• 「人柄は良さそうだったのに、いざ入社したらパソコンの基本操作もおぼつかない…」
  • 「『できます』と自信満々だったのに、専門ソフトを全く使えない…」

社長の皆さん、こんな経験に頭を抱えたことはありませんか?

人手不足が深刻な今、喉から手が出るほど人材が欲しい。その焦りから、つい面接での印象だけで「えいや!」と採用を決めてしまいがちです。しかし、その結果待っているのは、教育に時間とコストをかけても一向に戦力にならず、現場は疲弊し、最終的には本人も会社も不幸になる「採用ミスマッチ」という最悪のシナリオです。

今回は、社風やコミュニケーション能力といった曖昧な話ではありません。機械の操作やソフトの使い方など、「これだけはできないと業務にならない」という具体的な必須スキルに焦点を当てます。

そして、そのスキルを面接時にたった1分で見抜く、超具体的な方法をご提案します。

なぜ「履歴書」と「会話」だけではダメなのか?

「履歴書に“Excelできます”と書いてあったじゃないか!」

そう憤っても後の祭りです。

残念ながら、履歴書や職務経歴書に書かれたスキルは、あくま“自己申告”に過ぎません。「できる」のレベルは人によって驚くほど違います。SUM関数が使えれば「できる」と言う人もいれば、マクロやVLOOKUPを使いこなせて初めて「できる」と考える人もいます。

また、面接での会話も万能ではありません。口が達者な人や、うまく自分を良く見せようとする人は、「できます」「経験あります」と自信ありげに答えるでしょう。しかし、その言葉の裏付けを確認する術がなければ、博打と同じです。

会社と求職者、双方を守る「1分スキルチェック」

この博打的な採用から脱却するのが、面接のプロセスに組み込む「1分スキルチェック」です。

これは、圧迫面接でも、能力を値踏みするテストでもありません。入社後に「こんなはずじゃなかった」という不幸なミスマッチを未然に防ぎ、お互いのために「スキルの物差し」を合わせるための、合理的で親切な確認作業です。

やり方は驚くほど簡単です。

ステップ1:あなたの会社の「これだけは!」を3つ洗い出す

まず、あなたの会社で「これだけはできないと、正直話にならない」という必須スキルを3つだけ、具体的に書き出してみてください。高度な技術である必要はありません。むしろ、「できて当たり前」と思っていることほど重要です。

【洗い出しの例】

  • 事務職なら…
    1. Excel: 簡単な表を作成し、SUM関数で指定された範囲の合計が出せるか。
    2. ビジネスメール: 指定した宛先・件名・本文で、基本的な型(宛名、挨拶、署名)を守ったメールが作成できるか。
    3. タイピング: 1分間で、エラーが少なく、ある程度の文字数が打てるか(簡単な文章を渡して入力してもらう)。
  • 軽作業・製造業なら…
    1. 工具の使い方: 特定の工具(例:ノギス、ドライバー)の安全で正しい持ち方・使い方ができるか。
    2. 図面の読解: 寸法が書かれた簡単な図面を見て、その通りに部品を並べられるか。
    3. 安全確認: 作業前の簡単な指差し確認の動作を、意味を理解して行えるか。
  • 専門ソフトを使う職種なら…
    1. ログイン: IDとパスワードを渡して、ソフトにログインできるか。
    2. 基本操作A: (例: 会計ソフト)指定した勘定科目の残高を検索・表示できるか。
    3. 基本操作B: (例: デザインソフト)指定したサイズで新規ファイルを作成できるか。

ステップ2:「1分でできる課題」を準備する

洗い出したスキルを、その場でPCや道具を使って1分程度で実演してもらう「課題」にします。ポイントは「準備に手間がかからない」「正解・不正解が明確」であることです。

面接室にノートパソコンを一台置いておくだけで、ほとんどのチェックは可能です。

ステップ3:面接で、丁寧に依頼する

面接の中盤、「少しだけ、具体的なお話を」と切り出します。
高圧的にならないよう、必ず丁寧な枕詞を使いましょう。

【依頼のセリフ例】

  • 「差し支えなければ、普段どのようにPCをお使いか参考にさせていただきたく、簡単な操作をお願いしてもよろしいでしょうか?」
  • 「私たちの業務ではこちらのソフトをよく使うのですが、少しだけ画面を触ってみていただけますか?」

そして、課題を提示します。

  • 「こちらの数字を、Excelで足し算してみていただけますか?」
  • 「この内容で、〇〇宛にメールを作成するフリをしてみていただけますか?」

この1分で、あなたは履歴書の何十倍もの情報を得られるはずです。

つまずくポイント、操作のスピード感、ツールの扱いに慣れているか否か。言葉ではごまかせない「事実」が、そこに現れます。

たった1分が、未来の損失を防ぐ

いかがでしょうか。

この「1分スキルチェック」は、難しいことではありません。しかし、その効果は絶大です。

このたった1分の投資を惜しんだがために、入社後の数か月、いえ、場合によっては数年間にわたって、お金・時間・そして社長や社員の精神的なエネルギーという、取り返しのつかないコストを支払い続けることになるのです。

人手不足の時代だからこそ、採用の入り口を科学する必要があります。

「人柄」という曖昧な評価軸に頼る前に、まずは業務遂行に不可欠な「事実」を確認する。

次の面接から、ぜひこの「1分スキルチェック」を導入してみてください。

それは、あなたの会社を、そして未来の社員を、不幸なミスマッチから守るための、最も確実で賢明な一歩となるはずです。