• 「俺が若い頃は、もっと必死に働いたもんだ」
  • 「これだけ言ってやっているのに、どうして響かないんだ…」
  • 「結局、言われたことしかやらない…」

社長、日々会社を経営される中で、社員に対してこんな風に頭を抱えていらっしゃいませんか?

特に私たち中小零細企業にとって、社員一人ひとりの力は会社の未来を左右する死活問題です。社長の右腕となるような人材が育てば会社は伸びますし、社員のやる気がなければ、会社の成長は止まってしまいます。

だからこそ、社員が思うように動いてくれない、やる気を見せてくれないという悩みは、本当に深刻なものだとお察しいたします。

その悩み、「最近の若い者は…」で片付けていませんか?

上手くいかない状況が続くと、つい「今の若い連中は、育った環境が違うからダメだ」と、“世代”のせいにして諦めてしまいたくなる気持ちも分かります。

しかし、社長、本当にそれで良いのでしょうか?

「世代が違うから仕方ない」と匙を投げてしまえば、思考はそこで停止します。貴重な人材が「この会社では自分は輝けない」と去っていくのを、ただ見ているだけになってしまいます。それは、会社にとって大きな損失です。

実は、この問題の本質は、「世代」という漠然としたものではなく、もっと身近なところに隠されています。

警告:社長の“当たり前”が、社員の“やる気”を奪っているかもしれない

少し厳しい言い方かもしれませんが、社員が動かない原因は、社長自身の「考え方」にあるのかもしれません。

社長が寝る間も惜しんで会社を立ち上げ、必死に働いてこられた時の原動力は何だったでしょうか?

  • 「絶対に成功してやる!」という達成感
  • 「大きな仕事で世間を驚かせたい」という影響力
  • 「誰にも負けない会社を作る」という野心

その情熱は、会社をここまで成長させた、何物にも代えがたい素晴らしいエネルギーです。

しかし、社員全員が、社長と全く同じ“当たり前”や“情熱”を持っているとは限りません。 社長にとっての「常識」や「やる気の源泉」を、そのまま社員に押し付けてはいないでしょうか?

人間の“やる気スイッチ”は、実は28種類もある!

心理学の世界では、人が「よし、頑張ろう!」と心から思える要因、いわば“やる気スイッチ”は、少なくとも28種類以上あると言われています。

これは、アメリカの心理学者ヘンリー・マレーが提唱した理論が元になっています。全てを覚える必要はありません。ただ、社長に知っていただきたいのは、「人を動かすスイッチは、一つではない」という事実です。

例えば、社長のスイッチが「達成」や「影響力」だとしても、部下のスイッチは全く別のところにあるかもしれません。

  • 「仲間と楽しく働きたい」という親和性
  • 「お客様から『ありがとう』と言われたい」という貢献
  • 「上司や先輩に認められたい」という承認
  • 「新しいスキルを身につけて成長したい」という自己成長
  • 「家族との時間を大切にしながら、安心して働きたい」という安定

いかがでしょうか。社長の感覚からすれば、「そんなことでやる気になるのか?」と感じるものもあるかもしれません。

しかし、そこに優劣や正誤はありません。ただ単に、心に火がつく“スイッチ”が違うだけなのです。社長が良かれと思って「もっと大きな仕事を任せるぞ!」とハッパをかけても、部下が求めているのが「丁寧なフィードバックによる安心感」であれば、その声は響きません。むしろ、プレッシャーで萎縮してしまうだけです。

社長が今すぐできる「社員のスイッチ探し」

では、どうすればいいのか? 難しく考える必要はありません。まずは、社長が少しだけ視点を変え、社員一人ひとりを「観察」し、彼らの「スイッチはどこにあるのだろう?」と考えてみることです。

大企業のような立派な研修制度はなくても、中小企業だからこそできる、血の通ったアプローチがあります。

  • ヒント1:日々の雑談にこそ宝がある
    • 仕事の話ばかりでなく、「最近、何か面白いことあった?」「休みの日は何してるの?」といった何気ない会話の中に、その人の価値観や大切にしていることが隠されています。
  • ヒント2:小さな「ありがとう」を具体的に伝える
    • 「あの資料、分かりやすくて助かったよ。ありがとう」「君が粘り強く対応してくれたおかげで、お客様が喜んでいたぞ」。具体的に、感謝の気持ちを伝えてみてください。「認められている」というスイッチが入る社員は、驚くほど多いものです。
  • ヒント3:「君はどう思う?」と意見を求めてみる
    • トップダウンで指示を出すだけでなく、時には「この件、どう進めるのが良いと思う?」と意見を求めてみましょう。「自分も会社の一員として頼りにされている」と感じることが、責任感や当事者意識のスイッチを押すことがあります。

社長の視点が変われば、会社はもっと強くなる

マネジメントとは、部下を自分の思い通りに「操作」することではありません。部下一人ひとりが持つ、多様な「やる気スイッチ」を見つけ出し、それを押してあげられる「環境を整える」ことです。

社員のスイッチが正しく入れば、彼らは自ら考え、動き出します。そのエネルギーは、必ずや会社の力強い成長エンジンとなり、社長に返ってきます。

社長、まずは一人で結構です。今、一番気になっているあの社員の「やる気スイッチ」は、28種類のうち、一体どれなのだろう?

そんな視点で、明日から社員の顔を見てみませんか? 社長の少しの視点の変化が、会社を大きく変える最初の一歩になるはずです。