「お客様は神様です」とはよく言われる言葉ですが、その「神様」であるお客様一人ひとりの声を、私たちは本当に聞けているでしょうか?
別のコラムで、BtoB(法人向け)ビジネスにおける顧客アンケートの重要性についてお話ししました。しかし、不特定多数の、そして多様な価値観を持つ消費者を相手にするBtoC(消費者向け)ビジネスこそ、顧客アンケートは企業の生命線とも言えるほど、計り知れない価値を持っています。
SNSで目にする数件の絶賛コメントに喜び、稀に見る厳しいレビューに一喜一憂する。それも大切ですが、その声は顧客全体のほんの一部かもしれません。あなたのビジネスの未来を創るヒントは、まだ声に出されていない「物言わぬ多数派(サイレント・マジョリティ)」のお客様が握っています。
今回は、なぜBtoCビジネスが顧客アンケートに取り組むべきなのか、そして、お客様の「本音」を引き出す具体的な方法について解説します。
なぜ、今あなたのビジネスに「顧客アンケート」が必要なのか?
BtoCビジネスは、お客様の「気分」や「流行」、そして「共感」に大きく左右されます。昨日まで人気だった商品が、今日は見向きもされない、ということも珍しくありません。このような変化の激しい市場で生き残るためには、顧客の心の機微を敏感に察知し続ける必要があります。
顧客アンケートは、そのための最も強力なツールです。具体的には、以下のようなメリットをもたらします。
- 「なぜ選ばれたか(選ばれなかったか)」が分かる: お客様があなたのお店や商品を選んだ決定的な理由、あるいは購入をためらった本当の理由を明らかにできます。
- 顧客満足度を可視化し、リピーターを育てる: 漠然とした「お客様満足」を具体的な数値や言葉で把握することで、改善点が明確になり、顧客ロイヤルティを高める施策を打てます。
- 炎上や悪評を未然に防ぐ: お客様の不満をいち早く察知し、個別に対応することで、ネガティブな口コミが広がる前に対策を講じることができます。
- 新商品・新サービスの開発ヒントを得る: お客様が「こんなのがあったらいいな」と思っている潜在的なニーズは、新たなヒット商品を生む宝の山です。
- スタッフのモチベーション向上: お客様からの感謝の言葉は、現場で働くスタッフにとって何よりの励みとなり、サービス品質の向上に繋がります。
BtoCならではのアンケート、「いつ」「何」を聞くか?
BtoCのアンケートで最も重要なのは「手軽さ」と「タイミング」です。お客様に面倒だと思われた瞬間に、回答してもらうことはできません。
アンケートの収集方法
お客様が「答えやすい」と感じる方法を選びましょう。
- レシートにQRコードを印字: お会計後、最も記憶が新しいうちに回答を促せます。「アンケート回答で次回使える5%OFFクーポンプレゼント!」といったインセンティブも有効です。
- 購入後のサンクスメールに記載: ECサイトであれば、商品発送や到着のタイミングで送るメールにアンケートのURLを記載するのが効果的です。
- 店頭にアンケートBOXを設置: アナログですが、手書きの温かみのある意見が集まることもあります。
- SNSのアンケート機能(投票): 「次の限定メニュー、どっちが食べたい?」といった簡単な質問であれば、SNSの機能を活用して気軽に意見を募ることができます。
アンケート内容の具体例
質問は3〜5問程度に絞り、直感的に答えられるものにしましょう。
<基本の質問例(飲食店や小売店など)>
- 当店を何でお知りになりましたか?(例:Google検索、Instagram、知人の紹介、通りすがり)
- 本日の満足度を5段階で教えてください。 (★★★★★)
- (満足度の理由について)特に良かった点、改善してほしい点があれば教えてください。(自由記述)
- 当店を友人や家族におすすめしたいと思いますか?(「はい/いいえ/どちらでもない」など)
- また来店したいと思いますか?
<さらにファン度を測る質問>
- NPS®(ネット・プロモーター・スコア)を導入する
- BtoB編でもご紹介しましたが、「このお店(商品)を友人にすすめる可能性は0〜10点で何点ですか?」と質問し、顧客のロイヤルティを測る方法はBtoCでも極めて有効です。
「お客様の声」を会社の文化にする
アンケートで集まった声は、必ず全員で共有しましょう。
- 感謝の声: 全スタッフに共有し、お店全体の成功体験とします。名指しで褒められたスタッフがいれば、きちんと評価することで、全体のサービスレベルが向上します。
- 改善点の指摘: 決してクレームとして終わらせず、「どうすればもっとお客様に喜んでもらえるか」という前向きな議題として全員で考えましょう。そして、改善したことは、SNSや店頭POPで「お客様の声にお応えして、〇〇を改善しました!」と積極的に発信することが重要です。
このサイクルを回し続けることで、お客様は「このお店は私たちの声を聞いてくれる」と感じ、より強い信頼関係が生まれます。
まとめ:ファンと共に、未来のビジネスを創る
BtoCビジネスの成功は、いかに多くの「ファン」を創れるかにかかっています。そして、ファンとは「自分の声に耳を傾けてくれる」と信じられる相手にこそ、ついてくるものです。
高価な分析ツールは必要ありません。まずは、レシートの隅にQRコードを印刷することから始めてみませんか?
そこに集まる一つひとつの「本音」が、あなたのお店の未来をより良い方向へと導いてくれる、最高のコンサルタントになるはずです。
