初期診断レポート(サンプル業種:金属加工業)

対象企業: A金属加工株式会社 御中 

報告日: 20XX年XX月XX日 

作成者: プラネット行政書士事務所 代表 長野利雄


1. エグゼクティブサマリー

現状の総合評価:B(技術という確固たる資産があり、営業変革による伸び代が大きい)

主要な強み:

  1. 半導体業界で鍛えられた超精密加工技術: ウェハー搬送ユニットというミクロン単位の精度と清浄度が求められる重要保安部品における製造実績。
  2. 現場の品質管理能力: 40名体制での不良率の低さと納期遵守率の高さ(業務オペレーションの強さ)。
  3. 経営者の危機意識と変革意欲: 「工賃ビジネス」からの脱却と「直販化」という明確なビジョンを山田社長が保持している点。

優先改善課題:

  1. 「待ち」の姿勢からの脱却: 受注が二次請けルートに100%依存しており、自ら市場を開拓する営業機能が皆無。
  2. 技術の言語化と発信不足: 高度な技術を持ちながら、それが「図面通りに作る力」としてしか認知されておらず、エンドユーザーへの提案材料(WEB、事例集)として整備されていない。
  3. 価格決定権の欠如: 設計機能を持たないため、コストカットの波を直接受けやすい収益構造。

今後の支援方針: まずは貴社の持つ「半導体スペックの加工技術」を、エンドユーザー(装置メーカーの開発部や研究機関など)にとっての「開発パートナー」という価値へ翻訳し直します。その上で、既存ルートに頼らない新規開拓の営業プロセスをゼロから構築し、高収益体質への転換をご支援します。


2. 企業概要

  • 会社名: A金属加工株式会社
  • 代表者: 山田 太郎
  • 売上高: 5億円
  • 従業員数: 40名
  • 事業内容: 精密金属加工(半導体製造装置部品等)
  • 主要顧客: 半導体製造装置メーカーの一次請け企業(ティア1)

3. 経営7領域診断結果

領域評価 (10点満点)コメント
1. 戦略5点直販化の方向性は正しいが、「誰に(ターゲット)」「何を(強み)」売るかの具体策が未定。
2. マーケティング1点(最優先課題) エンドユーザーに向けた情報発信が皆無。HPも会社概要のみで技術力が伝わらない。
3. 営業2点(優先改善領域) 専任営業がおらず、社長のトップ営業とルート営業のみ。新規開拓の型がない。
4. 財務6点売上5億円で安定しているが、工賃ビジネスのため利益率は業界平均並みかやや低水準と推測。
5. 人事組織7点40名の職人集団として技術継承は行われている。一方で、営業・企画人材が不足。
6. 業務オペレーション9点納期・品質管理は極めて高水準。半導体業界の厳しい要求に応え続ける現場力がある。
7. 経営者自身8点現場を熟知しつつ、次世代に向けた危機感を強く持っており、リーダーシップを発揮できる状態。

4. SWOT分析

強み (Strengths)

  • 半導体搬送ユニットで培った、難削材加工と高精度アセンブリ技術。
  • 多品種少量生産に対応できる柔軟な生産体制(40名の技術者)。
  • 厳しい品質基準(トレーサビリティ等)への対応力。

弱み (Weaknesses)

  • 自社製品・設計能力の欠如(図面がないと仕事ができない)。
  • エンドユーザー(装置メーカー本体)との直接的な接点不足。
  • 営業・マーケティング専任者の不在。

機会 (Opportunities)

  • 半導体市場の長期的拡大と国内回帰(工場の国内新設ラッシュ)。
  • 装置メーカーにおける「試作開発」のスピードアップ需要(短納期ニーズ)。
  • スタートアップ企業等の「ハードウェア開発」支援ニーズの増加。

脅威 (Threats)

  • ティア1企業からのさらなるコストダウン要求。
  • 海外(アジア圏)の加工メーカーの技術向上と安価な攻勢。
  • 原材料費の高騰と価格転嫁の難しさ。

【クロス分析による戦略提言:SO戦略(強み×機会)】 

「半導体品質」を武器に、装置メーカーの「試作・開発部門」へ直接アプローチを行う。量産品(価格競争)ではなく、高付加価値な「開発支援・難加工対応」ポジションを確立し、設計段階から入り込むことで直販化と利益率向上を狙う。


5. 課題の優先順位付け

順位課題緊急度重要度難易度着手時期
1「技術の棚卸し」と営業ツールの作成(「何でもできます」から「これが得意です」への変換)即座
2ターゲット顧客のリストアップ(半導体周辺、医療、航空宇宙等のエンドユーザー)1ヶ月後〜
3見積もり・受注プロセスの見直し(直販向けの高付加価値見積もりのルール化)3ヶ月後〜

6. 支援提案(ロードマップ案)

貴社の課題である「直販営業力の強化」に対し、以下のスケジュールでご支援することを提案します。

フェーズ1:直販の「武器」を作る(1〜3ヶ月目)

  • 目標: 自社の技術力を、素人(非技術者の購買担当)にも伝わる「価値」として言語化する。
  • 実施内容:
    • 現場ヒアリングによる「実はすごい技術(VA/VE提案事例など)」の発掘。
    • 営業用会社案内(事例集)の作成。「ただの加工屋」ではなく「開発パートナー」としての見せ方へ刷新。
    • HPの改修要件定義(技術検索ができる仕様など)。

フェーズ2:ターゲットへの「アプローチ」開始(4〜6ヶ月目)

  • 目標: ターゲット企業へのアプローチを開始し、直販口座の開設を目指す。
  • 実施内容:
    • ターゲット顧客(メーカー開発部)のリスト作成。
    • 展示会出展、またはDM送付等のアプローチ実行支援。
    • 山田社長または営業担当候補との商談ロールプレイングと同行。

フェーズ3:営業の「組織化」(7ヶ月目〜)

  • 目標: 社長以外でも売れる仕組みを作り、継続的な案件獲得フローを確立する。
  • 実施内容:
    • 営業KPI(行動目標、商談数、見積提出数)の設定と管理(月次モニタリング)。
    • 技術者からの営業担当への配置転換、または採用支援。
    • CRM(顧客管理)の導入検討。

7. 期待される成果

本取り組みにより、以下の成果が見込まれます。

  1. 商流の変革: 1年後にエンドユーザー直販の売上比率を0%から15%へ引き上げ。
  2. 利益率の改善: 直販案件(特に試作・特急対応)による粗利率の向上(目安:既存比+10%以上)。
  3. 価格決定権の獲得: 下請け構造からの脱却により、自社主導での価格交渉が可能となる。

以上