「また原材料の値段が上がった…でも、取引先に価格転嫁をお願いするのは気が重い…」

中小零細企業の経営者の皆様、このような悩みを抱えていませんか?長年の付き合いがある取引先に対して、値上げ交渉を切り出すのは簡単なことではありません。しかし、利益を圧迫し続けるコスト増を放置すれば、事業の継続そのものが危うくなってしまいます。

「感覚」や「お願い」だけの交渉では、相手もなかなか納得してくれません。そこで重要になるのが、「客観的な根拠」です。

今回は、そんな経営者の皆様の強い味方となる、埼玉県が無料で提供している「価格交渉支援ツール」をご紹介します。このツールを使えば、誰でも簡単に、説得力のある交渉資料を作成できます。

価格交渉に役立つ各種支援ツール

そもそも「価格交渉支援ツール」とは?

一言でいうと、「公的なデータを使って、コストがどれだけ上がったかを一目でわかるグラフに自動でしてくれる、魔法のようなExcelファイル」です。

  • 信頼性抜群!: 使用しているのは、日本銀行が公表している「企業物価指数」という非常に信頼性の高いデータです。自社で集計したデータではないため、交渉相手にも客観的な事実として受け入れてもらいやすくなります。
  • 手間いらず!: 自分でデータを集めたり、難しいグラフを作ったりする必要は一切ありません。Excelファイルを開いて、いくつかの項目を選ぶだけです。
  • 完全無料!: 埼玉県が事業者のために提供しているもので、もちろん無料で利用できます。

3ステップでできる!具体的な活用方法

では、実際にどうやって使えばいいのでしょうか?驚くほど簡単なので、ぜひ一緒に試してみてください。

ステップ1:ツールをダウンロードする

まずは、以下の埼玉県の公式サイトにアクセスし、Excelファイルをダウンロードします。

価格交渉に役立つ各種支援ツール企業が価格交渉をする際に使用できるツールの御紹介ですwww.pref.saitama.lg.jp

サイトの中ほどにある「価格交渉支援ツール(マクロ付きExcel)」をクリックして、お使いのパソコンに保存してください。

ステップ2:自社に関係する「品目」を選ぶ

ダウンロードしたExcelファイルを開くと、品目を選択する画面が出てきます。(「マクロを有効にする」という表示が出たら、有効にしてください)

例えば、以下のように自社の事業で特にコスト増が厳しい項目を選んでみましょう。

  • 運送業なら…: 「軽油」「ガソリン」
  • 建設業なら…: 「鉄鋼」「セメント」「木材」
  • 飲食店なら…: 「小麦粉」「食用油」「電気」
  • 製造業なら…: 「プラスチック」「アルミニウム」「段ボール」

このツールには約150品目も登録されているので、自社に関係の深いものがきっと見つかるはずです。最大5つまで同時に選べます。

ステップ3:グラフを作成し、交渉の「武器」を手に入れる

品目を選んだら、あとは「グラフを作成」ボタンをクリックするだけ。

すると、選んだ品目の価格が過去から現在にかけてどのように変動したかを示すグラフが、瞬時に自動作成されます。

このグラフこそが、あなたの交渉の強力な「武器」になります。

作成したグラフをどう交渉に活かすか?

資料の準備ができたら、いよいよ交渉です。ただ「お願いします」と頭を下げるのではなく、作成したグラフを印刷して持参し、このように切り出してみましょう。

【交渉トーク例】

「いつもお世話になっております。本日は、価格改定のお願いでご相談に上がりました。実は、弊社の主要な仕入れ品である〇〇(例:軽油、鉄鋼など)の価格が、これだけ高騰しておりまして…。こちらのグラフをご覧ください。これは日本銀行が公表しているデータなのですが、この1年で〇〇%も上昇している状況です。 これまでの企業努力だけでは、このコスト増を吸収するのが非常に困難な状況になってしまいました。つきましては、大変心苦しいのですが、〇〇%の価格改定をお願いできないでしょうか。」

いかがでしょうか?

感情的に訴えるのではなく、客観的なデータを基に「なぜ値上げが必要なのか」を論理的に説明することで、相手の納得感は格段に高まります。

まとめ:泣き寝入りする時代は終わりです

原材料やエネルギー価格の高騰は、一企業の努力だけで解決できる問題ではありません。自社の事業と従業員の生活を守るためにも、正当なコストは取引価格に反映させるべきです。

これまで価格交渉に苦手意識を持っていた経営者の方も、この「価格交渉支援ツール」という心強い味方がいれば、自信を持って交渉のテーブルにつけるはずです。

無料で使え、操作も簡単。まずは一度、自社のコストがどれだけ上がっているのかを「見える化」することから始めてみませんか?その一枚のグラフが、あなたの会社の未来を切り拓くかもしれません。