- 「営業は毎日頑張っているのに、なぜか成果に繋がらない…」
- 「売上が伸び悩んでいるが、原因が漠然としていて、どこから手をつけていいか分からない…」
中小企業の経営者から、このようなお悩みをよくお伺いします。
実は、営業不振の原因は、営業担当者の能力や努力不足だけにあるとは限りません。お客様があなたの会社を知り、契約し、ファンになるまでの「道のり」のどこかに、流れをせき止める「見えない壁」が存在しているケースがほとんどなのです。
今回は、お客様の“心の流れ”に沿って自社の営業活動を客観的に見つめ直す、シンプルな7つのステップをご紹介します。この「7つの関門」を一つずつチェックすることで、あなたの会社の営業活動における本当の課題、つまり「ボトルネック」がどこにあるのかを、ご自身で突き止めることができます。
ぜひ、ご自身の会社に当てはめながら読み進めてみてください。
- 1. お客様の心の旅、「7つの関門」とは?
- 2. 【社長のための自己診断】7つの関門チェックリスト
- 2.1. 関門1:【認知】そもそも、未来のお客様に存在を知られていますか?
- 2.2. 関門2:【興味】「おっ、この会社は…」と心を惹きつけていますか?
- 2.3. 関門3:【行動】問い合わせや商談の「きっかけ」を作れていますか?
- 2.4. 関門4:【比較】「あなたから買いたい」と言われる理由はありますか?
- 2.5. 関門5:【購買】最後の最後で、お客様の背中を押せていますか?
- 2.6. 関門6:【利用】「契約して終わり」になっていませんか?
- 2.7. 関門7:【愛情】お客様は、あなたの会社の「ファン」になっていますか?
- 3. さて、あなたの会社のボトルネックはどこでしたか?
お客様の心の旅、「7つの関門」とは?
お客様が商品やサービスを購入するまでには、決まった心理プロセスがあります。それを分かりやすく7つの段階に分けたのが「7つの関門」です。
- 認知:あなたの会社の存在を知る
- 興味:自分に関係があるかも、と関心を持つ
- 行動:問い合わせなど、具体的なアクションを起こす
- 比較:他社や現状維持と比較検討する
- 購買:リスクを取って「契約する」と決断する
- 利用:実際に使い、価値を実感する
- 愛情:ファンになり、継続・紹介してくれる
この流れがスムーズであれば、売上は安定的に伸びていきます。しかし、どこかの関門が詰まっていると、そこから先にお客様が進めず、すべてが停滞してしまうのです。
それでは、早速あなたの会社の現状をチェックしてみましょう。
【社長のための自己診断】7つの関門チェックリスト
関門1:【認知】そもそも、未来のお客様に存在を知られていますか?
商談の数が全ての始まりです。どんなに良い商品も、知られなければ存在しないのと同じです。
- お客様は、何を通じて私たちの会社を初めて知ることが多いか、把握している。
- アプローチすべき「理想の顧客像」が明確で、そのリストに基づいて行動している。
- ホームページや会社案内は、「何に困っている誰のための会社か」が一目でわかる。
- 業界内で、良い評判や口コミが聞こえてくることがある。
【診断のヒント】
ここにチェックがつかない場合、お客様との「出会いの絶対数」が不足している可能性があります。まずは「知ってもらう努力」に目を向けましょう。
関門2:【興味】「おっ、この会社は…」と心を惹きつけていますか?
社名を知っているだけでは不十分です。「自分たちの課題を解決してくれるかも」と、自分事として関心を持ってもらう必要があります。
- お客様の心を掴む、自社の魅力的な紹介(エレベーターピッチ)を営業全員が言える。
- お客様が抱える「本当の悩み」を深く理解し、そこを刺激する情報発信ができている。
- 売り込みだけでなく、お客様の役に立つ情報(ブログ、お役立ち資料など)を提供している。
【診断のヒント】
この関門が弱いと、「知っているけど、別に…」で終わってしまいます。一方的な売り込みではなく、「お客様への価値提供」という視点が重要です。
関門3:【行動】問い合わせや商談の「きっかけ」を作れていますか?
興味があっても、問い合わせには心理的なハードルがあります。その背中をそっと押す仕掛けはありますか?
- 「一度話を聞いてみたい」と思わせる魅力的なオファー(限定セミナー、無料診断など)がある。
- アポイントを断られる理由を分析し、対策を打っている。
- ホームページの問い合わせフォームは、スマホでも簡単に入力できる。
【診断のヒント】
ここがボトルネックの場合、お客様は「興味はあるけど、面倒くさい」と感じているかもしれません。行動へのハードルを極限まで下げてみましょう。
関門4:【比較】「あなたから買いたい」と言われる理由はありますか?
お客様は、必ず競合他社や「何もしない(現状維持)」という選択肢と、あなたの会社を天秤にかけます。
- 競合との違いを聞かれた際、営業担当者は明確な「強み」を自信を持って語れる。
- 失注した際に、その理由(競合、価格、タイミング等)をヒアリングし、次に活かせている。
- 「現状維持」という最強のライバルに対し、「今、変えるべき理由」を提示できている。
【診断のヒント】
「いいところまで行くのに、最後に他社に決まる…」という場合は、この関門に問題があります。自社の提供価値を言語化し、磨き上げる必要があります。
関門5:【購買】最後の最後で、お客様の背中を押せていますか?
契約書に印鑑を押すのは、お客様にとって大きな決断です。その不安を取り除き、最後の決断を後押しできていますか?
- 「検討します」と言われた後、お客様が何を懸念しているのかを把握し、手を打てている。
- 最終的な受注の決め手が「価格の安さ」だけになっていない。
- 担当者だけでなく、その上司や社長といった「決裁者」を納得させるための材料を用意している。
【診断のヒント】
この段階での失注は、営業活動全体にとって最もダメージが大きいものです。お客様の「見えない不安」に寄り添う姿勢が問われます。
関門6:【利用】「契約して終わり」になっていませんか?
お客様の成功は、あなたの会社の成功です。納品後、製品・サービスがしっかり活用され、価値を実感してもらえていますか?
- 納品後、お客様がスムーズに活用できるよう、十分なフォロー体制が整っている。
- お客様の利用状況や満足度を、定期的に確認する仕組みがある。
- お客様からのクレームや要望を、商品・サービス改善の貴重なヒントとして活かしている。
【診断のヒント】
ここが疎かだと、次の「愛情」には繋がりません。「売ってからが、本当のお付き合いの始まり」です。
関門7:【愛情】お客様は、あなたの会社の「ファン」になっていますか?
ファンになったお客様は、継続的に取引してくれるだけでなく、新しいお客様を連れてきてくれる最高の営業マンになります。
- 既存のお客様から、新規のお客様を紹介してもらうことが年に数回以上ある。
- お客様が喜んで、自社の成功事例としてインタビューなどに協力してくれる。
- 自信を持って、既存のお客様に上位プランや関連サービスをお勧めできる関係性がある。
【診断のヒント】
新規顧客の獲得コストは、既存顧客維持の5倍かかると言われます。この関門を強化することが、事業を安定させる一番の近道です。
さて、あなたの会社のボトルネックはどこでしたか?
お疲れ様でした。
診断してみて、特にチェックがつかなかったり、課題を感じたりした「関門」はどこだったでしょうか?
もっと詳しく診断したい場合は、以下のチェックリストを利用して対策までしっかり計画を立てて実行してみて下さい。
【社長のための自己診断】7つの関門チェックリストdocs.google.com
もし、複数の関門に課題を感じたとしても、焦る必要はありません。一度にすべてを解決しようとせず、最も流れをせき止めているたった一つの「ボトルネック」に集中して改善策を講じるのが、成功への最短ルートです。
例えば、
- 【認知】に課題があれば、まずはホームページの掲載内容を顧客目線で価値提供ができるように見直す。
- 【比較】に課題があれば、営業チームで「自社の本当の強みは何か」を議論し、言語化する。
- 【愛情】に課題があれば、まずは既存顧客トップ10社に「お困りごとはありませんか?」と電話一本入れてみる。
こうした小さな一歩が、会社全体の営業の流れを劇的に改善するきっかけとなります。
営業活動の改善は、一朝一夕にはいきません。しかし、こうして客観的に自社を見つめ直すことこそ、経営者であるあなたにしかできない、力強い第一歩です。この記事が、そのきっかけとなれば幸いです。
