「こんなに良い良い商品・サービスができた。でも、これを一体どうやってお客様に届け、買ってもらえばいいのだろう?」
この「どうやって届けるか」という問いこそ、マーケティングの出発点です。そして、その設計図となるのが、今回お話しする「マインドフロー」の考え方です。
「良いモノを作れば売れる」という幻想から抜け出そう
情熱を込めて作り上げた商品だからこそ、「この良さは、使ってもらえれば絶対にわかるはずだ!」と思いがちです。しかし、残念ながら、現代において「良いモノを作れば自然に売れる」ということは、まずありません。
なぜなら、お客様は情報の大海の中にいて、あなたの会社のことも、あなたの商品の存在すら知らない可能性が高いからです。
仮に知ったとしても、「知る」ことと「買う」ことの間には、思った以上に長く、険しい道のりがあります。お客様は、この道のりの途中で、
- 「本当に自分に関係あるのかな?」
- 「他の商品と何が違うんだろう?」
- 「今すぐ買う必要はあるだろうか?」
といった、たくさんの心の壁(心理的なハードル)に直面します。
このお客様の心の旅路を無視して、いきなり「さあ、買ってください!」と叫んでも、その声は届きません。
お客様の「心の旅の地図」=マインドフロー
そこで必要になるのが、お客様の「心の旅の地図」です。
マーケティングの世界では、これをお客様の心の動き(変遷)という意味で「マインドフロー」と呼びます。
難しく考える必要はありません。お客様が、
あなたの商品を全く知らない状態(スタート)から、最終的に購入し、熱烈なファンになる(ゴール)まで、心がどのように動いていくか
を可視化したもの、と捉えてください。
一般的に、お客様の心の旅は、以下のようなステップで進んでいきます。
【お客様の心の旅(マインドフロー)の基本ステップ】
- 《未認知》
- お客様の状態:あなたの会社や商品のことを全く知らない。そもそも自分の悩みに気づいていないことも。
- 《認知》
- お客様の状態:「へぇ、こんな会社(商品)があるんだ」と、初めて存在を知る。
- 心の声:「〇〇(社名)…?初めて聞いたな」
- 《興味・関心》
- お客様の状態:「なんだか面白そうだな」「もしかしたら自分の悩みを解決できるかも」と、自分ごととして捉え始める。
- 心の声:「うちの会社も売上に悩んでるし、少し詳しく見てみるか…」
- 《比較・検討》
- お客様の状態:他社の商品と比べたり、価格や内容を詳しく調べたりして、自分にとって本当に必要かを見極めている。
- 心の声:「A社と比べてどう違うんだ?」「導入した人の声を聞きたいな」
- 《購入・申込》
- お客様の状態:「よし、これに決めた!」と、お金を払う決断をする。
- 心の声:「まずは一度、相談してみよう!」
- 《継続・ファン化》
- お客様の状態:実際に使ってみて満足し、「また利用したい」「知り合いにも勧めたい」と感じている。
- 心の声:「ここのサポートは手厚いな。次の契約もお願いしよう。困っているB社の社長にも教えてあげよう」
なぜ、この「地図」が重要なのか?
「面倒だな」と思われるかもしれませんが、この地図を描くことには、計り知れないメリットがあります。
1. 打つべき施策が“的確”になる
この地図があれば、「どの段階にいるお客様に、何をすべきか」が一目瞭然になります。
例えば、まだあなたのことを知らない**《認知》**段階の人に、いきなり「今すぐ購入を!」とセールスしても響きません。この段階では、まず「ここに、あなたの悩みを解決できる会社がありますよ」と知らせる広告やSNS投稿が有効です。
一方で、《比較・検討》段階にいる人には、「お客様の声」や「他社との違いがわかる資料」を見せることが、最後の一押しになります。
このように、お客様の心の状態に合わせたアプローチができるため、マーケティング施策の成功率が格段に上がります。
2. 課題(ボトルネック)が“見える化”される
「広告費をかけているのに、一向に問い合わせが増えない…」という場合、どこに問題があるのでしょうか?
マインドフローの地図があれば、「広告で《認知》は取れているが、その先のホームページで《興味・関心》を引けていないのが原因だ」といったように、課題の場所を特定できます。原因がわかれば、改善策(この場合はホームページの改善)に集中でき、PDCAサイクルを効率的に回せるようになります。
まとめ:最高の航海には、最高の地図が必要
せっかく情熱を込めて素晴らしい船(商品・サービス)を造り上げたのですから、次はその船をお客様という目的地まで届けるための、最高の「海図(マインドフロー)」を手に入れましょう。
お客様の心の動きを理解し、その旅路にそっと寄り添う。
これが、いつの時代にも原理原則となるマーケティングの姿です。
