~採用コストをドブに捨てないための新人定着術~

「やっとの思いで採用した若手が、また一人、辞めてしまった…」

社長、こんな風に頭を抱えていませんか?

高い広告費を払い、貴重な時間を面接に割き、煩雑な社会保険の手続きを終えた矢先の退職届。かけたコストと手間を考えると、本当にやりきれない気持ちになりますよね。

  • 「今の若者は根性がない」
  • 「少し厳しくするとすぐ心が折れる」

そう嘆きたくなるお気持ち、痛いほど分かります。しかし、その嘆きの言葉を発する前に、一度だけ、立ち止まって考えてみてはいただけないでしょうか。

もしかしたら、その原因は「最近の若者」ではなく、私たち受け入れる側の「会社の空気」にあるのかもしれない、と。

社員が辞める本当の理由、気づいていますか?

衝撃的なデータがあります。事業所規模が5人未満の会社では、新卒で入社した社員の半数以上(55.9%)が3年以内に辞めてしまうという事実です。(※厚労省データ)

これはもはや、「個人の根性」だけで片付けられる数字ではありません。

さらに、最近急増している「退職代行サービス」。その利用者の多くが、実は中小企業で働く、勤続1年未満の若手社員なのです。なぜ彼らは、社長や上司に直接「辞めます」と伝えられないのでしょうか?

答えは、彼らが「安心できる居場所がない」と感じているからに他なりません。知らず知らずのうちに、私たちが「失敗が許されない」「何を言っても無駄だ」という空気を作り出してしまっているのです。

すべての基本は「ほめる文化」。叱る前に、まずこれだけは!

では、どうすればいいのか?

具体的なテクニックの前に、まず会社の「大前提」となる文化を変える必要があります。それは、新人教育は「ほめる」ことがセオリーだということです。

社長やベテラン社員にとっては当たり前のことでも、新人は右も左も分かりません。彼らにとって「失敗すること」こそが仕事なのです。

そこで大切なのが「心理的安全性」、つまり「この会社なら、失敗しても大丈夫。ちゃんと学ばせてもらえる」と新人が心から思える環境です。この安心感こそが、成長の土台であり、定着への第一歩となります。

ぜひ、「ほめる7:叱る3」という黄金比を意識してください。

もちろん、仕事ですから明らかな不注意は叱る必要はあります。しかしその際も、できたことを一つ見つけてセットで伝える。人格ではなく「行動」を具体的にフィードバックする。

この小さな積み重ねが、新人の自己肯定感を育て、「この会社で頑張りたい」という気持ちを芽生えさせるのです。

【実践編】社員の心を掴む!離職率が劇的に下がる「4つの魔法のタイミング」

文化の土台ができたら、次はいよいよ実践です。

新人のフォローには「絶対に外してはいけない」4つの魔法のタイミングがあります。

タイミング①:入社初日 ~最初の8時間で未来は決まる~

  • NG行動:「手が空いた人が教えてあげて」という放置プレイ。
  • やるべきこと:「お世話係」を任命し、その日は一日つきっきりでフォローさせましょう。挨拶回り、社内ルール、備品やトイレの場所まで…。「ここまで丁寧に?」と思うくらいが丁度いいのです。そして何より、社長自らが「ようこそ!君が来てくれて嬉しいよ」と温かく声をかけること。このファーストインパクトが、新人の心の氷を溶かします。

タイミング②:最初の休日前 ~“魔の週末”を乗り越える~

  • NG行動:何も聞かずに「お疲れ様」と帰してしまうこと。
  • やるべきこと:金曜の夕方、終業前に10分だけミーティングの時間を取りましょう。そして、「困ってることはない?」ではなく「“どんなこと”で困ってる?」と、本音を話しやすいように聞いてあげてください。慣れない環境で溜まった小さな不安や不満は、休日の間に増幅し、退職の引き金になります。週末に入る前のガス抜きが、週明けの「突然の失踪」を防ぎます。

タイミング③:入社1ヶ月後 ~“お客様”から“本当の仲間”へ~

  • NG行動:「もう慣れただろう」と油断し、放置すること。
  • やるべきこと:改めて面談の時間を設けます。「入社前に期待していたことと、実際に働いてみてどうかな?」と期待値のすり合わせを行います。さらに効果的なのが、「前の会社と比べて、ウチがもっと良くなるにはどうしたらいいと思う?」と意見を求めること。新人を「会社を創る仲間」として尊重する姿勢が伝わり、当事者意識が芽生えます。

タイミング④:入社3ヶ月後 ~“中弛み”を“成長”に変える~

  • NG行動:ただのルーティンワークを延々とさせること。
  • やるべきこと:再度面談の時間を持ち、少し先のキャリアプランを一緒に考えましょう。「3ヶ月でここまでできるようになったね。半年後には〇〇を任せたいと思っているよ」と、具体的な期待を伝えることで、新人は自分の成長と未来をリアルにイメージできます。「ここで長く働きたい」と思ってもらうための、重要な仕掛けです。

社員は「コスト」ではなく、会社の未来を創る「財産」です

社長、いかがでしたでしょうか。

これらの取り組みは、一見すると「手間がかかる」と思われるかもしれません。

しかし、考えてみてください。一人の社員が定着し、成長し、会社の重要な戦力となってくれることで、将来どれだけの利益がもたらされるでしょうか。採用コストの削減、生産性の向上、技術の承継、そして何より、活気に満ちた職場の空気。その価値は、計り知れません。

社員は使い捨ての「コスト」ではありません。会社の未来を共に創る、かけがえのない「財産」です。

そして、この「人を財産と考える文化」を創り、会社を変えることができるのは、社長、あなたしかいないのです。

まずは、明日。

出社してきた社員のデスクへ行き、「いつもありがとう。その調子だよ」と一声かけることから、始めてみませんか?

その一言が、会社を変える大きな一歩になるはずです。