初期診断レポート(サンプル業種:SES)

対象企業: Aエンジニアリングサービス株式会社 御中 

報告日: 20XX年XX月XX日 

作成者: プラネット行政書士事務所 代表 長野利雄


1. エグゼクティブサマリー

現状の総合評価:B(改善の余地があり、飛躍の可能性が高い)

主要な強み:

  1. 高度な技術力と業務知識: 金融関連システムという高難易度領域での実績と、40名のエンジニアが保有する確かな技術力。
  2. 安定した顧客基盤: 二次請けとはいえ、特定顧客との長年の信頼関係により売上基盤(5億円)が安定している。
  3. 経営者の変革意欲: 山田社長自身が「AI台頭による市場変化」への危機感を持ち、脱SES・直販化への強い意志を持っている。

優先改善課題:

  1. 新規開拓営業力の強化: 既存ルート以外の顧客獲得チャネルと営業プロセスが未構築。
  2. マーケティング機能の不在: 自社の技術力をエンドユーザーに直接訴求する手段(HP、事例集等)が不足。
  3. 提供価値の再定義: 「人出し(SES)」から「課題解決(ソリューション)」への提供価値の転換。

今後の支援方針: まずは強みである「技術力」を可視化し、エンドユーザーに響く形へ翻訳することから始めます。営業専任者が不在でも機能する「組織的な営業の仕組み」を構築し、段階的に直販比率を高めるロードマップを提案します。


2. 企業概要

  • 会社名: Aエンジニアリングサービス株式会社
  • 代表者: 山田 太郎
  • 売上高: 5億円
  • 従業員数: 40名
  • 事業内容: SES(システムエンジニアリングサービス)
  • 主要顧客: 金融関連システム開発を行う二次請け開発会社

3. 経営7領域診断結果

領域評価 (10点満点)コメント
1. 戦略4点脱SESの方向性は正しいが、具体的なロードマップと「何のソリューションで戦うか」が未定。
2. マーケティング2点(優先改善領域) 顧客獲得が既存の人脈頼み。エンドユーザーに向けた情報発信がほとんどなされていない。
3. 営業3点(優先改善領域) 営業プロセスが属人化しており、新規開拓のためのリストやツールが整備されていない。
4. 財務7点売上5億円規模で安定しており、財務基盤は比較的健全。新規事業投資への体力はあると推測。
5. 人事組織5点技術者の採用・定着は一定できているが、今後自社ソリューション開発に向けた評価制度等の見直しが必要。
6. 業務オペレーション5点客先常駐が主体のため、自社内でのナレッジ共有やプロジェクト管理体制が希薄。
7. 経営者自身8点危機感を持ち、変革へのコミットメントが高い。リーダーシップを発揮できる状態。

4. SWOT分析

強み (Strengths)

  • 金融システム開発で培った、高い信頼性とセキュリティ意識。
  • 40名規模のエンジニア体制による安定した稼働力。
  • 特定領域(金融)における深いドメイン知識。

弱み (Weaknesses)

  • 自社ソリューション・プロダクトの欠如(「人売り」モデル)。
  • エンドユーザーへの直接的な営業チャネルとノウハウの不足。
  • マーケティング機能の不在。

機会 (Opportunities)

  • 企業のDX推進による、内製化支援や直接発注ニーズの増加。
  • 金融業界におけるFinTechやレガシーシステム刷新の需要。

脅威 (Threats)

  • 生成AIによるコーディング自動化による、単純な実装業務の価値低下。
  • エンジニア単価の高騰と採用難。
  • 商流の短縮化(エンドユーザーがSIerを飛ばして発注する動き)。

【クロス分析による戦略提言】

  • SO戦略(強み×機会): 金融知識×技術力を活かし、エンドユーザー企業の「DXパートナー(内製化支援)」としての立ち位置を確立する。
  • WT戦略(弱み×脅威): AIを活用した開発効率化を自社の新たな武器とし、単なる人月商売から「高生産性開発サービス」へと付加価値をシフトする。

5. 課題の優先順位付け

順位課題緊急度重要度難易度着手時期
1エンドユーザー向け営業ツールの整備
(強みの言語化、事例集、提案書フォーマット作成)
即座
2ターゲット顧客の選定とリスト化
(金融周辺領域のエンドユーザー等)
1ヶ月後〜
3自社ソリューション(パッケージ/サービス)の企画6ヶ月後〜

選定理由: まずは「売るもの(見せ方)」を変えなければ直販は不可能です。自社ソリューション開発(順位3)は時間とコストがかかるため、まずは現在の技術力を「サービス」としてパッケージ化し、営業ツールを整備すること(順位1)から始めるのが最も確実かつ即効性があります。


6. 支援提案(ロードマップ案)

貴社の課題である「直販営業力の強化」に対し、以下のスケジュールでご支援することを提案します。

フェーズ1:営業基盤の構築(1〜3ヶ月目)

  • 目標: 自社の強みをエンドユーザー向けに翻訳し、営業ツールを完成させる。
  • 実施内容:
    • 既存エンジニアへのヒアリングによる強み・実績の棚卸し。
    • 「技術力」を顧客メリット(品質、スピード、安心感等)に変換した会社案内・事例集の作成。
    • ターゲット顧客層(業界・規模・課題)の明確化。

フェーズ2:新規開拓の実践と検証(4〜6ヶ月目)

  • 目標: ターゲット企業へのアプローチを開始し、商談機会を創出する。
  • 実施内容:
    • ターゲットリストへのアプローチ(DM、問い合わせフォーム、紹介依頼等)。
    • 営業プロセス(初回面談〜提案〜クロージング)の型化。
    • 山田社長または営業担当者との営業同行・OJT。

フェーズ3:ソリューション化と組織営業への展開(7ヶ月目〜)

  • 目標: 営業活動から得られたニーズを元に、独自のサービスメニューを開発する。
  • 実施内容:
    • 顧客ニーズが高い領域(例:金融系セキュリティ診断、レガシー移行支援など)のパッケージ化。
    • AI活用を取り入れた開発プロセスの提案書化。
    • 営業KPIの管理とPDCAサイクルの定着。

7. 期待される成果

本取り組みにより、以下の成果が見込まれます。

  1. 商流の改善: 1年後に直販(または一次請け)案件の比率を現在の0%から10〜20%へ向上。
  2. 収益性の向上: 直販化による粗利率の改善(目安:5〜10ptアップ)。
  3. 脱・人月商売への足がかり: 「何でもやります」ではなく「これが得意です」と言える独自の強みが明確になり、AI時代でも選ばれる企業体質へ変化する。

以上