• 「ビジネスフレームワークが大事なのは分かるが、種類が多すぎてどれを使えばいいか分からない…」
  • 「SWOT分析やPEST分析?なんだか難しそうで、うちみたいな小さい会社には関係ないよ…」

毎日、現場の最前線で戦っておられる社長様なら、一度はこう思われたことがあるのではないでしょうか。

ご安心ください。その感覚は、全くもって正しいものです。

世の中には無数のフレームワークがありますが、その多くは大企業向けに作られたもの。リソースの限られる中小零細企業が、すべてを使いこなす必要は全くありません。

今回は、数あるフレームワークの中から、本当に現場で使え、明日からの「具体的な一手」に繋がるものだけを「4種の神器」として厳選。さらに、小難しい言葉を使わずに経営戦略を立てる、超実践的な方法をご紹介します。

結論:社長が持つべき「4種の神器」はこれだけ!

難しい横文字は一旦忘れましょう。社長がまず使いこなすべき「思考の武器」はこの4つだけです。

  1. 【お客様を知る】顧客マインドフロー
  2. 【自社の儲けを知る】バリューチェーン分析
  3. 【戦う場所を決める】3C分析
  4. 【具体的な打ち手を決める】4P/4C分析

これら4つが、なぜ中小零細企業にとって最強の武器となるのか。それは、「お客様」と「自社の事業」という、商売の根幹に徹底的に向き合うことができるからです。

1. お客様の「心」の旅を追いかける:顧客マインドフロー

これは、お客様があなたの商品を「知らない」状態から、最終的に「ファン」になるまでの心の動きを、7つの段階に分けて追いかける地図です。ちなみにカスタマージャーニーマップと呼ばれるフレームワークも同じような内容です。

  • 【認知】:まだあなたの会社や商品の存在を知らない。
    • 目的:まずは知ってもらうこと。
  • 【興味】:存在は知ったが、自分に関係あるかピンときていない。
    • 目的:「お、これは自分のためのものかも?」と関心を持ってもらうこと。
  • 【行動】:興味を持ち、もう少し詳しく知りたいと思い始めている。
    • 目的:問い合わせや資料請求など、最初のアクションを起こしてもらうこと。
  • 【比較】:具体的なアクションを起こし、他社の商品や「現状維持」と比べている。
    • 目的:「他社より、こっちの方が良さそうだ」と優位性を感じてもらうこと。
  • 【購買】:契約したい気持ちはあるが、失敗したくないと最終決断を迷っている。
    • 目的:不安を取り除き、「契約する」という決断を後押しすること。
  • 【利用】:実際に商品を使い、その価値を実感している。
    • 目的:より満足度を高め、使い方をサポートすること。
  • 【愛情】:商品・サービスに満足し、あなたの会社のファンになっている。
    • 目的:継続利用や、知人への紹介(口コミ)をしてもらうこと。

社長の仕事は、お客様が今どの段階にいて、次の段階へ進むために何につまずいているのかを見つけ出し、その障害を取り除いてあげることです。

2. 自社の「儲けの源泉」を見える化する:バリューチェーン分析

「うちは、なんでお客様に選ばれているんだろう?」その答えを、感覚ではなく「事業活動のどの部分で価値が生まれているか」で具体的に特定するのが、この分析です。仕入れ、製造、梱包、接客、アフターサービス…この連鎖の中で、どこが付加価値を生む「強み」なのか、逆にどこがコストを圧迫する「弱み」なのかが一目瞭然になります。以下に考えを整理するフォーマットをスプレッドシートで公開していますので、利用してみてください(2つのシートが含まれています)。

バリューチェーン分析をするシートdocs.google.com

3. 戦う場所と自分の武器を知る:3C分析

「お客様(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの視点で、事業の現状をシンプルに整理します。先の2つの分析で分かった「お客様の心の動き」と「自社の強み」を武器に、「どの競合がいる市場で、どの強みを活かして戦うのか」という事業の基本戦略を明確にします。以下に考えを整理するフォーマットをスプレッドシートで公開していますので、利用してみてください(4つのシートが含まれています)。

3C分析を考え、整理するための記入シートdocs.google.com

4. 戦略を「具体的な打ち手」に落とし込む:4P/4C分析

考えた戦略を、明日からのアクションに落とし込むための最終兵器です。ここでは「企業側の目線(4P)」と「お客様側の目線(4C)」の両方から考えるのが失敗しないコツです。

【企業目線の4P】

  • 製品(Product):どんな商品やサービスを提供するか?
  • 価格(Price):いくらで売るか?
  • 流通(Place):どこで、どうやって届けるか?
  • 販促(Promotion):どうやって知ってもらい、買ってもらうか?

これだけだと、どうしても「作り手の論理」になりがちです。そこで、お客様の目線に切り替えます。

【お客様目線の4C】

  • 顧客価値(Customer Value):その商品は、お客様にとってどんな価値があるか? (←Product)
  • 顧客コスト(Customer Cost):お客様が支払うのは、お金だけでなく時間や手間も含めてどれくらいか? (←Price)
  • 利便性(Convenience):お客様は、どれだけ簡単にそれを手に入れられるか? (←Place)
  • コミュニケーション(Communication):お客様は、企業とどんな対話を求めているか? (←Promotion)

4Pで戦略の骨子を考えつつ、常に「お客様にとっての4Cはどうだろう?」と自問自答することで、独りよがりではない、本当に顧客に愛される打ち手が見えてきます。以下に考えを整理するフォーマットをスプレッドシートで公開していますので、利用してみてください(2つのシートが含まれています)。

4C/4Pを考え分析シートdocs.google.com

「外部環境」はこう考えろ!社長のための超実践的思考法

さて、ここで「外部環境の分析はしなくていいのか?」という声が聞こえてきそうです。

結論から言います。「外部環境」という難しい言葉は、今日から使うのをやめましょう。

その代わりに、世の中の全ての変化を「うちにとって、それはどういうことか?」という「自分ゴト」に変換して考えます。これが、社長が持つべき最強の思考法です。

チャンスは「強み」に変えて語る

世の中の「追い風」を、ただ「チャンスだ」で終わらせてはいけません。「その追い風のおかげで、うちの『これが』もっと強みになるぞ!」と考えるのです。

  • (例)「インバウンド客が戻ってきた(追い風)」
  • →「よし、うちの『英語が話せるスタッフがいる』という強みを最大限に活かせるぞ!」

ピンチは「弱み」として語る

世の中の「向かい風」も、ただ「やばい」で終わらせません。「この向かい風のせいで、うちの『これが』もっとヤバくなるな…」と捉えるのです。

  • (例)「原材料の値段がまた上がった(向かい風)」
  • →「まずい、うちの『価格の安さだけがウリ』という弱みが、いよいよ通用しなくなるぞ…」

このように、全ての変化を自社の「強み・弱み」に引きつけて考えることで、課題は一気に「自分ゴト」となり、具体的なアクションが見えてきます。

明日から始める!「わが社の戦略」4ステップ

さあ、いよいよ実践です。以下の4ステップで、自社の戦略を紙に書き出してみましょう。

ステップ1:【徹底的に知る】まずはお客様の「心の旅」と、自社の儲けの仕組みを書き出す

(使う神器:顧客マインドフロー、バリューチェーン分析)

ステップ2:【戦場を決める】ライバルを見て、わが社の「勝ち場所」を定める

(使う神器:3C分析)

ステップ3:【風を読む】世の中の追い風・向かい風を「自分ゴト」にする

(思考法:「強み・弱み」への変換)

ステップ4:【打ち手を決める】具体的なアクションプランを作り、すぐやる!

(使う神器:4P/4C分析)


フレームワークは、社長の頭を悩ませるためのものではありません。多忙な社長の思考を整理し、社員と「共通言語」で未来を語るための、最高のツールです。

難しい言葉に振り回される必要はありません。ひたすらに「お客様」と「自社」に向き合い、ご紹介した4つの神器と「自分ゴト化」思考法で、明日からの一手を力強く踏み出してください。