中小企業の小売店オーナーの皆様、こんにちは!

これまで全3回にわたり、インバウンド対策の「戦略立案」から始まり、「旅マエ」の情報発信、「旅ナカ」のおもてなし戦略について解説してきました。いよいよ今回が最終回です。

「お客様がお店を出て、飛行機に乗って帰国したら、もうおしまい…」

そう思っていませんか?実は、それは大きな間違いです。本当の勝負は、お客様が帰国した「旅アト」から始まります。

今回は、一度きりの出会いを未来のビジネスチャンスに変える、「旅アト」の具体的なアクションについてご紹介します。

「旅アト」の重要性:お客様は最強の「広告塔」になる

なぜ、帰国後のお客様へのアプローチがそんなに重要なのでしょうか?

  • 未来の「リピーター」になる可能性:
    • 日本での良い思い出は、次の訪日の動機になります。あなたの店がその思い出の一部になれば、再来店してくれる可能性がぐっと高まります。もちろん、一度訪れた旅行者が再度同じお店を訪れる機会は限られるかもしれませんが、それでも「また日本に行くなら、あのお店にも立ち寄りたい」と思ってもらうことは、確かなブランド価値となります。
  • 新しいお客様を連れてきてくれる「最強の口コミ効果」:
    • 帰国した旅行者は、家族や友人に旅の話をしたり、SNSで体験を共有したりします。彼らが発信するリアルな情報は、どんな広告よりも信頼性が高く、新しいお客様を呼び込むきっかけになります。あなたの店での素晴らしい体験が、その人の大切な人たちへと「伝播」し、まだ見ぬ新規顧客を連れてきてくれるのです。
  • ビジネスを改善する「貴重なヒント」:
    • お客様からのフィードバックは、商品やサービスを改善するための貴重なヒントの宝庫です。

「旅アト」の取り組みは、未来への投資なのです。

「旅アト」に実施すべきインバウンド対策の具体策

では、お客様が帰国した後に、どのようなことができるでしょうか。

1. お客様の「声」を集め、活用する仕組みを作る

お客様の満足度を測り、改善につなげるために、フィードバックを積極的に集めましょう。

  • アンケートの実施:
    • 会計時にQRコードを渡してオンラインアンケートに協力してもらうなど、手軽に回答できる仕組みを用意します。内容は「何が良かったか」「改善してほしい点は何か」など、シンプルで構いません。
  • 口コミの促進と活用:
    • 「旅ナカ」でもお伝えしましたが、GoogleマップやTripAdvisorへの口コミ投稿を改めて促しましょう。寄せられた口コミには、感謝の気持ちを込めて丁寧に返信します。良い口コミも悪い口コミも、真摯に受け止める姿勢がお店の信頼を高めます。
  • フィードバックの分析と共有:
    • 集まったお客様の声は、必ずスタッフ全員で共有し、「次はこうしてみよう」という具体的な改善アクションにつなげましょう。

2. SNSでの「つながり」を維持・促進する

SNSは、国境を越えてお客様とつながり続けることができる強力なツールです。

  • 店舗独自のハッシュタグの活用:
    • 「旅ナカ」で案内した店舗独自のハッシュタグ(例:#ShopNameTokyo)で投稿してくれたお客様には、積極的に「いいね!」や感謝のコメント、リポスト(再投稿)などで反応しましょう。このコミュニケーションが、お客様の満足度をさらに高めます。
  • 継続的な情報発信:
    • お客様が帰国した後も、日本の季節の風景、新商品の情報、お店のイベントなどを発信し続けましょう。「日本のことを思い出してもらう」「また行きたいなと思ってもらう」きっかけを作ることが大切です。この情報が、彼らの友人・知人にも伝わり、新たな訪日旅行の計画にあなたの店が組み込まれる可能性も生まれます。

3. 満足体験の「伝播」を促す働きかけ

直接的なリピート購入だけでなく、お客様の満足感が周囲に広がることを意識しましょう。

  • 特典によるインセンティブ:
    • 「友人・知人に当店をおすすめしてくれた方、もしくはその方々が来店時にこの画面を提示してくれたら割引!」といった、紹介を促すような特典を設けるのも一案です。
  • デジタルコンテンツの提供:
    • 購入してくれた商品に関する美しい写真や、お店のコンセプトを伝える動画などを、お客様がSNSで共有しやすい形で提供するのも良いでしょう。お客様が自ら情報を発信する手助けをすることで、自然な口コミが生まれます。
  • 旅の思い出を彩る工夫:
    • お店のロゴ入りのかわいいショッパー(紙袋)や、商品に添える一言メッセージ(多言語で)など、お客様が帰国後も旅の思い出を振り返る際に、お店を思い出し、その感動を誰かに伝えたくなるような工夫も大切です。

4. 【発展編】越境ECで商品を届ける

これは少しハードルが高いかもしれませんが、将来的な選択肢として考えてみましょう。

  • オンラインストアの開設:
    1. お店の商品を気に入ってくれたお客様が、帰国後もオンラインで購入できる「越境ECサイト」を構築できれば、世界中に顧客を持つことが可能になります。

シリーズ全体のまとめ

全4回にわたり、インバウンド対策を「戦略」「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」という4つのフェーズに分けて解説してきました。

  1. 戦略: 誰に、何を届けたいのかを明確にする。
  2. 旅マエ: お客様にあなたのお店を「見つけてもらう」。
  3. 旅ナカ: 最高の体験を提供し、「満足してもらう」。
  4. 旅アト: 関係を継続し、「ファンになってもらう」。そして、そのファンが新たな顧客を連れてきてくれる流れを作る。

これらは全てつながっており、一貫した取り組みが重要です。

インバウンド対策は、一度やったら終わりではありません。お客様の反応を見ながら、常に改善を続けていくことが成功への道です。大変に感じるかもしれませんが、まずは「これならできそう」ということから、一つずつ始めてみてください。

あなたの小さなお店が、世界中の人々から愛される場所になることを心から応援しています!