「最近、お店の前を通りかかる外国人観光客が増えたな…」
「インバウンド対策ってよく聞くけど、何から始めたらいいんだろう?」
そう感じている中小企業の小売店オーナー様は多いのではないでしょうか。
円安を背景に、日本を訪れる外国人観光客はますます増えています。これは、あなたのビジネスにとっても大きなチャンスです。しかし、ただ待っているだけでは、そのチャンスを掴むことはできません。
今回、全4回にわたって、中小企業の小売店がインバウンド対策で成功するための具体的なステップを、分かりやすく解説していきます。
成功の鍵は「旅」の全体像を理解すること
インバウンド対策と聞くと、「多言語メニューを作ること?」「免税対応?」といった個別の施策を思い浮かべるかもしれません。もちろんそれらも重要ですが、もっと大切なのは、お客様である外国人観光客の「旅」の全体像を理解し、一貫したアプローチをすることです。
彼らの旅は、大きく以下の3つのフェーズに分けられます。
- 旅マエ(たびまえ):情報収集・計画期間
- 日本へ旅行に行くことを決め、どこへ行き、何をするか情報収集している段階。
- 旅ナカ(たびなか):日本滞在期間
- 実際に日本に滞在し、観光や買い物を楽しんでいる段階。
- 旅アト(たびあと):帰国後、旅行体験共有
- 自国へ戻り、旅の思い出を友人やSNSで共有する段階。
そして、これら3つのフェーズすべてを支える土台となるのが、
- ターゲット層の明確化とニーズに基づく戦略の理解
- そもそも「誰に」「何を」届けたいのかを明確にする、対策の根幹部分。
場当たり的に施策を行うのではなく、この4つの領域すべてで一貫した対策を打つことが、小さな店舗でもインバウンドの成功を掴むための重要な鍵となります。
最初のステップ:すべての土台となる「戦略」を立てよう
今回は、インバウンド対策のまさに「土台」となる「ターゲット層の明確化とニーズに基づく戦略の理解」に焦点を当てて、具体的に何をすべきかを見ていきましょう。
ここがしっかり固まっていないと、せっかくの施策も的外れなものになってしまいます。
1. 経営戦略を立てる:「誰に」来てほしいか決める
まず考えるべきは、「自分のお店は、どの国・地域の、どのようなお客様に来てほしいのか?」ということです。
- ターゲットの具体化:
- 例:「韓国からの20〜30代の旅行リピーター」「欧米からの富裕層で、初めて日本を訪れる夫婦」など、具体的に人物像(ペルソナ)を描いてみましょう。
- 売上目標の設定:
- インバウンドでどれくらいの売上を目指すのか、具体的な目標を立てましょう。
- 競合との差別化:
- 近隣の競合店と比べて、あなたの店の強みは何ですか?品揃え、接客、お店の雰囲気など、アピールできるポイントを整理しましょう。
2. ターゲットのニーズを理解する:「お客様」を知る
ターゲットが決まったら、次はその人たちが何を求めているのかを深く理解しましょう。
- 情報収集手段の把握:
- ターゲット層は、旅行の情報を何で集めているでしょうか?(例:Instagram, YouTube, 特定の旅行サイトなど)
- 日本滞在中に求めることの把握:
- 彼らが日本で不便に感じること、求めているサービスは何でしょうか?(例:Wi-Fi環境、キャッシュレス決済、ハラル対応など)
- 文化や習慣への理解:
- 日本のどんな文化に興味があるか、逆に日本のどんな習慣に戸惑う可能性があるかを事前に知っておくことで、より質の高いおもてなしができます。
3. プロモーション戦略を立てる:お店の魅力を「どう」伝えるか
ターゲットとそのニーズが分かったら、いよいよプロモーションです。
- 情報発信の方法:
- ターゲットが利用しているSNSやウェブサイトで、彼らの心に響く言葉(言語)と内容で情報を発信しましょう。
- 外部との連携:
- 地域の観光協会や、近隣の宿泊施設、飲食店などと連携することで、より効果的に情報を届けることができます。
- 社内・社外リソースの確保:
- プロモーション・店舗運営・ネット対応などインバウンド対策でやるべきことは山積みです。今の業務で「ついで」に頼めるレベルではありません。しっかりリソースを確保しましょう。
- 社内で足りなければ、社外のコンサルタントやフリーランスなどの活用もアリです。
まとめ
今回は、インバウンド対策の全体像と、その成功の土台となる「戦略」についてお話ししました。いきなり多言語対応やSNS発信を始める前に、まずは「誰に」「何を」「どうやって」届けるのかをじっくり考えることが、遠回りのようで一番の近道です。
次回は、いよいよ具体的なアクションプランの1つ目、「旅マエ(情報収集・計画期間)」のフェーズに焦点を当て、お客様があなたの店を見つけてくれるための具体的な方法について解説します。お楽しみに!
