- 4.4. 採用市場の特徴
- 5. 未来:今後の採用と未来への示唆
- 5.1. 過去30年を振り返ると…
- 5.2. 今後の採用における最大の課題は?
- 5.2.1. 効率化
- 5.2.2. 人間味
1990年代:終身雇用と新卒一括採用の時代
「安定神話」の光と影
1990年代、日本の企業社会を支えたのは「終身雇用」「年功序列」「新卒一括採用」の三本柱でした。これらは戦後から高度経済成長期を経て完成した日本型雇用システムで「企業に入れば一生安泰」という安心感を生み出していました。
学生にとっては就職活動の時期と方法が画一化され、学歴や大学名が大きな影響を持ち、企業にとっても毎年同じ時期に大量の新卒を確保し、社内で一から教育していく仕組みが確立していました。
バブル崩壊と雇用システムの維持
しかし1991年のバブル崩壊は日本経済に深刻な打撃を与え、企業の経営環境は大きく揺らいだにもかかわらず多くの企業は既存の雇用慣行を維持し続けました。
従業員の解雇は「最後の手段」とされ、業績が悪化しても人件費を削ることには消極的でした。結果として企業は余剰人員を抱えながらも、内部での配置転換や教育で乗り切ろうとするケースが目立ちしました。
採用市場の特徴
「就職氷河期」が始まり、1990年代後半から2000年代初頭にかけて多くの学生が正社員としての就職機会を失いました。新卒一括採用が依然として基本でしたが企業は厳選採用を進め、内定を得られない学生が急増し結果として「非正規雇用」の拡大へと繋がり、後の日本社会の大きな課題となっていきました。
2000年代:IT化と成果主義の導入
「スピードと効率」が時代のキーワードに!
日本企業は激化するグローバル競争に直面しました。ITバブルの追い風を受けて効率化とスピードが企業経営の最重要テーマとなり、従来の「年功序列」的な評価制度に限界が見え始め、成果主義が一気に広がっていきました。
成果主義の拡大と賛否両論
成果主義の導入は欧米型の経営を取り入れる試みとして注目を集めました。個人の業績や数字を評価の軸に据えることで優秀な人材を引き上げ、組織全体の生産性を高める狙いがありました。
しかし現場では「短期成果ばかりを追う風潮が強まり、長期的な人材育成がおろそかになった」「数字で測れない貢献が評価されない」という不満も噴出してしまう結果になりました。社員の間には分断や疲弊が広がり、成果主義は必ずしも万能ではないことが明らかになりました。
採用市場のシフト
グローバル市場に打って出る企業は英語力や海外経験を持つ人材の確保に奔走しました。外資系企業が積極的に中途採用を行い、日系企業から優秀な人材を引き抜くケースも相次ぎました。
採用市場の特徴
IT化と成果主義の浸透によって「効率」「スピード」「即戦力」が重視される時代となり、採用においても従来の新卒一括採用モデルが揺らぎ、中途市場が急速に拡大しました。キャリアは企業に委ねるものから、自ら選び取るものへと変化を始めました。
2010年代:働き方改革とダイバーシティ
労働力不足に挑む「多様化」の波
日本の雇用環境は大きな転換期を迎えました。少子高齢化の加速により、労働力人口は減少の一途で人手不足は深刻化し、従来の採用モデルだけでは組織を維持できない現実が浮き彫りとなりました。
政府主導の「働き方改革」
政府は「働き方改革」を旗印に掲げ、長時間労働の是正、年次有給休暇の取得促進、テレワークの推進など労働環境の改善を進めた。単に人材を確保するだけでなく「いかに長く、健康に、効率的に働いてもらうか」が重要視されるようになりました。企業は労働時間管理や柔軟な勤務制度の導入を迫られ、人事部門の負担は一段と増していきました。
☑長時間労働の規制
☑年次有給休暇の取得推進
☑柔軟な勤務制度の推進
ダイバーシティ経営の広がり
女性の社会進出を後押しする政策やシニア人材の再雇用制度、外国人労働者の受け入れ拡大、障がい者雇用の義務化強化など、幅広い層を対象とした採用活動が広がり、企業は「ダイバーシティ経営」を掲げ、性別・年齢・国籍を超えた人材活用を推進しました。
採用市場の特徴
少子高齢化による労働力不足と多様化の必要性に直面した時代でした。「働き方改革」に加え、ダイバーシティ経営が広がり、採用は一層複雑化し、企業は「多様な人材をどう受け入れ、どう活かすか」という難題に挑むことになりました。
2020年代:~コロナ禍にて~リモートワークの定着、AIの台頭
オンライン化とAIが変えた採用の現場
新型コロナウイルスの感染拡大が社会全体を一変させました。出社を前提とした働き方は崩れ、リモートワークが急速に普及しました。企業は数か月という短期間でテレワーク環境を整備し、従業員の働き方は大きく変貌を遂げました。
この流れは採用の現場にも直結
- バーチャル会社説明会
- インターンシップのオンライン化
- Web面接の標準化
上記のような場所や時間にとらわれない採用活動が広がりました。これにより地方や海外の学生にも門戸が開かれ、企業にとっては母集団形成の幅も拡大しました。
AIがもたらす効率化
同時期に注目を集めたのがAIの活用で求人広告の自動最適化、候補者スクリーニングの効率化、さらには面接での言語解析や表情分析までAIは採用プロセスのあらゆる場面に浸透し始めました。
企業は限られたリソースでより多くの候補者を検討できるようになり、採用スピードは飛躍的に向上しました。
採用市場の特徴
コロナ禍を契機に進んだリモートワークの定着とAIの台頭は採用のスピードと効率を飛躍的に高めました。一方でデジタル化では補えない「人間ならではの価値」をどう示すかが、これからの企業に問われる最大のテーマとなっています。
未来:今後の採用と未来への示唆
過去30年を振り返ると…
日本の採用の在り方は大きな転換を繰り返してきたことがお分かり頂けたかと思います。雇用の仕組みや採用の形は常にその時代の社会情勢や経済状況を映し出してきています。
今後の採用における最大の課題は?
効率化
AIやデジタル技術を駆使して、応募者管理や選考プロセスをスピーディかつ正確に進める。短期間で最適な候補者を見つけ出し、採用コストを抑えることができる。
人間味
候補者に寄り添い、個性や価値観を理解しながら「この会社で働きたい」と感じてもらえる体験を提供すること。データでは測れない熱意や相性を見極め、誠実なコミュニケーションで信頼を築く力。
さらに人材獲得競争が激化する中で採用活動は短期的な人材充足ではなく、中長期的な経営戦略と直結して設計が求められるでしょう。採用の未来像は従業員一人ひとりとの「共感の接点」をどうつくるかが重要だと言えます。
ただし、これらを自社だけで実現するのは容易ではありません💦
今必要なのは時代の潮流を踏まえ、自社らしさを最大限に引き出す採用戦略の構築です。採用市場の変化は激しく、戦略設計には外部の専門家の知見が求められます!
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