• 「うちは小さい会社だから、どんぶり勘定でなんとかなる」
  • 「利益は出ているから、資金の心配なんてしたことがない」

中小零細企業の社長様、もし少しでもこうお考えでしたら、今すぐその認識を改めてください。その「油断」が、大切に育ててきた会社を、そして従業員やその家族の生活を、一瞬にして危険に晒すことになるかもしれません。

今回お話しするのは、会社の「命綱」とも言える資金繰り表についてです。

「そんなもの、うちみたいな小さい会社には必要ないよ」と思われた社長様。どうか、あと3分だけこの先を読み進めてください。あなたの会社の未来を守るための、極めて重要なメッセージです。

なぜ、利益が出ていても会社は潰れるのか?恐怖の「黒字倒産」

会社の倒産と聞くと、多くの人が「赤字続きだったのだろう」と想像するでしょう。しかし、現実は違います。決算書の上では利益が出ているにもかかわらず、資金がショートして倒産してしまう「黒字倒産」は、中小零細企業にとって決して他人事ではありません。

なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?

答えはシンプルです。「利益」と「お金(現金)」の動きは、必ずしも一致しないからです。

  • 商品を販売しても、売掛金の入金が2ヶ月後
  • 急な大口の受注で、先に多額の仕入れ費用が発生した
  • 高額な機械の支払いが、売上の入金より先にやってきた

これらは、ビジネスにおいて日常的に起こり得ることです。たとえ帳簿上で利益が100万円出ていたとしても、あなたの会社の預金通帳に現金がなければ、仕入先への支払も、従業員の給料も、オフィスの家賃も支払えません。支払いが滞れば、会社の信用は一瞬で失われ、事業の継続は困難になります。

これが、黒字倒産の恐ろしい実態です

資金繰り表は、あなたの会社を守る「未来の羅針盤」です

では、どうすればこの最悪の事態を避けられるのか?そこで登場するのが「資金繰り表」です。

資金繰り表とは、一言で言えば「未来のお金の出入りを予測する表」です。

これを作成することで、以下のような絶大なメリットが得られます。

  1. 資金ショートの早期発見: 「3ヶ月後に資金がマイナスになりそうだ」といった危険を、数ヶ月前に察知できます。これにより、慌てて高金利の融資に手を出したり、支払いのために頭を下げて回ったりする前に、落ち着いて対策を打つ時間が生まれます。
  2. 金融機関からの信頼度が劇的に向上: 融資を申し込む際、資金繰り表を提出できる会社と、できない会社では、金融機関の見る目が全く違います。自社の財務状況を正確に把握し、計画的に経営している何よりの証拠となり、融資審査が格段に有利に進みます。
  3. 的確な経営判断が可能になる: 「新しい設備を導入したい」「人を採用したい」といった重要な投資判断も、資金繰りの裏付けがあればこそ、自信を持って決断できます。「なんとなく」のどんぶり勘定から脱却し、数字に基づいた力強い経営へと変貌を遂げるのです。

資金が潤沢にあるうちは、そのありがたみに気づきにくいものです。しかし、いざ資金が枯渇してからでは、もう手遅れなのです。資金繰り表は、晴天の日にこそ準備しておくべき、嵐への備えなのです。

作成は難しくない!今すぐExcelを開いてください

「とはいえ、専門的な知識も必要で、作成は難しいだろう?」

いいえ、そんなことはありません。まずは、非常にシンプルなもので構わないのです。会計ソフトを導入する必要もありません。使い慣れたExcelで十分です。以下の中小企業庁のExcelの会計ツール集のフォーマットの中に資金繰り表のフォーマットと入力ガイドが含まれてますので、ご利用ください。

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/tools/2009.html

以下の3つのステップで、今すぐ作成してみましょう。

  1. 月初(繰越)の現預金残高を記入する
  2. その月の収入(売掛金入金、現金売上、借入など)を予測して記入する
  3. その月の支出(仕入、人件費、家賃、経費、返済など)を予測して記入する

そして、「月初残高 + 収入合計 - 支出合計 = 月末残高」を計算するだけです。

これを、まずは3ヶ月先まで、そして半年、1年と未来の予測を立ててみてください。最初は予測と実績がズレるかもしれません。しかし、繰り返すうちに精度は必ず上がっていきます。重要なのは、社長自身が会社のお金の流れを肌感覚で理解することです。

まとめ:未来の安心は、社長、あなたの手の中にあります

資金繰り表を作らない経営は、羅針盤も海図も持たずに、嵐の吹き荒れる大海原へ丸木舟で漕ぎ出すようなものです。どこに氷山があるのか、どこから嵐が来るのかも分からずに、ただ運を天に任せるだけの危険な航海です。

どうか、「面倒だ」「時間がない」を言い訳にするのを、今日で終わりにしてください。

社長であるあなたの少しの努力が、会社の未来、従業員の生活、そしてあなた自身の安心を守ることに直結します。資金繰り表という名の「羅針盤」を手にし、自信と計画性を持って、力強く会社を未来へ導いていこうではありませんか。

もし、「どうやって作れば良く分からん」などご相談があれば、当事務所の経営伴走サポートをご利用ください。