深刻な人手不足に悩む中小企業の皆様。外国人材は人手不足解消の切り札となり得ます。

日本全体で人手不足が深刻化しています。特に運輸業や建設業では約8割の企業が人手不足を感じている状況です。中小企業の皆様にとっても、この課題は事業継続に関わる重要な問題でしょう。このような状況の中、外国人材の活用は、人手不足を解消する「切り札」として注目されています。単に労働力を確保するだけでなく、企業の成長や新たな事業機会の創出にも繋がる可能性を秘めているのです。

外国人材雇用の基本を知ろう

まず、「外国人」とは日本国籍を持たない人を指します。日本国籍と他国籍を持つ人(二重国籍)で日本国籍を行使しない人、またはどの国籍も持たない人も含まれます。現在、日本には多くの外国人が在留しており、その数は年々増加傾向にあります。

外国人が日本で働くためには、「在留資格」という法的資格が必須です。これは、日本に入国する際に必要な「ビザ」(査証)とは異なり、日本での活動内容や身分・地位を定めます。日本には29種類の在留資格があり、それぞれ就労の可否や活動内容に制限があります。

中小企業で特に活用されることの多い在留資格は以下の通りです。

• 身分に基づく在留資格:

◦ 永住者や日本人の配偶者等などが該当します。

◦ これらの在留資格を持つ外国人は、就労活動に制限がなく、日本人と同様にどんな仕事でも自由に行うことができます

◦ 仕事をする上で非常に強力な資格と言えます。

• 特定技能(1号・2号):

◦ 2019年に新設された在留資格です。

◦ 人手不足が深刻な特定産業分野で働く外国人材を対象としています。

◦ 1号は「相当程度の知識や経験」、2号は「熟練した技能」が求められ、2号の方がより高いレベルの技能を要します。

◦ 育成就労という新しい制度は、この特定技能への移行を想定して作られています。

• 技術・人文知識・国際業務:

◦ 専門的な知識や技術を活かして働く場合(例えば、機械工学の技術者や通訳など)に取得する在留資格です。

◦ 学歴や職歴と業務内容に高い関連性があることが重要な要件となります。

• 資格外活動(アルバイト):

◦ 主に留学や家族滞在の在留資格を持つ外国人が、許可を得て週28時間以内(長期休暇を除く)でアルバイトを行うことができます。

◦ ただし、風俗営業など一部の仕事は禁止されています。

◦ 複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、合計の労働時間で判断されるため注意が必要です。

• 技能実習:

◦ 開発途上国などの外国人が日本で技術を学び、母国に持ち帰ることで経済発展に貢献するための制度です。

◦ この制度は2026年度に廃止予定であり、2027年からは「育成就労」という新しい在留資格制度に移行します

◦ 育成就労は、日本での人材育成と確保を目的としており、日本でキャリアアップできる仕組みを目指しています。

失敗しない!採用から定着までの重要ポイント

外国人材の採用は、単に手続きを終えれば良いというものではありません。働きやすい環境の構築と、就労後のきめ細やかなフォローアップが成功の鍵を握ります

1. 採用前の確認を徹底する:

◦ 採用時には、必ず在留資格やパスポート、在留カードをチェックしてください。

◦ 近年、在留カードの偽造技術が巧妙化しています。在留カードと読み取りアプリケーションや、在留カード等番号失効情報照会システムを併用して、カードの有効性を確認することが不可欠です。この確認作業は、個人情報に関わるため、必ず事業者自身が行うようにしてください。

2. 労働条件は日本人と同等以上に:

◦ 外国人労働者には、原則として日本人と同等以上の報酬を支払う必要があります

◦ 決して「安価な労働力」として捉えるべきではありません。

3. 法令遵守の徹底:

◦ 不法就労者を雇用した場合、「不法就労助長罪」に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります

◦ 「知らなかった」「忘れていた」では済まされないため、雇用している外国人が適正に在留しているか、常に確認することが重要です。

◦ 交通違反なども厳しく見られるため、基本的な法規遵守の指導も必要です。

4. 就労環境の整備:

◦ 異文化理解は不可欠です。採用する外国人の出身国の宗教、風習、習慣などを理解し、配慮することで、不要な誤解や摩擦を防ぐことができます。

◦ 社内ルールの標準化や見える化は、外国人材だけでなく日本人社員の業務効率化にも繋がり、結果として人材の定着率向上に貢献します。

◦ 日本語教育支援や、業務マニュアルの多言語化も有効な手段です。

◦ 入社後のきめ細やかなフォローアップは、外国人人材が定着するための鍵です。異文化理解の促進や入国後のモニタリングなど、総合的な支援が求められます。

◦ ハラスメントの防止など、人権意識を高く持つことも重要です。

5. 成功事例から学ぶ:

◦ 経済産業省の成功事例には、本国に戻る社員との良好な関係を維持し、それを海外展開のネットワークに活用した事例 や、社員の家族が来日した際に会長自ら食事に招き、日本で働くことへの理解を得た企業 などがあります。

◦ こうした事例は、外国人材を単なる労働力ではなく、家族の一員として、また事業戦略の重要なパートナーとして尊重することの重要性を示しています。

未来への投資!外国人材を戦力化する計画

外国人材の雇用は、単なる目の前の人手不足対策としてだけでなく、企業の将来を見据えた「投資」として捉えるべきです

• 経営戦略の一環として位置づけ、どのように外国人材を活用し、企業の競争力を高めていくかを具体的に計画することが重要です。

• 必要な人材像(スキル、日本語レベル、在留資格)を明確にし、それに合致する人材を確保するための採用計画を策定しましょう。

• 採用コスト、人件費、教育訓練費、受け入れ準備費など、外国人雇用にかかる費用を明確にし、それによって得られる生産性向上、新規事業展開、企業価値向上といった費用対効果を可視化することで、「投資」としての妥当性を評価できます。

困った時は専門家と連携を

外国人材の雇用には、複雑な行政手続きや専門知識が必要となります。

• 中小企業診断士は、経営戦略の立案や就労環境整備のコンサルティングを通じて、皆様の外国人雇用をサポートできます。

• 行政書士は、在留資格の申請手続きなど、専門的な行政業務を滞りなく進める役割を担います。

• 厚生労働省では、ハローワークに「外国人雇用管理アドバイザー」を配置しており、外国人労働者の雇用管理に関する相談を無料で受け付けています。

• 「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」など、外国人雇用に活用できる公的支援制度も存在します。

これらの専門家や公的支援制度を積極的に活用し、計画的に外国人材の採用と定着に取り組むことで、皆様の企業の人手不足解消、ひいては持続的な成長に繋がるでしょう。