新しい事業の立ち上げ、心躍る瞬間ですね!その夢を形にする上で、多くの方が最初に考える資金調達の一つが「創業融資」ではないでしょうか。しかし、ただ単にお金を借りれば良いというわけではありません。金融機関から信頼を得て、あなたの事業を長期的に成功させるためには、いくつかの重要な心構えと注意事項があります。

今回は、これから創業融資を検討している社長の皆さんに、その成功の鍵となるポイントを7つに分けてご紹介します。

「なぜお金が必要なのか?」その根本原因を徹底的に考える

多くの人は「お金がないから借りる」と考えがちですが、金融機関が本当に知りたいのは「なぜお金がなくなったのか(なくなるのか)」という根本原因です。事業活動の結果として「お金がない」状況になっているはずなので、その理由を深く掘り下げることが重要です。

  • 無駄な経費の使いすぎ
  • 売上ボリュームの不足
  • 資金の回収や支払いのタイミングの悪さ

これらを明確に把握し、融資があくまで一時的な解決手段であり、根本的な事業改善にはつながらないことを理解しておく必要があります。金融機関は融資の際に必ず「なぜお金がなくなったのですか?」と質問してくるため、その問いに説得力のある回答ができるよう準備しましょう。

資金使途は具体的に!「何に、なぜ」使うのかを明確にする

金融機関は「事業のためにお金を貸す」という立場です。そのため、単に「お金がないから貸してほしい」というだけでは融資は受けにくいでしょう。生活費や趣味のための資金は対象外となります。

資金使途は大きく分けて以下の2つです。

  • 設備資金: パソコン、プリンター、工作機械、店舗改装費、什器、レジなど、「物を買うための資金」です。金額が大きくなることが多く、事業をより良くするための投資と見なされます。
  • 運転資金: 仕入れ、人件費、家賃、光熱費、広告費など、事業を継続していくための日常的な資金です。特に創業当初の売上不足期間を乗り切るための資金として重要視されます。

さらに重要なのは、単に「車が必要です」「内装費用です」と伝えるだけでなく、「なぜそれが必要なのか」を具体的に説明できることです。

  • : 「駅までお客様を送迎し、来店層を広げたい」「営業エリアを拡大したい」から車が必要。
  • : 「お客様にくつろいでもらい、店舗の雰囲気を楽しんでほしい」から内装が必要。

費用対効果、整合性、実現可能性を意識し、その必要性を徹底的に検証しましょう。また、「借り入れなくても済むものは借りない」という姿勢も金融機関から評価されます。

自己資金の検討と「もし借りられなかったら」の代替策を想定する

全てを借入れに頼るのではなく、自己資金で賄える部分は自己資金を活用することを検討してください。金融機関は、創業者が事業に対してどの程度自己資金を投じているかを見ています。

また、希望する金額の全額が借り入れできない可能性も考慮し、代替策を想定しておくことも大切です。例えば、内装工事の一部は自己資金で賄う、最低限必要な箇所のみ優先的に行う、といった計画です。これは事業に対する「本気度」を示すことにも繋がります。

適切な相談先を選び、長期的な関係を築く視点を持つ

一口に金融機関といっても、創業融資へのスタンスは様々です。

  • メガバンク(都市銀行):預金取引では身近ですが、創業融資には比較的消極的な場合が多いです。
  • 地方銀行:地域密着型ですが、創業融資へのスタンスは銀行によって異なります。
  • 信用金庫・信用組合: 地域の中小・小規模事業者向けで、営業担当者が個別訪問し、比較的顧客に寄り添う傾向があります。
  • 日本政策金融公庫: 政府系の金融機関で、創業融資を事業として積極的に取り扱っているため、創業融資の強力な相談先となります。

創業融資においては、日本政策金融公庫、信用金庫、信用組合への相談が特に推奨されます

金融機関は創業融資を「種銭(たねぜに)」と見なしており、単に利息で儲けるだけでなく、将来的なメインバンク化や、他の預金・為替取引、振り込みなどにつながることを期待しています。そのため、「融資後すぐに別の金融機関を使う」といった態度は担当者の融資推進を難しくする可能性があります。長期的な視点で、良好な関係を築く意識を持って臨みましょう。

また、同じ金融機関でも、支店長の方針(支店長は大きな融資権限を持つ)や、申し込み経路(営業担当者からの紹介など)、時期(決算期やボーナス査定期は融資が伸びやすい傾向)によって融資スタンスが異なる場合があることも理解しておくと良いでしょう。

事業計画を明確にし、「人」として信頼されるための説明を

「先に融資額が決まってから、その金額に合わせて事業内容を決めよう」という考え方は難しいでしょう。金融機関は、何に使われるか不明確なものにお金を貸すことはできません。まずは事業内容がある程度固まり、それに必要な資金が明確になってから、融資の相談を行うのが基本です。

面談時には、自身の事業への「思い」や「企業したきっかけ」を情熱的に語ることが非常に重要です。事業計画は、以下の「三角形」を意識して説明すると良いでしょう。

  • 目的・思い: 「なぜこの事業をしたいのか、どんな価値提供をしたいのか」
  • 事業内容: 「その目的を達成するために具体的に何をするのか」
  • 必要な資金: 「事業内容を実現するために、どの資金が、なぜ、いくら必要なのか」

金融機関は提出書類だけでなく、あなたの「人柄」も見ているため、相談者の資金に対する考え方、計数感覚(数字への意識)、借入れそのものへの理解度が評価されます。

  • 「借りられるならどんどん借りたい」といった態度は避ける。
  • 計画性があり、借入れに対して覚悟を持っている人物かを示す。
  • 計数感覚の具体性も重要です。例えば、「売上が200万円」と伝えるだけでなく、「顧客単価3万円×月5人×12ヶ月=180万円」のように、具体的な根拠を説明できると良いでしょう。

金融機関もお金を貸したいと考えています。あなたの夢や希望、明確な方向性を理解してもらい、あなたが信頼できる人物であることを伝えることが成功への近道です。

融資手続き中の「やってはいけないこと」

融資の審査中や実行前には、特に以下の点に注意が必要です。

  • 事業資金として借りたお金で生活費を賄おうとしない。事業資金と生活費は明確に区別すべきであり、生活が困窮してから事業資金で賄おうとすることは難しいです。早めに相談し、事業資金の目的で借り入れる組み立てが必須となります。
  • 融資実行前に設備を購入しない。特に設備資金として融資を受ける場合、金融機関は融資した資金でその設備を導入することを前提としています。もし借入れ前に支払いが済んでしまうと、別の資金使途として扱われる可能性があり、融資が受けられない、または条件が変わることがあります。融資された資金は、必ず申請した使途に使うという意識を持ちましょう。

また、追加資料の要求や質問があった際には、真摯に対応することが大切です。これらは意地悪ではなく、審査に必要な情報であり、担当者は皆さんの融資を円滑に進めるために動いています。

融資後も継続的なコミュニケーションを

融資が実行されて終わりではありません。借入れ後も事業の進捗を定期的に金融機関に報告することをお勧めします。決算確定後など、適切なタイミングで報告することで、今後の新規借入れ時にも円滑な関係を築けるでしょう。

金融機関の担当者は、基本的に「皆さんの味方」です。彼らは融資を円滑に進めるために、必要な情報収集や資料作成を求めています。もし返済が遅れそうになった場合は、必ず事前に金融機関に連絡し、状況を説明してください。無断での滞納は最も避けるべき行為です。協力的な姿勢で臨むことが、結果としてあなたの事業の成功に繋がります。

その他の資金調達の選択肢

必要不可欠な資金は金融機関の借入れで賄いつつ、補助金やクラウドファンディングといった返済不要の資金調達手段も検討すると良いでしょう。これらは資金を集められる可能性が低い(難易度が高い)ものの、チャレンジングな取り組みや将来的なプラスアルファの資金として組み合わせることで、資金調達のポートフォリオを強化できます。


創業融資は、あなたの事業の可能性を広げる強力なツールです。しかし、そのためには計画性、明確な目的、そして金融機関との信頼関係が不可欠となります。今回ご紹介した注意事項と心構えを胸に、「なぜお金が必要なのか」を深く掘り下げ、事業への情熱と具体的な計画を伝え、金融機関と良いパートナーシップを築いていきましょう。あなたの事業の成功を心から応援しています!