会社の未来を左右する、経営者人生最大のプロジェクト「事業承継」。

手塩にかけて育ててきた会社を、誰に、どのように引き継ぐのか。考え始めると、期待と共に不安も押し寄せてくるのではないでしょうか。

そんな時、多くの社長がまず頭に思い浮かべるのは、長年付き合いのある顧問税理士、メインバンクの担当者、あるいは保険屋さんかもしれません。しかし、少し立ち止まって考えてみてください。

彼らのアドバイスは、本当に「あなたの会社」と「あなたの人生」にとってのベストなのでしょうか?

今回は、事業承継の相談先としてありがちな専門家の注意点を整理し、プロジェクト全体を成功に導く「司令塔」という存在の重要性についてお伝えします。

「いつもの相談先」に潜む落とし穴

事業承継は、税務・法務・財務・経営が複雑に絡み合う総合プロジェクトです。それぞれの専門家は頼りになる存在ですが、彼らには専門領域の限界と、それぞれの「立場」があります。

1. 顧問税理士

強み: 税務のプロ。相続税や贈与税のシミュレーション、節税対策は得意分野です。

注意点: アドバイスが「いかに税金を安く済ませるか」という「節税至上主義」に偏りがちです。節税を優先するあまり、後継者が経営しにくい株式構成になったり、会社の成長機会を逃したりする本末転倒な事態も起こりかねません。

2. 顧問弁護士

強み: 法務のプロ。契約書の作成や遺言、法的な紛争予防はお任せです。

注意点: 「法的リスクの回避」が最優先になります。石橋を叩きすぎて渡れない、といった状況に陥りがちで、ビジネスの現実やスピード感に合わない提案が出てくることも。経営のダイナミズムより、法的な安全性を重視します。

3. メインバンク

強み: 資金調達のプロ。M&Aに必要な資金の融資や、取引先ネットワークを活かしたマッチングが期待できます。

注意点: 銀行の最大の関心事は「貸したお金を確実に返してもらうこと(債権保全)」です。あなたの会社の未来よりも、銀行の都合の良い承継先やプランを勧められる可能性があります。

4. 保険屋さん

強み: 保険商品のプロ。生命保険を活用した納税資金や、経営者の退職金準備などを提案します。

注意点: アドバイスのゴールが、自社の「保険商品を販売すること」になりがちです。事業承継の一部分である資金対策の話に終始し、経営そのものの未来を語ることはありません。

5. M&A仲介屋さん

強み: 会社売却のプロ。豊富な買い手候補のネットワークを持っています。

注意点: 彼らのビジネスは「M&Aの成約」がゴールです。親族や従業員への承継という選択肢を十分に検討せず、M&Aありきで話が進むリスクがあります。「とにかく会社を売る」ことが目的化してしまうかもしれません。

お気付きでしょうか?

彼らはまるで「象を触る盲人」のように、事業承継という巨大な象の一部分だけを触って、「これが象だ」と語っているのです。しかし、あなたが知りたいのは、鼻や足の形ではなく、象の全体像のはずです。

成功の鍵は、あなたの隣に立つ「司令塔」の存在

そこで必要になるのが、特定の利害に縛られず、あなたの会社の全体像を正しく理解し、各専門家を適切に動かすプロジェクトマネージャー、すなわち「司令塔」です。

そして、その司令塔役に最も適した専門家こそ、「中小企業診断士」なのです。

なぜ「中小企業診断士」が司令塔に適任なのか?

中小企業診断士は、税理士や弁護士とは異なり、「経営コンサルティング」に関する唯一の国家資格者です。彼らが司令塔として最適ないくつかの理由があります。

  1. 経営全体を俯瞰できる
    • 財務、人事、マーケティング、生産管理まで、経営のすべてを体系的に学び、診断・助言するのが中小企業診断士です。税務や法務といった一部分だけでなく、あなたの会社のビジネスモデルや強み・弱みといった「経営の根幹」から事業承継を考えることができます。
  2. 会社の価値を高める「磨き上げ」を支援できる
    • 事業承継を成功させるには、後継者や買い手にとって魅力的な会社にしておく「磨き上げ」が欠かせません。中小企業診断士は、企業の価値を向上させることこそが本業。承継の前に、収益力改善や組織力強化を一緒に進めることができます。
  3. 中立的な立場で、あらゆる選択肢を検討できる
    • 中小企業診断士は、保険や融資といった金融商品を売る立場にはありません。親族内承継、従業員承継、M&Aといった全ての選択肢をフラットに比較し、社長の想い、会社の状況、従業員の未来を総合的に考えて、最適なプランを一緒に練り上げることができます。
  4. 専門家チームを束ねる「翻訳者」になる
    • 税理士や弁護士の専門的な話を分かりやすく社長に「翻訳」し、逆に社長の想いやビジョンを専門家たちに伝えてプロジェクトを円滑に進めます。あなたは、信頼できる右腕(司令塔)と共に、安心して最終決断に集中できます。

最後に:最高の未来を選ぶために

事業承継は、あなたの会社の「これまで」と「これから」を繋ぐ、非常に個人的で、重要な経営判断です。

部分的なアドバイスに振り回され、気づいた時には望まない着地点にいた…ということだけは避けなければなりません。

もし今、あなたが事業承継について考え始めたばかりなら、あるいは、既にもらっているアドバイスに少しでも疑問を感じているなら、ぜひ一度、事業承継に強い中小企業診断士に相談してみてください。

大切なのは、「中小企業診断士」という資格だけで選ぶのではなく、「事業承継の支援実績が豊富で、信頼できる人物か」を見極めることです。

あなたの会社と、あなた自身の幸せな未来のために、最高の羅針盤となってくれる「司令塔」を見つけること。それが、成功への第一歩です。