原材料費や光熱費、人件費の高騰…。「値上げ」は多くの飲食店経営者にとって、避けては通れない経営課題です。しかし、「値上げをしたら、お客さんが来なくなってしまうのでは…」と、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、顧客満足度を下げずに、むしろ売上アップにつなげる「値上げ」には、成功のセオリーが存在します。今回は、そのための具体的な3つのステップをご紹介します。
※参考情報:難波三郎 (著) 小さな飲食店のお客が減らない値上げ
鉄則1:値上げの前に、まず「お店の価値」を高める
いきなり価格表を書き換えるのは禁物です。値上げを成功させるための最初のステップは、お客様が「この価格でも通いたい」と思ってくれるだけの価値を提供できているか、足元を徹底的に見直すことです。
- QSCAの総点検 QSCAとは、Q(Quality: 品質)、S(Service: サービス)、C(Cleanliness: 清潔さ)、A(Atmosphere: 雰囲気)のことです。
- 品質 (Q): 看板メニューの味は安定していますか? 食材の質、盛り付け、提供スピードなどを見直しましょう。
- サービス (S): スタッフの笑顔や挨拶は徹底されていますか? お客様への目配りや、気持ちの良いお見送りができているか確認しましょう。
- 清潔さ (C): お店の入口や駐車場、そしてトイレは清潔に保たれていますか? テーブル回りやキッチンも重要なポイントです。
- 雰囲気 (A): 外観や内装、照明やBGMは、お店のコンセプトに合っていますか?
- コスト構造の見直し (FLR比率) FLR比率(F: 食材費、L: 人件費、R: 家賃)の現状を把握しましょう。一般的に、この比率が80%を超えると赤字経営の目安とされています。調理工程を見直して歩数を削減したり、券売機やQR決済を導入したりすることで、コスト改善を図れないか検討します。
鉄則2:「少しずつ、賢く」値上げする
お店の価値を高めたら、いよいよ値上げのステップに進みます。ここでのポイントは、お客様の抵抗感を最小限に抑える「賢い」値上げ方法を選ぶことです。
- 期間限定メニューを投入する:季節限定メニューや特別メニューを、新しい価格で提供してみましょう。
- 時間帯で価格を調整する:金土日や平日のディナータイムなど、需要が高い時間帯だけ価格を調整する方法です。
- サイドメニューから手をつける:まずはトッピングやサイドメニュー、セットドリンクなど、メイン商品以外から値上げを検討します。
- 端数を整理する:「980円」を「1,000円」にするなど、お客様が気づきにくい範囲で価格を整理するのも一つの手です。
鉄則3:改善が完了してから「広告宣伝」を行う
お店の価値が向上し、価格も新しくなったら、その魅力を外部に発信しましょう。重要なのは、必ず「改善後」に行うことです。
- 無料・低価格で始める:まずはSNSでの発信やチラシのポスティング、スタンプカードなど、コストを抑えられるものから始めましょう。
- AIや無料ツールを活用する:近年では、生成AI(ChatGPTやGeminiなど)にインスタグラムの投稿文を考えてもらったり、デザインツール「Canva」で無料でおしゃれなチラシを作成したりすることも可能です。
- 費用対効果を検証する:広告宣伝は「打ちっぱなし」にせず、かけた費用に対してどれだけの効果があったかを必ず検証しましょう。
「値上げ」は、単なる価格改定ではありません。自店の価値を再評価し、お客様により高い満足度を提供するための絶好の機会です。今回ご紹介した3つの鉄則を参考に、お客様に愛され続けるお店作りと、健全な経営の両立を目指しましょう。以下のチェックリストを参考にして、対策までしっかり計画を立てて実行してみて下さい。
もし、値上げのステップをどうやれば良いか分からない等でお困りでしたら、当事務所の経営伴走サポートをご利用ください。
