会社の経営をしていると、突如として目の前に大きな壁が立ちはだかることがあります。
- 「これまで順調だったのに、大手が同じ市場に参入してきた…」
- 「うちより安い競合が出てきて、お客様が離れていく…」
価格競争という、体力を消耗するだけの泥沼の戦い。特に、リソースの限られる中小零聞企業にとって、これはまさに死活問題です。
「もう打つ手がない…」
もしあなたが今、そんな風に感じているのなら、ぜひ知ってほしいエピソードがあります。人気家具ブランド「LOWYA(ロウヤ)」を運営する浮城智和社長が、カンブリア宮殿で語った創業期に絶体絶命のピンチを乗り越えたお話です。ここに、私たち中小企業が生き残るための、大きなヒントが隠されています。
まさに絶体絶命。メーカーの“手のひら返し”で売るものがなくなる危機
今でこそ、おしゃれなオリジナル家具で知られるLOWYAですが、創業当初は他社メーカーの家具を仕入れて販売するネットショップでした。ECサイトの黎明期、そのビジネスは順調に成長します。
しかし、ある日、状況は一変します。
LOWYAの販売力を見ていた家具メーカーたちが、「自分たちで直接ネット販売した方が儲かる」と考え、次々と自社ECサイトを立ち上げ始めたのです。
メーカー直販ですから、当然、LOWYAの仕入れ値よりも安く売ることができます。価格で勝てるはずがありません。昨日までの主力商品が、次々と強力なライバルに変わっていく。まさに絶体絶命の状況でした。
あなたならどうする?社長が打った「地味すぎる一手」
さあ、もしあなたが浮城社長の立場なら、どうしますか?
- 「もっと安い商品を血眼で探す」
- 「新しいジャンルの商材に切り替える」
- 「思い切って値下げして、赤字覚悟で戦う」
多くの人が、そう考えるかもしれません。しかし、浮城社長が打った手は、もっと地味で、もっと本質的なものでした。それは、
「商品の説明を、異常なまでに詳しく書くこと」
たったそれだけです。しかし、この“地味な一手”が、会社を救う逆転劇に繋がりました。
なぜ「詳しい説明」が、価格の不利を覆したのか?
浮城社長は、顧客の心理を見抜いていました。
ECサイトで家具のような高価なものを買うとき、お客様が一番感じていることは何か? それは「実物を見られないことへの不安」です。
- 「写真で見る色と、実物の色は違わないだろうか?」
- 「この質感、安っぽく見えないかな?」
- 「本当にこのサイズで、うちの部屋にちゃんと置けるだろうか?」
この見えない不安を解消できれば、たとえ少し価格が高くても「このお店なら信頼できる」と感じてもらえるはずだ。そう考えたのです。
そこでLOWYAは、自分たちでコントロールできる「情報量」で勝負をかけました。
- 商品のサイズを、ただ「幅〇cm」と書くのではなく、梱包サイズや搬入時の注意点まで記載する。
- 様々な角度から撮影した何十枚もの写真を掲載する。
- 木目のアップ、生地の質感、ネジ穴の位置まで、お客様が知りたいであろう情報を徹底的に開示する。
- 「このソファを置けば、お部屋がこんな素敵な空間になりますよ」と、ライフスタイルまで提案する。
これは、単なる商品説明ではありません。お客様の不安に一つひとつ寄り添い、「大丈夫ですよ」と背中を押してあげる「接客」そのものです。
この徹底した顧客視点での情報提供が信頼を生み、「高くてもLOWYAで買いたい」というファンを増やし、危機を乗り越える原動力となったのです。
※一部は私の想像
私たち中小企業が今日からできること
このエピソードは、私たち中小企業の経営者に重要な教訓を与えてくれます。
- 戦う場所を変える
- 価格で勝負できないなら、「情報」「信頼」「安心」で勝負する。お客様があなたの商品やサービスを買う際に、本当に不安に思っていることは何でしょうか?その不安を解消する努力は、大手には真似のできない、私たちだからこそできる価値提供です。
- コントロールできることに集中する
- 市場環境やライバルの動向など、自分たちで変えられないことで悩む時間を、「自分たちで改善できること」に使いましょう。それは、商品説明の見直しかもしれないし、お客様への一通のメールを手厚くすることかもしれません。地味に見えることほど、効果は絶大です。
- ピンチは「顧客理解」のチャンス
- うまくいかなくなった時こそ、お客様が本当に求めているものを見つめ直す絶好の機会です。なぜお客様は離れてしまったのか?競合のどこに魅力を感じたのか?その答えの先に、会社の新しい強みがきっと見つかります。
もし今、あなたが厳しい状況に立たされているなら、一度立ち止まって、お客様が抱える「見えない不安」に思いを馳せてみてください。そして、その不安を解消するために、あなたの会社ができることは何かを考えてみてください。
LOWYAがそうであったように、その地道な一歩が、あなたの会社を救う大きな力になるかもしれません。
