※本コラムは、第17回小規模事業者持続化補助金<一般型>・第1回小規模事業者持続化補助金<創業型>(2025/6/13締切)が対象です。

小規模事業者にとって、販路開拓や生産性向上に取り組むための強力な味方となる「小規模事業者持続化補助金」。多くの経営者様が申請を検討されていることでしょう。

電子申請システムには経営計画書のサンプルも用意されており、「これなら自分でも書けそうだ」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

結論から申し上げますと、あのサンプルをそのまま見本にして作成した計画書では、採択される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

今回は、なぜサンプル通りの計画書では不十分なのか、そして、審査員の心を動かし、採択を勝ち取るためにはどのような計画書を作成すべきなのか、その本質に迫ります。

なぜ、提供されているサンプルでは不十分なのか?

「公式に提供されているサンプルなのに、なぜ?」と疑問に思われるのも当然です。理由は、公募要領に明記されている「審査の観点」を、あのサンプルでは到底カバーしきれていないからです。

補助金の審査は、提出された計画書の内容を以下の4つの観点で評価し、点数化して行われます。

  1. 自社の経営状況分析の妥当性
  2. 経営方針・目標と今後のプランの適切性
  3. 補助事業計画の有効性
  4. 積算の透明・適切性

電子申請のサンプルを見てみてください。これらの項目について、どれだけ深く、具体的に記述されているでしょうか?おそらく、当たり障りのない表面的な記述に留まっているはずです。

補助金の提供側は、「計画書のフォーマットはこれです。しかし、中身はあなたの会社の状況に合わせて、ご自身でしっかり考えて記述してくださいね」というスタンスなのです。決して「このレベルの記述でOK」という見本ではありません。この意図を汲み取れないと、残念ながら不採択という結果につながってしまいます。

採択される計画書は「ストーリー」で語る!審査観点別・作成のポイント

では、審査員に「この事業者を応援したい!」と思わせる計画書は、どのように書けばよいのでしょうか。単なる項目の穴埋めではなく、自社の課題から補助事業による成長までの一貫したストーリーとして描くことが重要です。

  • ① 自社の経営状況分析の妥当性

【サンプルの限界】

「〇〇が強みで、△△が弱みです」といった単純な記述に留まっている。

【採択レベルの書き方】

自社の置かれている状況を、客観的な視点で深く分析し、審査員に「この経営者は自社のことをよく理解しているな」と納得させることが必要です。

  • 顧客や市場の動向: あなたの顧客は誰ですか?市場は拡大していますか、縮小していますか?競合の状況はどうですか?
  • 自社の強み(Strength)・弱み(Weakness): なぜ自社の商品・サービスが選ばれるのですか?逆に、お客様から指摘されている点や、改善すべき点は何ですか?
  • 機会(Opportunity)・脅威(Threat): 周囲の環境変化(法改正、社会トレンド、技術革新など)は、自社にとって追い風ですか、向かい風ですか?(いわゆるSWOT分析です)

これらの分析を通じて、「だからこそ、今、この課題に取り組む必要がある」という経営課題を明確に導き出すことがスタートラインです。

  • ② 経営方針・目標と今後のプランの適切性

【サンプルの限界】

「売上をアップさせたい」「顧客を増やしたい」といった漠然とした目標しか書かれていない。

【採択レベルの書き方】

①で分析した自社の現状を踏まえ、どこを目指すのかを具体的に示します。

  • 具体的な目標設定: 「補助事業終了後1年で、ターゲット顧客層である30代女性からの売上を現状の1.5倍、〇〇円にする」というように、誰に・何を・いつまでに・どれくらい達成するのかを数値で示しましょう。
  • 目標達成までの道筋: その高い目標を、どのようにして達成するのか。今回の補助事業が、その計画の中でどのような位置づけになるのかを明確に説明します。
  • ③ 補助事業計画の有効性

【サンプルの限界】

「ホームページを作りたい」「新しい機械を導入したい」といった、やりたいこと(ToDo)の記述に終始している。

【採択レベルの書き方】

今回の補助事業が、①で特定した経営課題を解決し、②で設定した目標を達成するために、いかに効果的で、不可欠であるかを論理的に説明する、計画書の最重要パートです。

  • 課題解決への貢献: なぜ、数ある打ち手の中から「この補助事業(例:ECサイト構築)」を選ぶのですか?それが経営課題(例:来店客の減少)の解決にどう直結するのかを力説します。
  • 事業の独自性や優位性: 補助事業で導入する設備や開発する販路に、どのような工夫や独自性がありますか?競合他社とどう差別化し、優位に立てるのかをアピールしましょう。
  • ターゲットへの訴求方法: 新しい販路や商品を、どのようにターゲット顧客に知らせ、購入につなげるのか。具体的な広告宣伝計画や販売促進策まで踏み込んで記述します。

「この事業にお金を投じれば、この会社は確かに成長しそうだ」と審査員が具体的にイメージできるかが鍵です。

  • ④ 積算の透明・適切性

【サンプルの限界】

経費の内訳が書かれているだけで、なぜその金額が必要なのかが不明瞭。

【採択レベルの書き方】

補助金は税金で賄われています。そのため、経費の使い道は厳しくチェックされます。

  • 必要性の説明: なぜその経費(例:〇〇という機能を持ったレジ)が必要なのか。事業内容と関連付けて、一つひとつ丁寧に説明します。
  • 金額の妥当性: 必ず相見積もりを取得し、「複数社を比較検討した結果、適正な価格のこの業者に依頼する」という客観的な根拠を示しましょう。積算が「どんぶり勘定」だと思われた瞬間に、信頼性は大きく損なわれます。

まとめ:補助金申請は、自社の未来を描く絶好の機会

小規模事業者持続化補助金の計画書作成は、決して楽な作業ではありません。しかし、それは単なる「書類仕事」なのではなく、自社の経営を根本から見つめ直し、未来への成長戦略を真剣に描く絶好の機会です。

提供されているサンプルは、あくまで「何を書いていいか分からない」という方のための最低限のガイドラインに過ぎません。

ぜひ、今回の記事を参考に、審査員の心を動かす、あなただけの熱意と具体性に満ちた事業計画を作成してください。その真摯な姿勢は、きっと採択という結果につながるはずです。心から応援しております。