会社の将来を考え、事業承継やM&Aを検討されている社長様も多いのではないでしょうか。後継者問題の解決策として、M&Aは今や当たり前の選択肢の一つです。
しかし、その重要な決断の裏で、一部の悪質なM&A仲介業者によるトラブルが急増していることをご存知でしょうか?
この事態を重く見た国の「M&A支援機関登録事務局」が、経営者の皆様へ向けて「こんな業者には注意してください!」という具体的な警告を出しています。
今回は、その公式な注意喚起を基に、社長が絶対に知っておくべき「悪質業者の7つの手口」を分かりやすく解説します。大切な会社と従業員、そしてご自身の未来を守るために、ぜひ最後までお読みください。
※当事務所は中小企業庁のM&A支援機関に登録されています。
なぜ今、注意が必要なのか?
M&Aが活発になるにつれて、様々な業者がこの業界に参入しました。もちろん、誠実で優秀な専門家はたくさんいます。しかし、残念ながら、専門知識や倫理観に欠け、自社の利益だけを追求する業者も紛れ込んでいるのが現実です。
一度きりの、そして人生を左右するM&Aで間違ったパートナーを選んでしまうと、取り返しのつかない事態になりかねません。
要注意!国が警告する「悪質業者の7つのチェックリスト」
もし、M&A業者からのアプローチで、以下の言動が一つでも見られたら、すぐに警戒してください。これらは国が「禁止行為」として名指ししている手口です。
チェック1:しつこく、こちらの「NO」を無視する
「M&Aの意思はありません」「もう連絡は結構です」と明確に断っているにもかかわらず、手を変え品を変え、しつこく営業電話やメールを続けてくる。
→ 相手の意思を尊重できない業者は、あなたの会社の未来も尊重しません。
チェック2:高圧的・威圧的な態度をとる
専門用語を並べてこちらの知識不足を指摘したり、「普通はこうですよ」と見下したような態度をとったりする。
→ 本来パートナーであるはずのM&Aの専門家が、威圧的な態度をとる理由などありません。
チェック3:身元や目的をハッキリ言わない
「〇〇(社名)の△△(氏名)です。御社とのM&A仲介契約の件でご連絡しました」という当たり前の挨拶をせず、「ちょっと情報交換でも」と目的を隠して近づいてくる。
→ やましいことがなければ、正々堂々と名乗るはずです。
チェック4:「今すぐ決めてください」と決断を急がせる
「この買い手は今しか興味がありません」「今日だけの特別条件です」などと言って、考える時間を与えず、その場での契約を迫ってくる。
→ M&Aは即決するような話ではありません。相談や熟考の時間を奪うのは、冷静な判断をさせないための手口です。
チェック5:「幻の買い手」をチラつかせる
具体的な根拠もないのに、「御社に興味を持つ大手企業がいまして…」と、魅力的な買い手の存在をほのめかし、契約を急がせる。
→ これは、とにかく自社と「専任契約」を結ばせるための、最も古典的で悪質な”エサ”です。契約後に「あの話はなくなりました」と言われるのがオチです。
チェック6:相場より高すぎる「売却価格」を提示する
「あなたの会社なら〇〇億円で売れますよ!」と、社長を気持ちよくさせるような、過大で非現実的な評価額を安易に提示してくる。
→ これも契約を結ばせるための”エサ”です。後から「よく調べたら、やはりこの金額でした」と、大幅に価値を下げられるケースが後を絶ちません。
チェック7:平気で「嘘」や「確定できない約束」をする
「従業員の雇用は100%守られます」「銀行融資は間違いありません」など、現時点では保証できない不確定なことを、あたかも確定事項のように断言する。
→ 経営者の不安な心につけ込む、無責任極まりないトークです。
悪質業者のたった一つの狙い
彼らがなぜ、このような手口を使うのか。その多くは、社長を自社に縛り付ける「専任媒介契約」を一日でも早く結ばせるためです。
※注意:専任媒介契約自体をディスっているのではなく、このような手口を行うことをディスっております。
一度この契約を結んでしまうと、他のM&A業者に相談することすらできなくなり、たとえその業者が頼りなくても、高額な手数料を払い続けなければならない状況に陥ってしまいます。
大切な会社を守るために、社長がやるべきこと
では、どうすれば自衛できるのでしょうか。対策はシンプルです。
- その場で決めない。 どんなに良い話に聞こえても、「ありがとうございます。社内で検討し、顧問税理士にも相談してみます」と伝え、必ず時間を置きましょう。
- セカンドオピニオンを取る。 企業価値の評価や手数料の妥当性について、必ず複数の専門家から意見を聞きましょう。
- 契約書は穴が開くほど読む。 特に「専任(エクスクルーシブ)」「手数料(成功報酬、着手金)」「契約期間」「中途解約」の条項は、弁護士などの専門家にも確認してもらいましょう。
- 直感を信じる。「何かおかしい」「話がうますぎる」「この人、高圧的だな」と感じたら、その直感は正しい可能性が高いです。勇気をもって断りましょう。
M&Aは、社長が人生をかけて育ててきた会社と、大切な従業員の未来を託す一大決心です。その航海のパートナー選びは、何よりも慎重に行う必要があります。
今回のチェックリストが、社長の皆様が信頼できる真のパートナーを見極めるための一助となれば幸いです。
