- 「うちの営業マンは、どうもデキが悪くて…」
- 「何度言っても、同じミスを繰り返す。質をあげたいが、どうすれば…」
中小零細企業の社長様、日々の経営、本当にお疲れ様です。営業チームのパフォーマンスに、このように頭を悩ませてはいませんか?
良かれと思って営業ロープレ(ロールプレイング)を導入してみても、なんだかギスギスした雰囲気で終わってしまう。結局、部下のダメな点ばかりが目につき、つい「ダメ出し」をしては、相手のやる気を削いでしまう…。
もし、そんな悪循環に陥っているなら、その原因は「やり方の順番」が間違っているだけかもしれません。
その解決のヒントは、意外なところにありました。太平洋戦争時の連合艦隊司令長官、山本五十六が遺した、あまりにも有名なこの言葉です。
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
この言葉、単なる精神論だと思っていませんか? とんでもない。これは、現代のビジネス、特にリソースの限られた中小企業の営業チームを育てる上で、これ以上ないほど実践的な「最強の人材育成マニュアル」なのです。
なぜ、あなたの会社のロープレは失敗するのか?
多くの会社で失敗しているロープレは、この山本五十六の言葉の真逆を行っています。
【失敗するロープレ】
いきなり部下に「(さあ)させてみせ」、そして出来栄えに対して「(ダメ出しを)言って聞かせる」。
これでは、部下からすればたまったものではありません。「やり方もロクに教わっていないのに、いきなりやらされて、ダメなところばかり指摘される…」。これでは人が動かないどころか、心を閉ざし、自信を失い、挑戦すること自体を諦めてしまいます。
社長の「お手本なきダメ出し」は、部下を育てるどころか、潰してしまう危険な行為なのです。
山本五十六の教えを「営業ロープレ」に完全翻訳する
では、どうすればいいのか。この名言を、一つひとつ営業ロープレの正しいステップに翻訳していきましょう。
1. 「やってみせ」→ まず、社長が“最高のお手本”を見せる
これが全ての始まりであり、最も重要なステップです。
「さあ、やってみろ」ではありません。「まず、俺がやってみるから、見ておけ」です。
社長自らが営業役となり、部下にお客様役を頼んでみてください。完璧にこなす必要はありません。むしろ、難しい質問に考え込んだり、言葉に詰まったりする姿を見せることこそが、学びになります。「社長でもこうやって考えるのか」「なるほど、こう切り返すのか」と、その思考プロセスを見せること自体が、最高のお手本になるのです。
2. 「言って聞かせて」→ なぜそうしたか、“思考”を解説する
お手本を見せた後が肝心です。
「なぜ、あのタイミングでお客様の課題を聞いたのか」「なぜ、数ある資料の中から、あの資料を選んだのか」といった、行動の裏にある意図や戦略を、あなたの言葉で解説してください。
この「言語化」こそが、エース営業マンの感覚的なノウハウを、組織全体で使える「共有財産」に変える瞬間です。
3. 「させてみせ」→ いよいよ、本人が挑戦する番
ここまでインプットして、初めて部下の出番です。
お手本を見て、解説を聞いた後なので、本人も「何をすればいいか」が明確になっています。安心してバッターボックスに送り出してあげてください。たとえ失敗しても大丈夫。「練習だから、思い切りやってこい!」と、失敗を許容する雰囲気を作ることが大切です。
4. 「ほめてやらねば、人は動かじ」→ ダメ出しではなく、“承認と激励”のフィードバック
ロープレが終わったら、いよいよフィードバックです。
絶対に、第一声でダメ出しをしてはいけません。
まずは、良かった点を具体的に褒めるのです。
- 「さっきのお手本を早速取り入れたところ、すごく良かったぞ!」
- 「お客様が難色を示した時、慌てずに対応できたじゃないか!」
承認欲求が満たされ、安心したところで、「もし更によくするなら…」と改善点を一つか二つ、具体的に提案します。人は、認められて初めて、素直にアドバイスを受け入れ、次への一歩を踏み出すエネルギーが湧いてくるのです。
人は「育てられる」のではなく、自ら「育つ」もの
実は、この有名な言葉には続きがあります。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
ロープレで短期的なスキルを教えるだけでなく、日頃から部下の話に耳を傾け、その存在を承認し、そして信じて仕事を任せてみる。こうした土壌があって初めて、人は自律的に「育って」いきます。
社長。営業マンが育たないと嘆く前に、まずはご自身の「教え方」を見直してみませんか?
山本五十六の言葉は、経営者にこう問いかけています。「あなたは、部下が動きたくなるような“やってみせ”ができていますか?」と。
まずは来週の朝礼後、たった15分で構いません。
ご自身が「やってみせる」ことから、始めてみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、必ずやチームを変える大きな一歩となるはずです。
