補助金の事業計画書作成において、多くの経営者様が頭を悩ませるのが「優位性の確保(他社との差別化)」の項目です。
ここでよくあるのが、「近隣のAホテルより価格が安い」「B旅館より料理が豪華」といった、目に見える同業他社との比較だけで終わってしまうケースです。もちろん間違いではありませんが、審査員(中小企業診断士など)の視点からすると、「市場環境の変化に対応し、長期的に生き残れるか?」という点において物足りなさを感じることがあります。
そこで有効なのが、マイケル・ポーターの「5フォース分析」を用いた、より多角的な競合比較です。
今回は、「インバウンド向けシステム導入を目指すホテル事業者」を例に、5フォースを使ってどのように「盤石な強み」を事業計画書に落とし込むか、そのノウハウを解説します。
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なぜ「同業他社」との比較だけでは不十分なのか?
補助金は「税金」を原資とした投資です。国は、単に「今のライバルに勝てる」だけでなく、「将来現れる脅威や、業界構造の変化にも耐えうる強いビジネス」を求めています。
視界に入っているライバル(同業)だけを見ていると、業界全体を飲み込むような大きな変化(代替品の台頭や、買い手のパワー増大など)を見落とすリスクがあります。
「5フォース分析」を用いることで、これら5つの脅威をあぶり出し、「今回の補助金事業(設備投資)によって、それら全方位の脅威にどう対抗するか」を示すことができれば、説得力は格段に上がります。
実践!ホテル事業者の「5フォース」活用事例
【モデルケース】
- 事業者: 地方都市の観光ホテル
- 補助金事業: インバウンド需要獲得のため、多言語対応のスマートチェックイン機と、AIコンシェルジュシステムの導入
単に「近隣ホテルより便利になります」ではなく、5つの視点で脅威を分析し、対策を打ち出します。
1. 「既存の競合他社」との敵対関係
ここは従来の比較です。しかし、システム導入でどう変わるかを具体的にします。
- 脅威: 近隣ホテルとの価格競争、人材不足によるサービス低下。
- 補助金活用の対策: スマートチェックイン機導入により、フロント業務を効率化。削減できた工数を、人間にしかできない「おもてなし(体験提案)」に振り向ける。
- アピール点: 「安さ」ではなく、「高付加価値化」による差別化を実現。
2. 「新規参入」の脅威
ホテル業界以外からの参入を想定します。
- 脅威: 異業種からのホテル参入や、大手チェーンの進出。
- 補助金活用の対策: AIコンシェルジュに地域のディープな観光情報(飲食店、穴場スポット)を学習させる。大手チェーンのマニュアル対応では不可能な「地域密着の濃い情報提供」をシステム化する。
- アピール点: 地域とのネットワークという「模倣困難な資産」をシステムに組み込む。
3. 「代替品」の脅威
「ホテルに泊まる」ことの代わりになるサービスです。
- 脅威: 民泊(Airbnbなど)や、グランピング施設の台頭。これらは「現地の暮らし体験」を売りにしている。
- 補助金活用の対策: 民泊にはない「安心・安全」と「24時間の多言語サポート体制」をシステムで盤石にする。AIが24時間、多言語でトラブル対応や要望に応えることで、民泊にはない安心感を担保しつつ、体験価値を提供する。
- アピール点: 代替品の弱点(安全性・サポート)を、自社のシステム投資で明確な強みに変える。
4. 「売り手(供給業者)」の交渉力
ホテルにとっての供給業者、ここではOTA(楽天トラベル、Booking.comなど)を指します。
- 脅威: OTAへの高い手数料支払い。集客をプラットフォームに依存している状態。
- 補助金活用の対策: 導入するシステムと自社予約サイトを連携し、会員化を促進。AIコンシェルジュが宿泊後のフォローメールを自動送信し、リピーターの囲い込み(直接予約比率の向上)を図る。
- アピール点: 外部依存からの脱却と収益性の改善(手数料削減)。
5. 「買い手(顧客)」の交渉力
顧客(インバウンド客)のパワーです。
- 脅威: ネットでの価格比較が容易になり、顧客はより安く、より良い条件を厳しく選ぶようになっている。
- 補助金活用の対策: 単なる宿泊場所の提供ではなく、システムを通じて「旅のプランニング」までサポートすることで、価格以外の判断基準(=体験価値)を持たせる。顧客満足度を高め、「価格競争」の土俵から降りる。
- アピール点: 価格決定権を顧客から取り戻す。
事業計画書への落とし込み方
上記のような分析を行った上で、事業計画書の「競合比較・優位性」の欄には、以下のようなロジックで記述します。
【競合および市場環境への対策(5フォース分析に基づく)】
当社は単に近隣の同業他社(既存競合)との差別化だけでなく、市場を取り巻く5つの脅威に対して、本補助事業によるシステム導入で以下のように対抗し、盤石な経営基盤を構築します。
- 対 同業他社: システムによる省人化と人的サービスの融合で、高生産性と高満足度を両立します。
- 対 代替品(民泊等): 民泊にはない「24時間多言語AIサポート」による安心感を訴求します。
- 対 供給業者(OTA): 自社システムによる顧客データ蓄積とCRM強化で、高コストなOTA依存体質から脱却します。
(...以下略)
まとめ:視点の広さが「経営者の力量」として評価される
このように、5フォースを用いることで、審査員に対して以下のメッセージを伝えることができます。
- 視野の広さ: 業界全体の構造を俯瞰できている。
- 投資の有効性: 補助金が、単なる機械購入ではなく、事業の構造改革(DX)に使われることが伝わる。
- 事業の継続性: 全方位のリスクヘッジができており、長期的に生き残る可能性が高い。
補助金の事業計画書作成は、単なる「作文」ではなく、自社のビジネスモデルを強固にする絶好の機会です。ぜひ同業他社だけを見るのではなく、5つの視点から「負けない理由」を探してみてください。
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プラネット行政書士事務所
代表 中小企業診断士・行政書士・認定経営革新等支援機関
1971年山口県下松市生まれ、千葉県市川市在住。25年間、IT業界の東証プライム上場企業を中心に法人営業や企画部門に従事し、大手製造業向けにIoTやDXの導入を推進。2022年3月に日鉄ソリューションズ株式会社を退社後、プラネット行政書士事務所を開業。中小企業のお客様へビジネス経験を活かした実現可能性の高い事業計画の策定や採用定着を支援。
(公財)千葉県産業振興センターで補助金受付業務(嘱託)や補助金事務局の審査経験がある補助金専門家として活動中。
