「事業計画書を書くのが大変だ……」

「外部環境分析と言われても、新聞記事を書き写すだけでいいのだろうか?」

ものづくり補助金や成長加速化補助金など、補助金の申請準備において、こうしたお悩みをお持ちの経営者様は非常に多いです。

特に「外部環境(PEST)分析」の項目。

ここを単なる「世の中のニュースまとめ」にしてしまうと、採択への道は遠のいてしまいます。

今回は、審査員が「おっ、この会社は勝算があるな」と膝を打つような外部環境分析の書き方について、具体的な事例を交えて解説します。


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1. なぜ「PEST分析」が必要なのか?

PEST分析とは、自社を取り巻くマクロ環境を以下の4つの視点で整理するフレームワークです。

  • Politics(政治):法改正、税制、国の政策、補助金制度など
  • Economy(経済):景気動向、物価、為替、株価、金利など
  • Society(社会):人口動態、流行、意識の変化、働き方など
  • Technology(技術):新技術、IT化、特許、インフラなど

しかし、補助金の審査員が見たいのは、世の中の情勢そのものではありません。

「その情勢が、御社の今回の補助事業にどう関係するのか?」 という点です。

成功のカギは「事実」+「解釈と対策」

ただ事実を並べるだけでは不十分です。以下のセットで書くことを鉄則としてください。

  1. 外部環境の事実(世の中で何が起きているか)
  2. 自社事業への影響(それが自社にとって「追い風」か「向かい風」か)
  3. 自社の対策・活用(だから、今回の補助事業でどうするのか)

【原則】自社の補助事業に関係のないことは書かない

どんなに大きなニュースでも、今回の事業に関係なければノイズです。「それが何?」と言われないよう、事業に関連する情報だけに絞りましょう。

2. 具体的な書き方:事実を「事業の必然性」に変える

外部環境は、自社にとって「機会(チャンス)」か「脅威(ピンチ)」のどちらかになります。

  • 良い影響(追い風・機会)がある場合:「今まさに市場がこれを求めている!だからこそ、このタイミングで設備投資をしてシェアを取りに行くんです!」という事業を行う必然性としてアピールします。
  • 悪い影響(向かい風・脅威)がある場合:「このままではジリ貧になる。だからこそ、この設備を入れて生産性を上げ、コスト競争力をつける必要があるんです!」という課題解決の緊急性としてアピールします。

3. 作成例:金属加工事業者の新規参入ケース

では、具体的にどう書けばよいのか、以下のシチュエーションで作成例を見てみましょう。

  • 申請者: 一般的な金属加工を行う中小企業
  • 補助事業: 最新の5軸マシニングセンタを導入し、成長産業である「半導体製造装置向け部品」の加工に新規参入したい。

悪い例(ただのニュース羅列)

  • 政治: 国が半導体産業を支援している。
  • 経済: 円安が進んでいる。
  • 社会: 少子高齢化が進んでいる。
  • 技術: AI技術が進化している。

これでは「で、御社はどうするの?」となってしまいます。

良い例(事業との関連性を強調)

以下のように、「事実」に対し、「自社への影響」と「今回の事業での対策(=なぜ投資が必要か)」を結びつけて記述します。

分析項目外部環境の事実(Fact)自社事業への影響・対策(Impact & Action)
P:政治国策として半導体の国内生産拠点の強化(熊本へのTSMC誘致等)が進み、サプライチェーンの国内回帰が強く推奨されている。【追い風】
国内の半導体製造装置メーカーからの部品調達ニーズが急増している。この波に乗り、国内受注を獲得する絶好の機会である。
E:経済世界的な半導体需要の拡大に伴い、製造装置市場も年々成長。一方で、エネルギー費・材料費が高騰している。【対策】
従来の汎用加工では価格転嫁が難しいが、半導体向けの高精度部品は付加価値が高く、コスト増を吸収できる。高収益体質へ転換するための事業転換である。
S:社会熟練工の高齢化と労働力不足が深刻化しており、人手に頼った加工が限界を迎えている。【対策】
人手不足でも生産能力を維持・拡大するためには、職人の勘に頼らず、最新設備による自動化・省人化が不可欠である。
T:技術半導体の微細化が進み、製造装置部品にも「ミクロン単位」の極めて高い加工精度と、難削材への対応が求められている。【導入の根拠】
保有している旧来の3軸加工機ではこの精度が出せない。最新の5軸加工機を導入することで初めて、顧客の求める技術要件に応えることが可能になる。

まとめの文章例

上記を表にするだけでなく、事業計画書の本文では以下のようにまとめます。

「現在、国策による半導体サプライチェーンの国内回帰(Politics)や、世界的な市場拡大(Economy)により、半導体製造装置部品の需要は急増しています。しかし、技術的な要求水準は高く(Technology)、従来の設備では対応できません。また、労働力不足(Society)の中で生産性を高める必要もあります。

そこで当社は、これらの『追い風』を確実に捉え、かつ『技術・労働力の課題』を解決するために、最新の5軸加工機を導入し、高付加価値な半導体部品市場へ参入します。」

このように書くことで、「なぜ今、この設備が必要なのか」というストーリーが強固になり、審査員の納得感が格段に上がります。

4. 最後に

事業計画書における外部環境分析は、単なる埋め草ではありません。

「私たちがこの事業に取り組むのは、時代の要請であり、勝てる理由があるからです」 と宣言するための重要なパートです。

ぜひ、自社の事業に関連するニュースをピックアップし、「追い風」と「対策」の視点で書き直してみてください。計画書全体の説得力が劇的に変わるはずです。


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