中小零細企業の経営者の皆様、日々の多忙な業務、本当にお疲れ様です。

限られたリソースの中、一人でも多くの優秀な人材を確保したい。特に、入社後すぐに活躍してくれる「即戦力」は、喉から手が出るほど欲しい存在ではないでしょうか。

しかし、その「即戦力」を求めるあまり、数年後の組織を揺るがすかもしれない採用をしていないでしょうか?今回は、ある資料を基に、会社の未来を創るための採用の視点についてお話しします。

採用候補者を4タイプに分けて考える

採用活動をしていると、様々な候補者に出会います。ここで、以下の図を参考に、候補者を以下の2軸で4つのタイプに分類してみましょう 。

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出典:一般社団法人採用定着支援協会発行「従業員20名までの社長の為の用成功4つの実践ステップ」
  • 縦軸: 価値観・志向のマッチ度 
  • 横軸: 知識・スキル

これに基づくと、候補者は以下のように分けられます。

  • タイプ①: 知識・スキルが高く、価値観・志向のマッチ度も高い(理想的な人材)
  • タイプ②: 知識・スキルは低いが、価値観・志向のマッチ度が高い 
  • タイプ③: 知識・スキルは高いが、価値観・志向のマッチ度が低い
  • タイプ④: 知識・スキルも価値観・志向のマッチ度も低い

理想はもちろんタイプ①の人材ですが、実際にはなかなか出会えません。そして、原則、タイプ④の候補者はお見送りになるでしょう。

結果として、多くの経営者が直面するのが、タイプ②タイプ③のどちらを選ぶか、という問題です。

目の前の業務を回すためには、どうしても業務遂行能力が高いタイプ③の人材は非常に魅力的に映ります。しかし、ここに長期的なリスクが潜んでいるのです。

スキルは教えられるが、価値観は教えられない

なぜ、スキルが高いタイプ③の採用を慎重に考えるべきなのでしょうか。

それは、能力は高いものの経営者が考える会社の方針や価値観に沿わない従業員が増えることとなり、組織の運営が困難になるためです。

考えてみてください。会社の向かうべき方向や大切にしている想いに共感できない従業員が増えたら、組織はどうなるでしょうか。一体感が失われ、指示がスムーズに通らず、人間関係のトラブルが増えるかもしれません。

ここで重要なのが、何が教育によって変えられ、何が変えにくいか、という点です。

  • 知識・スキル: 後天的な要素であり、環境や育成によって習得が可能です
  • 価値観・志向・性格: 生まれ持った要素に近く、変えることが非常に難しいものです

つまり、スキルは入社後にいくらでも教えることができますが、会社の魂とも言える価値観や理念を後から教え込み、本人を変えることは極めて困難なのです。

未来への投資としての「タイプ②」採用をオススメ

だからこそ、今、視点を変えることが重要です。

現時点でのスキルは少し物足りなくても、会社の理念に心から共感し、「この会社で頑張りたい」という熱意を持つタイプ②の人材こそ、未来の会社を支える「ダイヤの原石」です。

彼らは、会社の価値観という土台を共有しているため、スキルを習得すれば、最も強く、最も忠実な戦力へと成長してくれます。

もちろん、スキルが重要でないわけではありません。しかし、「『知識・スキル』は重要な要素ですが、これを最優先にはしない」という意識を持つことが、安定した組織運営の鍵となります。

採用とは、「今の業務の穴を埋める作業」であると同時に、「未来の組織を創る投資」です。

まずは一度立ち止まり、自社が本当に大切にしている価値観は何か、どんな想いを持った人と一緒に働きたいのか、「求める人物イメージの言語化」から始めてみませんか?