会社の未来を思い、誰にも言えない悩みを抱えながら、日々奮闘されている中小企業の経営者の皆様。事業をさらに飛躍させるため、あるいは困難な状況を打破するために、専門家であるコンサルタントへの相談を検討されることもあるでしょう。

しかし、勇気を出して相談したにもかかわらず、

  • 「話がどうも噛み合わない」
  • 「すでに試してダメだった方法を提案された」
  • 「期待していたような具体的なアドバイスが得られなかった」

…そんな経験はありませんか?

実は、その原因はコンサルタントの能力不足だけではなく、ご自身の「伝え方」にあるのかもしれません。

コンサルタントは魔法使いではありません。経営者であるあなたから提供される情報が、分析と提案のすべての基礎となります。情報が整理されていないと、課題の本質を捉えきれず、結果として時間と費用が有効に使われないという、不幸なすれ違いが起きてしまうのです。

逆に、ポイントを押さえて相談すれば、コンサルタントはあなたの状況を深く理解し、能力を最大限に発揮してくれます。そして、あなたが思いもよらなかった視点から、課題を解決する最適なルートを提示してくれる、最強の「伴走者」となるのです。

今回は、コンサルタントとの相談を圧倒的に有意義なものにするための、「5つのステップ相談術」をご紹介します。

コンサルタントを最強の味方にする!5つのステップ相談術

相談の前に、少し時間をとって、以下の5つのステップでご自身の状況と考えを整理してみてください。紙に書き出してみるのがおすすめです。


ステップ1:まず「相談のテーマ」を明確にする

最初に、相談したいことの「テーマ」や「分野」をひと言で伝えましょう。これにより、話の全体像が共有され、コンサルタントはどの専門知識の引き出しを開けるべきか、瞬時に判断できます。

  • 例:
    • 「3年前から続く売上の停滞について相談したい」
    • 「若手社員の離職率の高さに悩んでいる」
    • 「新規事業を立ち上げるための資金繰りについてアドバイスが欲しい」
    • 事業承継を円滑に進めたい」

ステップ2:「現状」を客観的な事実で説明する

次に、テーマに関する「現状」を、できるだけ具体的かつ客観的な情報で説明します。特に、数字を交えて話すことが重要です。うまくいっていること、いっていないことの両方を正直に伝えましょう。

  • 悪い例:
    • 「最近、売上が落ちてきていて…景気も悪いですしね…」
  • 良い例:
    • 「主力商品Aの売上が、前期比で15%減少しています。特に、主要取引先B社からの受注が半減したことが大きいです。一方で、Webサイト経由での問い合わせは月5件から10件に増えており、ここには可能性を感じています。」
    • 「ここ2年で入社した20代の社員が5人中3人、1年以内に退職してしまいました。給与水準は同業他社と変わりありません。」

ステップ3:「本来あるべき姿」を情熱的に語る

現状を踏まえた上で、あなたの会社が「本当はこうなりたい」と願う、理想の姿を具体的に語ってください。コンサルタントは、この「あるべき姿」と「現状」とのギャップを埋めるために存在します。定量的な目標と、定性的な想いの両方を伝えられると、より深く共感を得られます。

  • 例:
    • 「3年後には、現在の主力事業に加えて、オンライン販売事業を第二の柱に育てたい。具体的には、全社売上を現在の1.5倍である〇〇円にし、利益率を5%改善したいです。そして何より、社員が会社の将来に希望を持ち、誇りを持って働けるような組織にしたいんです。」

ステップ4:理想への「仮説」を共有する

「あるべき姿」を実現するために、あなたが「こうすればうまくいくのではないか?」と考えている自分なりの打ち手や仮説を伝えます。過去に試してうまくいかなかったことも、重要な情報です。これを共有することで、「その方法は既に試した」という無駄なやり取りを避け、より深い議論に進むことができます。

  • 例:
    • 「Webマーケティングを強化すれば、新規顧客を獲得でき、売上が回復するのではないかと考えています。そこで、一度Web広告を30万円ほど試してみましたが、問い合わせには繋がりませんでした。
    • 「社員の定着率を上げるには、評価制度を見直す必要があると感じています。成果主義の評価制度を導入しようとしましたが、社員から不満が出てしまい、頓挫しました。

ステップ5:「今、困っていること」を正直に打ち明ける

最後のステップです。ステップ4で考えた打ち手や仮説を実行する上で、「何が壁になっているのか」「具体的に何に困っているのか」を正直に打ち明けてください。「何をどうすれば良いかわからない」という状態そのものが、相談すべき最も重要な課題です。

  • 例:
    • 「Webマーケティングの重要性は理解していますが、広告代理店の言っていることが専門的すぎて理解できず、何から手をつければ良いのか、誰を信じれば良いのか全く分かりません。
    • 「評価制度の必要性は感じていますが、当社の規模や文化に合った制度がどのようなものか見当もつかず、導入を推進できる人材も社内にいません。

まとめ:準備が、相談の質を左右する

いかがでしたでしょうか。

  1. テーマ: 何について話すのか?(例:売上向上)
  2. 現 状: 今どうなっているのか?(例:主力商品が前期比15%減)
  3. あるべき姿: 本当はどうなりたいのか?(例:3年後、売上1.5倍)
  4. 仮 説: どうすれば実現できると考えているか?(例:Web強化が必要だと思うが、広告は失敗した)
  5. 課 題: 何が壁で、どう困っているか?(例:何から手をつければ良いか分からない)

この5つのステップで情報を整理して伝えることで、コンサルタントはあなたの会社の「現在地」「目的地」「持っている地図(と、その不備)」を正確に理解できます。

その結果、あなたが考えていた「Web強化」という方法以外にも、「既存顧客への深耕営業」「商品ラインナップの見直し」といった、あなた自身が気づいていなかった新しいルートや、より効果的な解決策を提案してくれる可能性が格段に高まります。

せっかくの貴重な時間と費用です。最高の投資対効果を得るために、ぜひこの「5つのステップ」を実践し、コンサルタントをあなたの事業を加速させる最強の味方にしてください。

まずは、ペンと紙を用意して、ご自身の考えを書き出すことから始めてみませんか?