「うちみたいな小さな会社には、インバウンドなんて関係ないよ」
毎日、必死に会社を切り盛りされている社長の皆様。もしかしたら、そう思われているかもしれません。
しかし、その考えは、会社の未来にとって非常にもったいない、いや、危険なものになりつつあります。
2025年、日本のインバウンド市場は、過去最高の活況を呈しています。街には外国人観光客が溢れ、その消費額は年間10兆円に迫る勢いです。これは、もはや一過性のブームではありません。日本の未来を左右する巨大な経済圏です。
この巨大なチャンスを、ただ指をくわえて見ているだけで良いのでしょうか? 大企業だけがその恩恵を受けるのを、黙って見過ごすのでしょうか?
答えは「ノー」です。
むしろ、彼らが本当に求めている「本物の日本」「ディープな体験」を提供できるのは、地域に根ざした私たち中小零細企業に他なりません。社長のこだわりが詰まったその商品、そのサービスこそが、彼らにとっては何物にも代えがたい「宝」になり得るのです。
今日は、インバウンド市場という大海原へ、あなたの会社という船を漕ぎ出すための、具体的で、誰にでもできる「はじめの一歩」をお伝えします。
乗り遅れないための「3つのステップ」
難しく考える必要はありません。大規模な投資も不要です。まずは、できることから始めましょう。
ステップ1:意識を変える。「お客様候補」として世界を見る
すべては、ここから始まります。
- 街を歩く外国人を見る目を変えましょう。 「観光客だな」ではなく、「うちの店に入ってくれるかもしれないお客様候補だ」と意識を変えるだけで、見える景色が変わります。彼らは何に困り、何に興味を示しているでしょうか?
- Googleで自社の地域を英語で検索してみましょう。 例えば「Ichikawa food」「Chiba souvenir」などです。どんな情報が出てきますか?そこに、あなたの会社の名前はありますか? まずは敵(市場)と己を知ることが基本です。
- 観光庁や日本政府観光局(JNTO)のサイトを覗いてみましょう。 難しいデータは後回しで構いません。「今、どの国から一番多く来ているのか」それだけでも知っておけば、次の一手が考えやすくなります。
ステップ2:お金をかけずに始める。「小さな親切」を形にする
言語の壁や資金の壁を嘆く前に、今すぐできることは沢山あります。
- 「魔法の紙」を一枚用意する。
- 無料の翻訳アプリを使い、「おすすめはこれです」「免税できますか?→できます/できません」「写真OKです」など、よく聞かれそうな言葉を数種類、英語・中国語などで印刷してレジ横に貼っておくだけ。これだけで、外国人客の安心感は劇的に変わります。
- 「伝家の宝刀」Googleマップを磨く。
- 今、海外の旅行者はガイドブックではなくGoogleマップでお店を探します。あなたのお店の情報は正しく登録されていますか?魅力的な商品の写真、英語の店名、正確な営業時間を登録するのは無料です。これはもはや「インバウンド対策」ではなく「事業の基本」です。
- キャッシュレス決済を一つでも導入する。
- クレジットカードはもちろん、PayPayなどのQRコード決済は、海外の決済サービス(Alipayなど)と連携しているものも多く、導入のハードルも下がっています。お客様の「買いたい」という気持ちを、支払手段がないという理由で逃すことほど、もったいないことはありません。
ステップ3:「見せる」工夫で、世界とつながる
あなたの会社の魅力は、あなたが思っている以上に「特別」です。その魅力を世界に見せに行きましょう。
- Instagramを始めましょう。
- 綺麗な写真を撮る必要はありません。社長自らが商品を紹介する動画、職人さんの真剣な眼差し、普段見ることのない製造工程…。そうした「裏側」こそが、最高のコンテンツになります。投稿する際は「#japantravel」「#(地名)food」といった英語のハッシュタグを付けることを忘れずに。世界中の日本好きが、あなたの投稿を見つけてくれる可能性があります。
- 「ハラル」「ベジタリアン」を意識してみる。
- もしあなたの会社が飲食店なら、「この料理には豚肉・アルコールは使っていません」という表示を一枚加えるだけで、これまでアプローチできなかったイスラム圏のお客様を呼び込めるかもしれません。原材料を見直し、正直に伝えることが信頼につながります。
社長、決断の時は今です
インバウンドへの対応は、もはや「やってもいいこと」ではなく、人口減少社会ニッポンで会社を存続させるための「不可欠な経営戦略」です。
大企業のような立派なウェブサイトも、流暢な語学力も、最初から必要ありません。
必要なのは、「世界を市場として捉える、社長の少しの勇気」と、「お客様への小さな親切を形にする、ちょっとした工夫」だけです。
まずは第一歩として、Googleマップで自社のお店の情報を見直すことから始めてみませんか?
その小さなクリックが、あなたの会社の未来を、そして日本の未来を、もっと面白くするはずです。行動を起こす経営者にのみ、チャンスの扉は開かれます。
