建物費、機械装置費に続き、今回は「ソフトウェア費」です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる昨今、システム投資を計画の中心に据える経営者様も多いはずです。
しかし、この補助金のシステム関連経費は、「IT導入補助金」のような感覚で申請すると、痛い目を見ます。
特にクラウドサービス(SaaS/IaaS/PaaS)の扱いや、「改修」の定義が非常に厳格です。
「見積もりを取ったのに、交付申請で全部却下された」という悲劇を避けるために、ソフトウェア費における4つの地雷原と、その回避方法を解説します。
「業務効率化のためにSaaSを導入したい」
「今の販売管理システムに新機能を追加したい」
その計画、ちょっと待ってください。
中小企業成長加速化補助金におけるソフトウェア費の審査基準は、皆さんが思っている以上に「お堅い」です。
特にクラウドサービスの利用や既存システムの扱いには、この補助金特有の厳しいルールが存在します。
申請してから「対象外」と言われないよう、必ずチェックすべき4つのポイントをお伝えします。
1. クラウド(SaaS/IaaS/PaaS)は「専用」の証明が必須
クラウドサービスは便利ですが、補助金審査では「汎用性(他の仕事にも使えるのではないか?)」が常に疑われます。
- SaaS(ZoomやChatwork、一般的な会計ソフトなど):
- リスク: 「他の業務でも使いますよね?」と判断されやすく、原則NGまたは按分等の厳しい証明が求められます。
- 対策: その補助事業でしか使わないことをシステム設定で制限できるか、あるいは「専用のスクラッチ開発ソフトウェア」に切り替えられないか検討が必要です。
- IaaS/PaaS(AWSやAzureなどのインフラ):
- リスク: 単にサーバーやプラットフォームを借りるだけでは対象外です。「箱」だけあっても、中身がなければ事業にならないからです。
- 対策: そのインフラ上で動作する「専用アプリケーションの開発費」もセットで計上し、「このアプリを動かすためだけに、このインフラを使います」という構成図を示す必要があります。
2. 「汎用サーバー」は計上しないのが無難
物理的なサーバー機器を購入する場合も同様です。
- リスク: 汎用サーバーは、「補助事業のデータ以外も保存できますよね? 他のアプリケーションもインストールできますよね?」という指摘を覆すのが至難の業です。
- 対策: 基本的には計上を諦め、自己資金で購入することをお勧めします。どうしても計上したい場合は、「物理的にネットワークを分離する」などの強固な理屈を用意した上で、「ダメ元(採択されたらラッキー)」と割り切って申請してください。
3. サブスク支払いの「見積書問題」に注意
ここが事務手続き上の最大の落とし穴です。
クラウドサービスは通常「使った分だけ後払い(従量課金)」や「月額クレジット払い」が一般的ですが、補助金では「交付申請時に、確定した金額の見積書」が必要です。また、銀行振込による支払いが必要です。
- 落とし穴: 「毎月変動するので見積もりが出せません」とベンダーに言われると、交付申請が通りません。
- 対策: ベンダーに対し、「補助事業期間中の利用料を一括、または定額で見積もってください」と事前に依頼し、見積書を発行してもらえるか確認してください。これができないサービスは、補助対象にするのを避けるべきです。
4. 【最重要】「改修・機能拡張」は対象外!「新規」のみOK
建物費との決定的な違いがここにあります。
建物は「増築・改修」もOKでしたが、ソフトウェア費は「新規のシステム構築」しか認められません。
- NG例: 「既存の基幹システムに、分析機能を追加する改修(アドオン開発)」
- NG例: 「古いソフトのバージョンアップ費用」
これらは「資産の価値を高める」というよりも「修繕・維持管理」に近いとみなされるリスクが高いです。
補助対象にするためには、既存システムの一部をいじるのではなく、「全く新しいシステムを構築する(既存とは切り離された資産として計上する)」という建て付けにする必要があります。
まとめ:システム投資は「切り分け」が命
ソフトウェア費を申請する際は、以下のチェックリストを活用してください。
- SaaS/IaaSは「専用アプリ」とセットで、利用目的を限定できるか?
- 汎用サーバーは見積もりから除外したか?
- クラウドベンダーから「定額の見積書」は取れるか?
- 「既存システムの改修」になっていないか?(新規構築と言えるか?)
IT投資は形が見えない分、審査員のチェックも慎重になります。「専用であること」「新規であること」を明確に示せる計画書に仕上げましょう。
本補助金は前回の採択率は16%の狭き門です。採択を勝ち取るには、成長加速化補助金の申請には、精緻な数値計画と100億円の売上実現可能性の高い裏付けのある事業計画が必要です。
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