「建物費が対象になる」というのは、この補助金の最大の魅力の一つですが、同時に「最大の事故多発地帯」でもあります。
建設工事の見積もりには、補助金では対象にならない「対象外経費」が知らず知らずのうちに混入しやすく、後から「これは払えません」と減額されたり、最悪の場合は要件不備になったりするリスクがあります。
工場や倉庫の建設、あるいは大規模な改修を検討されている経営者様に向けて、絶対に押さえておくべき6つの注意点を整理しました。
「新しい工場を建てて生産能力を倍増させたい」
「老朽化した倉庫を最新鋭の物流拠点に建て替えたい」
一般的な補助金では対象外になりがちな「建物費」が対象となる本補助金は、設備投資を考える経営者にとってまたとないチャンスです。
しかし、「建設工事の見積もり=すべて補助対象」だと思っていると、痛い目を見ます。
建設関連の経費には、独特のルールと厳しい制約があります。採択後に「えっ、これは対象外なの?」「投資額が足りなくて要件落ち?」とならないよう、計画段階で必ずチェックすべき6つのポイントを解説します。
1. 「建物」と「構築物」は別物! 見積もりの"中身"を精査せよ
公募要領には難しい法律用語が並んでいますが、シンプルに言うと「決算書の固定資産台帳で『建物』『建物附属設備』『付帯工事』になるものだけが対象」です。
⚠️ ここが危険!
建設会社から出てくる「一式見積もり」には、以下のような「構築物(補助対象外)」「汎用性のある機器」が含まれていることがよくあります。
- 駐車場の舗装(アスファルト等)
- 敷地を囲うフェンス、門扉
- 植栽、造園工事
- 屋外の広告塔、看板
- 汎用性のある機器
これらが含まれたまま申請し、交付審査で「対象外」と判定されると、その分が減額されます。最初から見積書を分け、対象外経費を除いた金額で資金計画を立てる必要があります。
2. 賃貸物件の改装・増築は「自社の資産」にできるかが鍵
自社ビルではなく、借りている工場や倉庫を改修・増築する場合も注意が必要です。
- 資産計上: 単なる「修繕費(費用)」ではなく、自社の資産として固定資産台帳に載せる必要があります。
- オーナーとの契約: 改修後も長期間、自社がその設備を管理・使用できる契約が、物件オーナーと結ばれていることが必須です。
「借り物だから」と安易に考えると対象外になります。会計処理と契約関係をクリアにしておきましょう。
3. 「補助事業専用」であること(既存事業との混在注意)
建物は「専ら補助事業のために使用される」必要があります。
⚠️ ここが危険!
例えば、事業計画のテーマを「新規事業の立ち上げ」に限定した場合、そのために建てる工場で「既存事業の製品」も製造すると、「目的外使用」とみなされ対象外になるリスクがあります。
- 事業計画の範囲(補助事業の定義)を、既存事業も含めた広い範囲で設定する。
- もしくは、工場内で明確にラインを分ける。
このように、事業計画の作り方(スコープ設定)と運用の整合性が問われます。
4. 設計費・監査費の計上方法で「投資額要件」が変わる
設計事務所への報酬などをどう処理するかで、運命が変わる場合があります。
- パターンA:建物費に含める(資産計上)
- パターンB:外注費とする(費用処理)
⚠️ ここが危険!
本補助金には「補助対象経費における投資額1億円以上」という申請要件があります。
ただし、設計費を「外注費」として計上した場合、それは投資額のカウントに含まれません。
ギリギリの投資額で計画している場合、設計費を外注費にしたせいで「投資額不足=申請要件不備」となる恐れがあります。顧問税理士と相談し、確実に投資額要件を満たす計上方法を選んでください。
5. 中古物件の購入は「なぜその物件か?」が問われる
中古の工場や倉庫を買う場合は、新築以上に審査が厳しくなります。見積書に加え、「業者選定理由書」で以下の証明が必要です。
- 価格の妥当性: 近隣の不動産相場と比較して適正価格か?
- 必然性: なぜ新築ではなく、この中古物件でなければならないのか?
単に「安いから」では弱いです。「立地条件が事業に不可欠」「即時稼働が必要」など、事業戦略上の必然性を説明できるようにしておきましょう。
6. スケジュールは「11月発注」が最短ルート
最後にスケジュールの罠です。
- 採択発表: 7月下旬予定
- 交付決定(発注OKになる日): 交付申請から決定までの手続きに最低でも約3ヶ月はみときましょう
つまり、実際に建設会社と契約・着工できるのは最短でも「11月以降」です。
これより前に発注や着工をしてしまうと、全額対象外になります。
また、建設業界は人手不足と資材高騰が続いています。見積もりの有効期限や工期の遅れを見越し、金額とスケジュールには十分なバッファ(余裕)を持たせてください。
まとめ:建物費は「見積もりの仕分け」と「税務判断」が命
建物費が含まれる申請は、金額が大きくなる分、少しのミスが命取りになります。
- 見積書から「構築物(フェンス・舗装)」「汎用性のある機器」などを排除する。
- 設計費の会計処理を顧問税理士さんと決める。
- 最短でも11月着工のスケジュールで業者と握る。
この3点は今すぐ確認してください。
本補助金は前回の採択率は16%の狭き門です。採択を勝ち取るには、中小企業成長加速化補助金の申請には、精緻な数値計画と100億円の売上実現可能性の高い裏付けのある事業計画が必要です。
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