毎日、資金繰りや人材育成、営業活動と、本当に目まぐるしい日々を送られていることと思います。会社の未来を一身に背負う社長の皆様に、心から敬意を表します。
さて、そんな多忙な中で、こんな風に感じたことはありませんか?
- 「目標達成のために課題を設定し、社員にもハッパをかけているのに、どうも成果が出ない…」
- 「毎月の会議で同じような話が繰り返され、PDCAが空回りしている気がする…」
もし一つでも当てはまるなら、その原因は、会社の成長を阻む“ありがちな罠”にハマっているからかもしれません。それは、「問題」と「課題」の取り違えです。
「売上を上げるぞ!」は“課題”ではなく“気合”
例えば、会社の売上目標に2,000万円足りなかったとします。これは紛れもない「問題」です。
この時、会議で次のような「課題」を掲げていないでしょうか?
「よし、今期の課題は売上を2,000万円上げることだ!」
一見、力強く正しい目標に見えます。しかし、これこそが落とし穴なのです。
これは「課題」ではなく、単に「問題」をひっくり返しただけの「スローガン」や「気合」でしかありません。
なぜなら、「どうやって?」という最も重要な視点が抜け落ちているからです。
この「問題の裏返し」を課題に設定してしまうと、そこから生まれる施策は、「営業はもっと頑張れ!」「みんなで売上意識を高めよう!」といった、具体性のない精神論になりがちです。
これでは社員も「何をすればいいのか…」と戸惑い、疲弊してしまいます。結果、貴重な時間と労力をかけたのに、成果は上がらず、社長のイライラだけが募っていく…という悪循環に陥ってしまうのです。
成長企業がやっている「なぜ?」の深掘り
では、どうすればこの罠から抜け出せるのでしょうか?
答えはシンプルです。「なぜ?」を繰り返して、問題の根本原因を突き止めること。これに尽きます。
先ほどの「売上未達」の例で見てみましょう。
- 問題: 売上が2,000万円足りない。
- 【なぜ?①】 → (分析してみると)どうやら新規顧客からの売上が計画を大きく下回っているようだ。
- 【なぜ?②】 → (さらに調べると)主力商品のWebサイトからの問い合わせ件数が、去年に比べて30%も減っていることが分かった。
- 【なぜ?③】 → (市場を調査すると)競合のA社が似たような商品を低価格で出し、Web広告を強化している。結果、うちのサイトが見られなくなっている!
ここまで深掘りすると、本当に取り組むべきことが見えてきます。
これが、「真の課題設定」です。
【真の課題設定】
「競合A社に奪われたWeb上の顧客接点を取り戻し、自社の強み(品質・サポート体制など)を的確に伝えることで、問い合わせ件数を回復させる」
いかがでしょうか。「売上を2,000万円上げる!」というスローガンと比べて、やるべきことの解像度が全く違うのがお分かりいただけると思います。
「真の課題設定」が見つかれば、打ち手は具体的になる
「真の課題」さえ設定できれば、具体的な打ち手(施策)は自然と生まれてきます。
【発生している問題】:売上が2,000万円足りない。
- ダメな課題設定から生まれる施策(曖昧)
- 課題設定:売上を2,000万円上げることだ!
- 「営業活動を強化する」
- 「社員の意識改革」
- 課題設定:売上を2,000万円上げることだ!
- 真の課題設定から生まれる施策(具体的)
- 課題設定:「競合A社に奪われたWeb上の顧客接点を取り戻し、自社の強み(品質・サポート体制など)を的確に伝えることで、問い合わせ件数を回復させる」
- 施策①: 競合A社との「機能・価格・サポート体制」の比較ページをサイトに作る。
- 施策②: 既存のお客様に協力いただき、「導入後の喜びの声」を動画で紹介する。
- 施策③: 競合名で検索している見込み客にだけ、Web広告を配信してみる。
- 課題設定:「競合A社に奪われたWeb上の顧客接点を取り戻し、自社の強み(品質・サポート体制など)を的確に伝えることで、問い合わせ件数を回復させる」
ここまで具体的になれば、すぐに担当者を決めて実行できますし、後から「この施策は効果があったのか?」という振り返り(Check)も可能になります。これこそが、本当に会社を成長させるPDCAサイクルです。
まとめ:社長の「なぜ?」が会社を救う
多忙な社長だからこそ、つい「早く答えを出さなくては」と焦り、目に見える「問題」に飛びついてしまいがちです。
しかし、急がば回れ。
一度立ち止まって「なぜ、この問題が起きているんだ?」と深く考える時間こそが、会社の未来を大きく左右します。
明日からの会議で、ぜひ問いかけてみてください。
「その課題、本当にそうか?単に問題の裏返しになっていないか?」と。
社長のその一言が、空回りしていた歯車を噛み合わせ、会社を力強く前進させるきっかけになるはずです。
