中小企業の小売店オーナーの皆様、こんにちは!

前回 Vol.2は、外国人観光客にあなたの店を「見つけてもらう」ための「旅マエ」の具体的な情報発信についてお話ししました。ウェブサイトやSNS、Googleビジネスプロフィールを充実させることで、来店へのきっかけを作ることができたはずです。

今回は、いよいよお客様があなたの店を訪れた際、最高の体験を提供し、「また日本に来たら立ち寄りたい!」「友人にもおすすめしたい!」と思ってもらうための重要なフェーズ、「旅ナカ(日本滞在期間)」に焦点を当てて、中小の小売店ができる効果的な対策をご紹介します。

「旅ナカ」の重要性:目の前のお客様に感動を!

お客様があなたの店に足を運んでくれたら、それは大きなチャンスです。旅前でどれだけ魅力を伝えても、実際の体験が期待外れであれば、二度と訪れてはくれません。

「旅ナカ」の対策は、お客様との直接的な接点を通じて、商品だけでなく「日本での素晴らしい買い物体験」を提供することにあります。ここで心に残るおもてなしができれば、リピーター獲得や口コミによる拡散にもつながります。

「旅ナカ」に実施すべきインバウンド対策の具体策

では、お客様がお店に来てくれた際に、どのような工夫ができるでしょうか。

1. 店外からの歓迎アピール

お店の前を通る外国人観光客に、「ここは自分を歓迎してくれるお店だ!」と感じてもらうことが重要です。

  • 看板・ポスター・のぼり等での訴求:
    • 店先に「Welcome!」「TAX-FREE」「Wi-Fi Free」といった多言語の看板やポスター、のぼりを設置しましょう。ターゲットとなる国の国旗をあしらったり、「お土産」「Souvenir」などの分かりやすい表示も有効です。
    • お店の入り口に、翻訳アプリや簡単な指差し会話帳の利用を歓迎する旨を掲示するのも、お客様の安心感につながります。

2. 店舗での多言語対応を徹底する

お客様がお店に入った瞬間から、安心して買い物ができる環境を整えましょう。

  • 案内表示の多言語化:
    • 商品名、価格表示、セール情報、レジの案内、免税カウンターの表示、お手洗いなど、店内の主要な案内表示は、ターゲット層の言語(英語、中国語、韓国語など)で分かりやすく掲示しましょう。ピクトグラム(絵文字)の活用も効果的です。
  • メニュー・商品説明の多言語化:
    • 食べ物を提供するお店であればメニューを、物販であれば商品の説明(素材、用途、こだわりなど)を多言語で準備します。QRコードで多言語の説明ページに飛ぶ形式も便利です。
  • スタッフの多言語対応:
    • 専門の通訳スタッフを雇うのが難しい場合でも、指差し会話帳の準備、翻訳アプリの活用、簡単な英語での挨拶や接客フレーズの練習など、できることから始めましょう。重要なのは「伝えよう」とする姿勢です。

3. Wi-Fi環境とキャッシュレス決済を整備する

外国人観光客にとって、これらはもはや「当たり前」のインフラです。

  • 無料Wi-Fiの提供:
    • 旅行者は滞在中、常にインターネットに接続して情報収集やSNSへの投稿を行っています。お店で無料Wi-Fiを提供することは、お客様への利便性向上だけでなく、お店の滞在時間延長やSNSでの情報拡散にもつながります。
  • キャッシュレス決済への対応:
    • クレジットカードはもちろん、Alipay(アリペイ)、WeChat Pay(ウィーチャットペイ)、銀聯(ぎんれん)カードなど、ターゲット層がよく利用する決済方法に対応しましょう。これらは、現金の持ち歩きが少ない外国人にとって、非常に重要な選択肢となります。

4. 免税対応を検討する

消耗品や一般物品を一定額以上購入した場合、消費税が免除される免税制度は、外国人観光客にとって大きなインセンティブとなります。

  • 免税店の許可取得:
    • 手続きは必要ですが、免税店となることで、より高額な買い物やまとめ買いを促すことができます。観光庁のウェブサイトなどで情報を確認し、導入を検討しましょう。
    • 「手続委託型」で許可取得すれば、他店舗と共同で手続き窓口を運営できるため、導入しやすい場合があります。商店街組合などで検討しましょう。
  • 免税手続きの簡素化:
    • 導入した場合は、手続きがスムーズに行えるよう、スタッフへの教育や専用のカウンター設置などを検討しましょう。

5. 体験コンテンツや付加価値を提供する

単なる買い物だけでなく、「思い出」となる体験を提供することで、お客様の満足度は格段に上がります。

  • ワークショップの実施:
    • 日本文化に触れる体験(例:伝統工芸品の制作体験、和菓子作り、着物試着など)は、外国人観光客に大変人気があります。お店の特色を活かした体験を提供できないか考えてみましょう。
  • 写真スポットの提供:
    • 日本の美しい風景やユニークな商品と一緒に写真を撮れる「映える」スポットを用意することで、SNSでの拡散を促すことができます。
  • 日本の文化紹介:
    • 商品の背景にある日本の文化や歴史、職人のこだわりなどを丁寧に伝えることで、単なる商品以上の価値を感じてもらえます。試食や試飲、実演販売なども効果的です。

6. 丁寧で心温まる接客を心がける

最後に最も重要なのが「おもてなし」の心です。

  • 笑顔での挨拶:
    • 言語が通じなくても、笑顔は万国共通です。明るい笑顔と「Hello!」「Thank you!」などの簡単な英語での挨拶で、歓迎の意を伝えましょう。
  • 困っている様子の外国人観光客への声かけ:
    • 困っているお客様には積極的に声をかけ、助け舟を出しましょう。ジェスチャーや翻訳アプリも活用し、親身に対応することで、信頼感が生まれます。

7. 口コミ投稿のお願い

お客様が満足してくれたら、その体験を共有してもらいましょう。

  • POPや店員が口頭で依頼:
    • レジ横などに「Googleマップやトリップアドバイザーに口コミをお願いします!」といった多言語POPを設置したり、会計時にスタッフが笑顔で「Thank you for your visit! If you enjoyed your experience, please leave us a review on Google Maps/TripAdvisor!」などと声をかけることで、口コミ投稿を促しましょう。
    • QRコードで口コミ投稿ページに直接アクセスできるようにしておくと、お客様の手間を減らせます。

まとめ

「旅ナカ」の対策は、お客様にあなたの店での「特別な体験」を提供し、深い満足感を感じてもらうためのステージです。店外からの歓迎アピールから始まり、多言語対応、便利な決済環境、免税対応はもちろん、体験コンテンツや心温まる接客、そして口コミの促進を通じて、「また訪れたい」と思わせる魅力的なお店を目指しましょう。